タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 転生者のほうがイカれてると言われても初投稿です。



準備完了、ヒロインに迎撃の用意アリ。

「青龍とぉ〜、白虎とぉ〜、まさかまさかの黄龍の巫女ッ! いやぁ、こんな豪華な面子にオレ様の作品をお披露目できるなんて思わなかったからさぁ〜、すげぇ張り切っちゃった! 人間のことを下等生物とか言うヤツもいるんだけど、文化と芸術って概念があるんだからそんなわけないよねって思うんだ。で、どう? どうよ? 忌憚のない意見ってヤツ、くださいな?」

 

「芸術家の作品に素人が好き勝手言うのって、ちょっとお行儀が悪いかな〜って思うんだけど」

 

「あーッ! ハイハイ出た出たそんなん言う痛いヤツ〜ッ! アレはさぁ、あるていすと側がダメダメなんだと思うんだオレ様としては。芸術って、やっぱり誰かに鑑賞してもらって初めて完成すると思うのよ。ってことはさ、素人にこそ感動を与えられないとダメだってことでしょう? だからホラ、全然もうダメ出しとかでもいいからね!」

 

「う〜ん、それじゃあ遠慮なく言っちゃうけど……赤が多すぎて私は好きじゃない、かな」

 

「あ〜〜〜〜、うん……そう。そう感じてしまったんだねテメェは。そうか〜、それは……ゴメンよ? いやオレ様としては最高の出来栄えだって自信あったんだけど、やっぱ芸術って独り善がりなのは論外だよね? だってそれなら誰かに見せる必要ないんだもの。つまりぃ、ってことはまだまだオレ様は未熟ッ!! ってことはまだまだ〜あるていすととして高みにイケるってことだねッ!! ────あぁ?」

 

 

 ゲストを満足させられなかったことを本心から申し訳なく思っているらしく、テンションは高いものの丁寧に頭を下げる男。

 

 そして男の意識が完全に真白にだけ向いたその瞬間、全身を蝕む植物を力任せに引き千切り大猿が男に殴りかかったッ! 

 

 

 勝てない相手に挑むのは群の長として間違いである。だが食うための狩りではなく、エーテルを奪うという目的でもなく、ただ徒に眷属たちを蹂躙された怒りは獣としての本能を凌駕したのだッ!! 

 いつか再び迷宮の中で復活するとしても関係ない。眷属の命を侮辱されても報復を諦めるような賢さなど大猿には不要。同じ鬼であることも、相手が格上であることも、長としての矜持の前では無意味であるッ!! 

 

 

 だが。

 

 

「いやいや、ダメですよ〜? ただの素材があるていすとに歯向かうのはおかしいですよね〜?」

 

 パチンッ、と男が指を鳴らす。

 

 それだけでもう大猿は動けない。腕を内側から突き破った植物が、そのまま胴体を満遍なく串刺しにした。ギリギリの致命傷となったのか、大猿の身体が少しずつ紫色のエーテル粒子に分解されていく。

 

 

「こ、これは……ッ! イイ、すっごくイイよこれぇ〜ッ!! 赤ばっかりより何倍もイイですよねぇッ!! ただの素材とか言っちゃったオレ様が完全に悪かったよ、クソ猿くんテメェは優秀な素材だねぇッ!! そしてぇ〜、的確な助言をくれた黄龍の巫女ちゃんマジ感謝するしかないですよぉ〜こいつはぁッ!! やっぱ芸術って、大衆の反応あってこそ完成だってことだよねッ!! ありがとう、ありがとう……ッ!!」

 

「それは、どーも」

 

 鬼の情報を得ることも目的だということで、会話でなにか引き出せないかと試みた真白。しかし目の前の鬼についてわかったことは頭のイカれた変態という情報だけ。

 

 一応、稼いだ時間を使い身体の内側で霊気を練ることで戦闘に備えてはいる。なるべく風魔と大地の面子のために巫女として戦うつもりで準備をしているので、道具だけでなく魔法スキルも即座に発動できる状態だ。

 仮にスキルの発動より先に距離を詰められたとしても、予備の武器スロットには大太刀と大斧、それから雅に装備の偏りについて怒られたときに購入した脇差しもある。瞬間で鎧に着替えるまでは不可能だとしても、反撃のチャンスぐらいは作れるはず。盾? いえ、知らない子ですね。凪菜ちゃんの専用装備かな? 

