新風なるか “外国人漫画家”に熱視線

新風なるか “外国人漫画家”に熱視線
スペインの漫画家が大手漫画雑誌で人気作を連載?
熊本に外国人が集まる「漫画家の育成拠点」がある?

世界で人気の日本の漫画ですが、国内でいま、“外国人漫画家”が話題になっていると知って驚きました。なぜ、外国人なのでしょうか。

取材をすると見えてきたのは、日本の漫画界をめぐる、とある実情と新たな戦略でした。

(科学文化部 堀川雄太郎 / 秋田放送局 志田陽一朗)

“自分が「モーニング」で連載?”

秋田に暮らす元マタギの男性が、ふとしたきっかけでゲーム機を手にし、シューティングゲームのすご腕スナイパーとして世界中のプレーヤーと戦う物語「マタギガンナー」。
漫画雑誌「モーニング」で2022年から連載され、1巻は刊行直後に重版。単行本は現在までに10巻が刊行されている人気作です。

作画を担当するのはスペイン出身のフアン・アルバランさん(49)。もともとはアメリカンコミックの仕事をしていました。
日本で漫画を描くという夢をかなえるため、オンラインサービスを使って、みずからアシスタントとして売り込み、着色や背景などの作業を請け負うようになったといいます。

その後、実力が認められ、「マタギガンナー」連載のチャンスをつかみます。

連載開始当初はバルセロナに住んでいましたが、2023年、北九州市に移住しました。
フアン・アルバランさん
「目が覚めて自分がやっていることが信じられない日もありますよ。『モーニング』で連載している。『どうしてこうなった?』って」
フアンさんによると、スペインは漫画市場がまだまだ成熟していないといいます。

日本に来てからのおよそ2年間で、人生で一番貯金ができたと笑って話します。
フアン・アルバランさん
「スペインには独自の漫画産業はほぼありません。漫画だけで生活できる十分なお金を稼ぐことができないのです。日本で仕事ができてうれしいです」

外国人の視点や個性を武器に

原作者や編集者たちが取材で集めた膨大な資料をもとに、秋田の暮らしの風景や狩猟の様子などを丁寧に描くフアンさん。
アメコミで鍛えたアクションシーンや、作中に登場するユニークな武器のデザイン、そして主人公のゲーム上での姿、サムライのキャラクター。

担当編集の千葉絢音さんは、フアンさんの作品には海外の文化と外国人から見た日本らしさが入り混じった独特の雰囲気があると語ります。
「モーニング」編集部 千葉絢音さん
「今のはやりの日本の漫画とはちょっと違うキャラクターのデザインかなと思っていて、海外の作家さんが見ている日本のかっこいいイメージが入っている気はします」
締め切りを一度も落としたことがなく、情熱も持ち合わせているうえ、連載を通じて絵のクオリティーをどんどん上げているといい、これからの活躍に太鼓判を押します。
千葉絢音さん
「情熱があってクオリティーにも妥協しないというところが作家さんとしてすばらしいです。外国の人という視点から見た漫画づくりというのはすごく新しいと思いますし、意味がある。まだ今ないものがどんどん生まれる可能性があるなというふうに思っています」

“描き手の確保”で海外に注目

フアンさんの活躍もあって、この大手出版社では去年、海外の漫画の傾向の分析や有望な漫画家の発掘を目指す「グローバルチーム」を設置しました。

3月、初めて開かれたというチームの会議を訪ねると…。
「BLとか人気ですか?」
「激しめのほうが圧倒的に好まれている感じ」


海外でどのようなジャンルが好まれているかなど、国際ビジネスの担当者からの聞き取りが行われていました。

チームは去年12月、フアンさんとともにスペインのイベント「マンガ・バルセロナ」にも参加。
その場で、日本でデビューしたい漫画家を募集したところ、70もの作品が集まり、その熱意に驚かされたといいます。

ではなぜいま、わざわざ「外国人の漫画家」に注目するのでしょうか。日本人の漫画家もたくさんいるとは思うのですが…。

チームによると、かつては黙っていても新人などから作品の持ち込みがありましたが、最近は漫画雑誌だけでなく、アプリからSNSまでインターネットを中心に作品を発表できる場所が増えているため、優秀な描き手の確保が課題になっているというのです。
千葉絢音さん
「まだ海外の作家さんというのは手を出している編集者も編集部も少ないので、そこは大きなメリットではないかと思います。めちゃくちゃ可能性を感じますし、おもしろいと思います」
チームでは、海外の漫画家からの持ち込みを受け付けているほか、日本の原作者とのマッチングを進める活動にも力を入れています。

