「自由なシリアが正直想像できない」アサド政権崩壊から3ヵ月、日本で暮らすシリア人たちの葛藤と願い
「日本で学んだことを活かし、シリアで活躍したい」

同じく奨学金プログラムを利用して’21年にICUに入学したサラさん(27)は今年2月、シリアに帰国するためトルコへ向かった。日本を発つ1週間前に、話を聞いた。
ダマスカスで生まれ育ち、戦況が悪化した’15年にトルコへ移住。シリアの難民を支援する非政府組織(NGO)で働きながら、生計を立てた。ICUでは国際政治学を専攻し、今年3月で卒業を迎えた。
「内戦が終結したら、シリアの人々を支える仕事につきたい。そうずっと願ってきた。人道支援に携わった経験と、日本で学んだことを活かし、これからはシリアで活躍したいと思っている」
帰国後は、現地のNGOに所属し、生活に困っている人々を支えたいという。日本で4年間生活した後に、内戦によって荒廃したシリアでの生活に戻る決断をするのは、決して簡単なことではないはずだ。
「今より生活が大変になることは、十分に覚悟している。電気も水道も、インターネットすらも、まともに使えないことも。でも、『シリアの人々を支えたい』とずっと願ってきたから、それを実現できることに喜びを感じている」
シリアに帰国する人が増えたことから、イスタンブール発ダマスカス行きの航空券は5月まで完売している。現在トルコに滞在中のサラさんは、近日中に陸路でシリアに入国する予定だ。
「戦後に大きく発展し、広く都市開発が進められた日本で学ぶ機会が得られたことを、誇りに思っている」






- 取材・文・撮影:鈴木美優(ジャーナリスト)
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