ギルドでの講習を終え、私はベルさんと合流した。
ベル「どうだった?」
「すごく勉強になった! 魔石のこととか、ダンジョンのこととか……それに、エイナさんがすっごく優しくて」
ベル「そっか、よかった。エイナさんは心配性だけど、すごく親身になってくれるんだ」
私はうなずきながら、自分の背中にある初心者用の装備袋を軽く叩く。中には、小さな短剣と弓、そして矢筒が入っている。
「……これから、私の冒険が始まるんだね」
ベル「うん。でも焦らなくていい。一歩ずつでいいんだ。僕も最初は何もできなかったし、怖かった。けど、続けていればきっと……少しずつ強くなれるよ」
「……うん!」
この後、ベルさんにオラリオの街を案内してもらった。
バベルにある武器や防具の店、街の中にあるポーションが売っているお店、食べ物が売っている屋台。そして「豊穣の女神」っていう、ちょっと高級な食事処。
本当に、いろんな場所を見せてもらった。その中で、ベルさんは知り合いたちと楽しそうに話していた。
私もモンスターだけじゃなく、ベルさんみたいに、たくさんの人と出会って、いろんな経験をしていくんだと思うと――胸がワクワクしてくる。
そんな期待を胸に抱いたまま、次の朝を迎えた。
ベル「準備はできた?」
「はい! 防具も着けましたし、武器もちゃんと持ってます!」
私は胸を張って、装備を見せつけるようにポーズを取る。
ベル「うん、似合ってるよ! それじゃあ、行こうか!」
バベルの塔の中央――地下へと続く“ダンジョン”の入り口に足を踏み入れたとき、胸の奥がキュッと締め付けられるような緊張が走った。
ベル「緊張してる?」
「ちょっとだけ……でも、大丈夫。モンスターを仲間にするんだもん。やらなきゃ!」
ベル「……うん、テリーちゃんならきっとできるよ」
微笑み合ってから、一歩、また一歩と足を踏み出す。
薄暗く、静かな空間。空気はほんのり湿っていて、石の床がかすかに冷たい。
「……これが、ダンジョン……!」
最初の階層――第1層。初心者向けとはいえ、油断すれば命を落とす場所。
しばらく歩くと、ベルさんが小さく手を挙げて立ち止まった。
ベル「……気をつけて。前方に“ゴブリン”がいる」
「えっ……!」
目を凝らすと、小鬼のようなモンスターがいた。こちらを見据え、今にも飛びかかってきそうな気配。
「ゴブリン……!」
ベル「倒す? それとも……」
「……まずは、自分で戦ってみる!」
私は弓を構えた。
ベル「ボクは後ろで見てる。危険ならすぐ助けるから、まずは自分のやりたいようにやってみて!」
「うん!」
――手が、震えてる。心臓がバクバクしてる。
「深呼吸……落ち着いて、テリー……大丈夫、やれる……!」
私が覚悟を決めた瞬間、ゴブリンがギィギィと唸り声を上げ、突進してきた!
「いっけぇぇぇっ!!」
矢を引き絞り、ゴブリンの腹部めがけて放つ!
――ヒュッ、ズン!
命中! けれど、ゴブリンは止まらない! 矢を受けながらそのまま突っ込んできた!
「っ……!」
咄嗟に横へ転がる。石畳に肩をぶつけたけど、すぐに立ち上がった。
ゴブリンは再び体勢を整え、今度は横から飛びかかってくる!
「くっ……!」
私は弓を捨て、短剣を引き抜いた。
真正面からゴブリンと向き合う!
「絶対、負けないっ!!」
渾身の一撃をゴブリンの胸に突き刺す!
ザクリッ!
この攻撃が致命傷となり、ゴブリンの体がグラリと揺れ――
――ドサッ。
魔石を残し、消滅した。
「……っは、はぁ……やった……倒せた……!」
本当に、自分の力で……倒したんだ。
気が抜けて、尻もちをついてしまう。
ベル「テリーちゃん!」
ベルさんが駆け寄ってくる。その顔には驚きと、心配。
ベル「大丈夫?」
彼が差し出してくれた手を取って、私は立ち上がる。
「はい……大丈夫です」
そして笑みを浮かべた表情で、
ベル「……すごいよ、本当に。よく倒したね!」
「……うん、私……怖かったけど……でも……!」
私は胸に手を当て、拳をぎゅっと握りしめる。
「やれるって、わかったの……! 私、ひとりでも戦えるんだって……!」
ベル「うん。でも、テリーちゃんはひとりじゃないよ。ボクも同じファミリアだから、一緒に頑張っていこう!」
「うん、ありがとう!」
そのあとはベルさんの戦いを見ながら、少し休憩を取った。
次はいよいよ――【スカウトアタック】を試す時だ。