こうした中で、フアンさんに続いて編集部が目をつけたのがコナタさん(24)です。
スペインでも人気作家として知られ、画力も高く、さっそく5月からウェブ雑誌での連載が始まることになりました。

作品は「メアヘイム」。中世のヨーロッパのような世界が舞台のダークファンタジー漫画です。
町や建物の雰囲気など、その世界観にはヨーロッパの文化で育った経験が生かされていてスペインに住みながら連載に臨みます。
コナタさん
「こんなに大きな出版社で連載を始めることにとてもワクワクしています。何とかヒットしてほしい、描き続けたいです」
編集部によると、海外の漫画家との仕事では、言語の壁はもちろん、生活様式や文化の違いが障害となることもあるといいます。

例えば、家の大きさや葬式の時の服まで、その説明に手間もかかります。

それでも編集部では、新たな作品づくりや将来的な海外展開への可能性を感じ、今後も外国人の視点や個性を生かしたヒット作を増やすことを目指したいと語ります。
「モーニング」編集部 三浦敏宏部長
「海外の人が漫画を描くと、母数は増えると思うんです。エンタメにおいては数・量が多いほどチャンスも増える、成功も増えるというものだと思います。10年後とかに今の若い部員とか若い作家とかが国を超えて漫画を作るのが当たり前になるためには、今のうちからやっておかないといけないと感じています」

まるでトキワ荘? 日本で育成も

阿蘇の山々を望む熊本県高森町。

才能ある外国人の漫画家を一から日本で育成する場所があると聞いて訪ねました。
週刊少年ジャンプの元編集長が立ち上げた東京の出版社「コアミックス」が地元の温泉施設を改修して作ったこちらの施設。

およそ2年前にアメリカ、インドネシア、オーストラリア、フィンランド、ブラジル、ロシアから9人の外国人が集まり、契約社員としてアシスタント業を行いながら日本でのデビューを目指す育成拠点です。
その様子はさながらトキワ荘のようです。

住居や食事、ビザの手続きなどもサポートし、一人ひとりに英語を話せる編集者もついて、漫画家と編集者が二人三脚で作品を作る“日本式の漫画づくり”を学びます。
この取り組みについて出版社は“先行投資”だとねらいを語ります。
熊本コアミックス 持田修一社長
「出版社としては絶えず才能ある若い人たちを見いだして育てて、コンテンツを生み出せるような体制を作るのが生命線だと考えています。そのためには日本だけではなくて、海外の才能ある人たちを見いだして育てる。日本の文化を知りながら自分たちが描きたいものを学んでいくということに投資をして、続々とヒット漫画家が生まれていけば、一気に回収できると考えています」

将来的に海外でも活躍を

フィンランド出身のエネワルドさん(21)は、5歳のときに人気アニメの「ワンピース」を見て日本の漫画に興味を持ちました。

その後、国内の出版社が海外の作家を対象に開催するセリフなしの漫画オーディションで作品が評価されて来日。

日本でヒット作を出すことが、世界でも評価される一歩になると話します。
エネワルドさん
「日本の漫画が好きで来ました。漫画はとても人気があるし、日本で働いて認められるようになりたかったです」
何度も企画を作り、去年「2037年4月3日のこと」という宇宙人と人間の交流を描いたSF漫画が初めての読み切りとして雑誌に掲載されました。
ファンレターももらったとうれしそうに話してくれました。

ほかの漫画家たちも続々と読み切りや連載が決定していて、持田社長は将来的に海外でも活躍してほしいと展望を語っています。
持田修一社長
「日本の漫画に熱中して自分で描いてみたいという人たちの受け皿を作って、日本でデビューしてもらう。そしてそれぞれの国に帰ってもらって、それぞれの国でスター作家になってもらうと、世界中の漫画文化というものが発展して盛り上がっていく。最終的には日本の漫画産業というのも拡大していくだろうと考えています」

海外で人気高まる日本の漫画

電子コミックの拡大によって、去年、過去最高となった日本の漫画市場。

その勢いは海外でも同様で、「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」によると、日本の出版分野の海外での売り上げはこの10年余りで3倍近くに伸び、3200億円に上っていて、その多くを漫画が占めています。

アメリカやフランスでは2023年のコミックス全体の売り上げのうち、およそ4割を日本の漫画が占めているほどです。

今回取材した大手出版社でもことし8月に「ヤングマガジンUSA」と題した雑誌をアメリカ向けに刊行予定で、青年漫画の海外へのPRを積極的に進める方針です。
また、経済産業省でもさらなる海外への販路拡大の支援に力を入れることにしています。