 

 

「悪趣味なヤロウが、反吐が出るぜ。そんなに芸術とやらが好きならよォ、オレがテメェの顔面を愉快な形に作り変えてやらァッ!!」

 

 ダンッ!! と地面が爆発する音。

 

 弾丸のように飛び出す大地。

 

 格上相手にまずは小手調べ、などと甘えた戦いをするほど大地は自惚れていない。初手から全力で拳に霊気を纏わせ、しかし次の行動に素早く移行できるようあえてスキルを発動せず殴りかかったッ!! 

 

「続きますッ! 朝比奈さん、援護をッ!!」

 

「わかったッ! 気を付けてッ!!」

 

 

 誰も、油断はしていなかった。

 

 もしも真白の入学から今日まで、原作のように攻略対象と一緒に過ごしていれば簡単に切り抜けられた場面だったのだ。何故ならこの鬼は風魔ルートで戦う相手で、最初の戦闘ではある程度のダメージを与えることで撤退するイベント戦闘だからだ。

 しかしこの世界の真白は4人の侍と原作のような関わり方はしていない。システムの都合でプレイヤーは基本的に攻略対象と過ごす選択をしなければならないが、そんなものに縛られない真白には4人を優先する理由がなかった。いつものメンバーにクラスメイト、巫女としてではない学生としての知り合い、転校する前の友人たちと遊ぶことだってある。

 

 

 

 

 

 

 だから、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「がぁ……ッ!?」

 

『大地ッ!? しっかりしなッ!!』

 

「ぐ、うぅ……ッ!?」

 

『風魔ッ!? まさか、これほどとは……ッ!!』

 

 

「目白くんッ! 望国くんッ!」

 

 

「ん〜、オレ様としては飛び入り参加も全然アリなんですよ。やっぱりね? 芸術とか、まぁ書道とか華道とか彫刻も俳句なんかもさぁ、体験することで理解が深まって楽しめるワケなんです。だからねぇ〜、こうして体当たりで学びましょうッ! てトコは大大大だぁ〜い賛成するのッ! テメェらはみんな偉いッ! けどさぁ〜、それにしたって基礎ぐらいちゃんとしようよ? ……ハハッ、弱いね。四神の侍。気迫だけは悪くないのに実力はクソですねぇッ!!」

 

 ぐるり、と。

 

 鬼が真白を視る。

 

「ま、いいよいいよ。黄龍の巫女なら素材として申し分無いと思うんですよオレ様は。侍くんたちが弱いと手間が省けて楽ですねぇ! 目の前で巫女ちゃんを作品として仕上げるときにね、地面にブッ倒れてるクソ侍くんたちの眼の色がさぁ、もう……宝石かな? イイよ、アレは本当にキレイだもんねぇ……。あと、単純にさ。巫女を守れなかった侍が大衆にボロクソに貶されてんの面白いよね。一回の失敗でそれまで積み重ねてきたモノを否定しちゃうとか、人間ってマジ怖いよね。ワリとガチでそれなんで? ってずっと疑問ですねぇ……?」

 

 

「逃げ、ろ……ッ! 朝比奈ァ……ッ!」

 

「早く、離脱、を……ッ!」

 

 

「────ッ! ふたりとも、ゴメンッ!!」

 

 

 迷わない。迷うことに意味はないと知っているから。ここで「ふたりを置いて逃げるなんてできない!」と叫ぶのは、悲劇のヒロインである自分に酔っているだけのムダ行動。

 その判断を瞬時にできるのは乙女としてアリかナシかで意見が割れるかもしれないが、少なくともこの場では正解である。鬼の狙いが自分なら、1秒でも早く離脱して……そして、自分を追わせることで風魔と大地が復帰するまでの時間を稼ぐほうがいい。

 

(どうする? どうしよう? たぶん離脱するために霊気を集中してるヒマなんてないよね……。ふたりは私を逃がすだけでもギリギリって感じだったし、なんならすぐ後ろからジワジワ妖気を感じるし。戦うにしても、この辺の植物にもあの鬼がワナ仕掛けてるっぽいのがな〜)

 

 錫杖を収納し、重装備で飛び回ることで鍛えた身体能力を活かしてパルクールのように軽快な動きで迷宮を逃げる真白。嫌な気配の正体を鬼の仕掛けたワナであると見抜いたものの、じゃあどうするかと言えばとにかく逃げ回るしかない。

 

(巫女を守れなかった……黄龍の巫女が死に戻りしたときに、四神の侍だけが生きて帰ってきたとして、評判ってどれぐらい悪くなるのかな? 普段の学園の対応を見ているとそこまで酷くはならなさそうだけど。加護持ちの贔屓が露骨だし。……あ、やば)

 

 

 

 

「にゅぁぁぁぁ────ドゥベ」

 

 

 

 

 ヒロイン、落下ッ! 

