【第22回】<補適法第7条解説>補助金で取得した設備は既存事業と併用できるのか?──第7条から読み解く合理的な運用と違法認定の分水嶺
◆ 結論から言えば、「併用」は一律で禁止されていない
補助金適正化法第7条は、補助金交付の条件やその変更に関する基本的なルールを定めています。
実際に弊社の支援事例でも「補助事業用設備でつくった通販用冷凍ハンバーグを店頭の冷凍庫でPRのために売っていたので、これはテイクアウトだから既存事業に使っているので補助金を不交付にする」という判断がありましたが、以下のポイントで中小機構に抗議文を送ってもらいました。:
補助事業等に要する経費の配分の変更(軽微な変更を除く)については、行政庁の承認が必要。
同様に、事業内容の変更も、軽微な範囲であれば事業者の裁量で可能(法7条第3号かっこ書き)。
つまり、設備の併用が「軽微な変更」の範囲であり、かつ補助目的の達成を阻害しない場合には違法ではない、という立場が成り立ちます。
◆ 「軽微な変更」の判断基準とは?
法第7条の運用については、実務でも具体的な指針があります。
「軽微な変更」とは、
①補助目的の達成に支障がないこと
②経費使用の効率化に資すること
③補助事業者の創意に基づき事業能率に寄与すること
を満たしていればいいのです。
このポイントは当社の訴訟の争点である、70万円の経費流用に関しても
小売店の営業を行うという事業達成のため、
工期を事業期間内に終わらせるために、値上がりした他の工事費目に解体費を充てることで、
早期かつ事業費内で工事終わるようにすることができた、
ということで全体に与える影響は小さく、かつ交付決定条件の「建物費」の項目の中での流用なので、費目間流用もないわけですから何ら問題ありません。
先の冷凍ハンバーグの件でも補助金で取得した冷蔵ケースにECサイト用商品を陳列しつつ、店舗来客にも販売していた例では、
商品のPR目的であり、
EC向け販売促進という補助目的と整合し、
店舗での使用は「事業能率の向上」と説明できる場合、
これは「軽微な変更」の範囲と評価されるべきです。
◆ 一方的な「目的外使用」認定は行き過ぎ
法第11条では「目的外使用の禁止」が定められていますが、これはあくまで**「交付決定の内容及び附された条件に反する使用」を禁じるもの。
しかし、「既存事業との併用」そのものが交付決定で禁じられている例は少なく、むしろ多くの交付規程やQ&Aでは、「補助目的の範囲内であれば併用も可能」との立場が取られています。
◆ 裁判での応用可能性
実際の訴訟でも次のような論点が有効です:
「軽微な変更」の範囲内であるかどうかを、補助目的達成との関連性から説明する
交付決定内容と「適合する」と判断されうる事業の実施状況であれば、補助金の返還義務にはつながらないという点を強調。
◆ まとめ:併用=違法、ではない
「補助金で買った設備は絶対に既存事業で使ってはならない」という理解は誤解です。
補助金等適正化法では、
補助目的の達成が妨げられない
変更が軽微であり、効率的な運用につながっている
事前に承認を要するような重大な変更でない
という条件を満たす限り、併用も容認されうるという仕組みになっています。
今後、補助金の審査で「既存事業との併用」が問題とされた場合でも、慌てて全面否認される必要はありません。正しく法の趣旨と条件を理解し、適切な説明を行えば、理不尽な取消しや返還要求に対抗する根拠となりうるのです。
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