まったく，きのう，今日と大変な２日間だった．昨日の夕方４時も過ぎた頃，リトゥとカルティックがやってきて，これからLABLチームのボスに計算結果を説明するから，いっしょに来ないかという．やるやると言いながら，こんなコンファレンスの直前まで先延ばしにされてきたというのが実感だ．もちろんということで，２Fのセミナールームに行く．LABLチームからジャネイルともう一人若いのがすでに来ているが，待てども待てどもボスが現れない．時間が無駄なので，こちらは学会デビューのカルティックの発表練習を始める．20分も過ぎた頃，やっと現れる．

ところが，この親分（女性であるが），全く聞く耳を持たない．カルティックが話し始めるや，すぐに話しを止める．ただ口から出てくるのは，この手の分析をするときに素人さんからよく発せられる質問と同程度のことばかりで，そんなことあらかじめ了解済でしょう？と言いたい．ジャネイルがラジャスターン州の工場で収集した太陽電池モジュールの組み立て工程のデータに話が及ぶや否や，「この手のデータは最新の技術を反映したもの，つまり最も省エネ効果が発揮されているものでなければならない，そうでないと，LABLが不当に低く評価される．にもかかわらず，たかだか１工場のデータを使うとは何事か．そもそも，LABLチーム内でよく吟味もしていないのに，外へ出すなぞもってのほかだ」ともっぱらジャネイル攻撃に矛先が移ってしまった．こちらは，まずは現状を認識し，その後に最新の技術を使ったらこの程度になるという実験結果を示すのなら理解できるが，使われてもいない技術を現実のものだというのはいかがものかと反論する．でもまったく聞く耳を持たない，「ジャネイルのデータを使うことは許しません．もともとこんな共同プロジェクトがうまくいくなんて最初から思ってなかったのよ」と言い放って部屋を出て行った．

リトゥに言わせると，いつもこんなもんで，このセクショナリズムを取り除くのもTERIの一つの課題だそうだ．それにしても，あのオバちゃんは酷過ぎる．科学の言葉を使うがちっとも科学的じゃない．言ってやりたいことは山ほどあったが，明日のジャネイルの身の上を考えると，口にテープを貼らざるを得なかった．こちらにとっては，最悪の事態で，日本のデータを使って，ジャネイルのデータを補充して，再計算をしなければならない．あー，今晩寝られない．

なんとか一晩で，データを準備し，なんとか計算も取り繕った．今日は，発表用のスライドを準備していると，これまた夕方４時からTERI全体に向けたセミナーで学会で報告する内容を発表するという．つまり，LABLチームがごたごた言うので，TERI全体から了解を得てしまおうというリトゥの戦略だ．とにかくTERIの人達にとっては産業連関分析は魔法の道具のようなもので，なんでたかだか一つの太陽電池ランプや太陽電池パネルの生産データから，それを作るのに必要な原材料のすべてがわかり，その生産から排出されるCO2の量が計算されるのか不思議でしかたない．おまけに，家計で灯油を燃やすよりも，太陽電池ランプと太陽電池パネルの生産から排出されるCO2の方が少ないものだから，このような計算結果は，LABLの促進のためにもどんどん発信すべきだという，LABLチームの親分とは，全く逆の反応．これで一安心．

実は，このセミナーは副所長のリーナが，ぜひ聞きたいと所望したものだったそうだ．ところがカルティックの大チョンボで，肝心のリーナへの連絡を怠っていた．セミナーに参加する予定でいたが，急遽政府から呼び出されてしまったリトゥが戻って，その事実を知ると御冠で，カルティック君あわててリーナの都合を聞きに行き，じきじきに二人で計算結果を説明した．彼女は理論にも聡明で，若い頃に産業連関分析の経験もあるということで，そもそも小生が産業連関分析をTERIに普及せさることに大賛成である．カルティックもLABLの親分から思わぬ反応を食らって顔面蒼白であったが，副所長からどんどん産業連関表を使って研究を勧めなさいとお墨付きをもらって，やっと顔が緩んだ．リーダーとしての格の違いを，カルティックも理解したようである．

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