 

 これがホラー映画なら足首を挫いたりして絶体絶命のピンチになる場面だった。しかし真白は死にゲー世界の主人公、エーテルを蓄え霊力で強化された肉体は簡単には負傷しないし顔から落ちたので足首は無事であるッ!! いわゆる顔面セーフであるッ!! 

 

「いって、鼻、潰れるかと……ヤバい、涙出てくる……ッ! で、ここは地下通路的な? 植物は減ったけど順調に追い込まれてる感がスゴいな〜。これ、ヘタに逃げると本当にもう袋のネズミに────ほぇ?」

 

 

 いる。

 

 女の子。 

 

 

 

 

 白い着物に金の装飾、赤い彼岸花に黒い龍の模様。

 

 

 

 

 間違いなく人間ではない。

 

 感じる霊気は鬼でもない証拠。

 

 

 一瞬だけ微笑むと、まるでこっちにおいでと誘うように消えていく。

 

 

 

 

「……よしッ!」

 

 こんな状況だ、これ以上なにをしても悪化することはないだろう。それなら一か八かでも可能性に賭けてみるほうが勝てるかもしれない。

 

 

 

 

 真白から遅れること10秒と少し。芸術家気取りの鬼が、原作で「贋作狂い」という名を与えられた鬼が地下通路へ降りてきた。

 

 

「巫女ちゃ〜ん、どぉ〜こにいるんですか〜? なんて言ってるオレ様ですけど実は霊気を辿るのは得意なんですよ。だからどっちへ逃げたかなんていうのはバレバレだよ? 創作活動には観察力が必要なもので、オレ様も人間社会でお勉強したんです。大衆の、一般人の皆様から学ぶことって本当に多いですからねぇッ! ……ハハッ、感情の残り香に大好物の“恐怖”がねぇです。青龍と白虎のクソ侍くんたちでさえ、自分たちの力が通用しないってだけで心が揺れたのに。黄龍の巫女ちゃんは超超超超超一級品の素材になってくれそうな予感がするよ。どんな作品に仕上がるのか、お披露目の瞬間を想像するだけでもご飯を山盛り食べられそうですよぉこいつはぁ……ッ!」

 

 ナメた態度とふざけた口調ではあるが、贋作狂いに油断はない。焦りはあっても恐怖は無い真白なら、逃げながらワナを仕掛けることもあり得るとして慎重に追跡している。

 

 迷宮の果てにある常世で生まれたのではなく、芸術家たちの負の感情が集まって現世で鬼として誕生した贋作狂いは人間を過小評価していなかった。身体能力では自分が圧倒的に上でも、人間の瞬間的な行動力の前では不覚を取ることがあると理解しているのだ。

 

 

 普通の鬼とは違う、付喪神のようなルーツを持つ贋作狂いの正体を探る。そんな感じで風魔と一緒に調査を進めながら仲を深めるのが本来の流れであった。つまりは真白と風魔のステータスが充分に育ってから決着となるはずの鬼ということで、当然そうした要素も能力にしっかりと反映されていた。

 力任せの戦い方で倒す鬼ではない、というフレーバー要素は贋作狂いの慎重さへと繋がった。だから風魔と大地が真白を逃がそうとしたときも妨害しなかった。黄龍の巫女から四神の侍へ不思議な霊気が流れているのが視えていたからだ。

 

 あのふたりは必ず立ち上がる。それは困る。黄龍の巫女という最高の素材で最高の作品を仕立てるならば、それを最初に鑑賞する権利は四神の侍にこそあるのだから。大人しく屈辱に塗れた瞳でじっくり楽しんでもらうためにも、ふたりが復活する前に巫女を確保する必要がある。

 

 

 ゆっくりと。

 

 ゆっくりと、霊気を辿る。

 

 

 芸術家には忍耐が求められる。せっかく巫女と侍を分断して有利な状況を作り上げたのに、ここで自分が焦って台無しにしたのでは勿体ない。

 

 

 ゆっくりと。

 

 ゆっくりと、巫女が待つ場所へ。

 

 

 やがて贋作狂いが地下にしては広めな空間へとやってきて。

 

 

 

 

「おや、おやおやおや〜?」

 

 

 

 

 そこには着崩した白染めの武者鎧で、翡翠の大太刀を担ぎ、鋭い眼光で自分を睨む『武人』が立っていたッ!!




座敷童
『ヒマだったから適当に散歩してたら偶然迷宮までいっちゃって偶然黄龍の巫女を導くみたいなことしちゃったわ〜。偶然って怖いわ〜』
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