海外展開のさまざまな方策の1つとして注目されるのが、外国人漫画家の存在です。

今は国内で連載を始めヒットを目指す段階ですが、将来的には海外の読者に親しまれる作品が生まれることも期待されています。

取材の中で、熊本コアミックスの持田社長は「日本の野球選手がメジャーリーガーになったようなもので、野球の本場で活躍してまた日本に帰ってくるのと同じ。漫画の本場と言われる日本で活躍することでそれぞれの国の人たちが認められて、世界中で盛り上がりが広がっていけばいい」と話していたのが印象的でした。

フアンさんもコナタさんもエネワルドさんも、日本の漫画雑誌に掲載されることを夢のように思ってくれていて、さらなるヒットを目指して奮闘しています。

“メジャーリーグ”で活躍する彼らが、やがて世界中でもヒットする。

そんな日も遠くないのかも知れません。

(3月30日 おはよう日本で放送)
科学文化部記者
堀川雄太郎
岡山市出身 2014年入局
山形・鹿児島を経て22年から科学文化部
秋田放送局記者
志田陽一朗
札幌市出身 2022年入局
23年から秋田局で勤務
現在は秋田市政などを担当
新風なるか “外国人漫画家”に熱視線

WEB
特集
新風なるか “外国人漫画家”に熱視線

スペインの漫画家が大手漫画雑誌で人気作を連載?
熊本に外国人が集まる「漫画家の育成拠点」がある?

世界で人気の日本の漫画ですが、国内でいま、“外国人漫画家”が話題になっていると知って驚きました。なぜ、外国人なのでしょうか。

取材をすると見えてきたのは、日本の漫画界をめぐる、とある実情と新たな戦略でした。

(科学文化部 堀川雄太郎 / 秋田放送局 志田陽一朗)

“自分が「モーニング」で連載?”

秋田に暮らす元マタギの男性が、ふとしたきっかけでゲーム機を手にし、シューティングゲームのすご腕スナイパーとして世界中のプレーヤーと戦う物語「マタギガンナー」。
漫画雑誌「モーニング」で2022年から連載され、1巻は刊行直後に重版。単行本は現在までに10巻が刊行されている人気作です。

作画を担当するのはスペイン出身のフアン・アルバランさん(49)。もともとはアメリカンコミックの仕事をしていました。
日本で漫画を描くという夢をかなえるため、オンラインサービスを使って、みずからアシスタントとして売り込み、着色や背景などの作業を請け負うようになったといいます。

その後、実力が認められ、「マタギガンナー」連載のチャンスをつかみます。

連載開始当初はバルセロナに住んでいましたが、2023年、北九州市に移住しました。
フアン・アルバランさん
「目が覚めて自分がやっていることが信じられない日もありますよ。『モーニング』で連載している。『どうしてこうなった?』って」
フアンさんによると、スペインは漫画市場がまだまだ成熟していないといいます。

日本に来てからのおよそ2年間で、人生で一番貯金ができたと笑って話します。
フアン・アルバランさん
「スペインには独自の漫画産業はほぼありません。漫画だけで生活できる十分なお金を稼ぐことができないのです。日本で仕事ができてうれしいです」

外国人の視点や個性を武器に

外国人の視点や個性を武器に
原作者や編集者たちが取材で集めた膨大な資料をもとに、秋田の暮らしの風景や狩猟の様子などを丁寧に描くフアンさん。
アメコミで鍛えたアクションシーンや、作中に登場するユニークな武器のデザイン、そして主人公のゲーム上での姿、サムライのキャラクター。

担当編集の千葉絢音さんは、フアンさんの作品には海外の文化と外国人から見た日本らしさが入り混じった独特の雰囲気があると語ります。
「モーニング」編集部 千葉絢音さん
「今のはやりの日本の漫画とはちょっと違うキャラクターのデザインかなと思っていて、海外の作家さんが見ている日本のかっこいいイメージが入っている気はします」
締め切りを一度も落としたことがなく、情熱も持ち合わせているうえ、連載を通じて絵のクオリティーをどんどん上げているといい、これからの活躍に太鼓判を押します。
千葉絢音さん
「情熱があってクオリティーにも妥協しないというところが作家さんとしてすばらしいです。外国の人という視点から見た漫画づくりというのはすごく新しいと思いますし、意味がある。まだ今ないものがどんどん生まれる可能性があるなというふうに思っています」

“描き手の確保”で海外に注目

フアンさんの活躍もあって、この大手出版社では去年、海外の漫画の傾向の分析や有望な漫画家の発掘を目指す「グローバルチーム」を設置しました。

3月、初めて開かれたというチームの会議を訪ねると…。
「BLとか人気ですか?」
「激しめのほうが圧倒的に好まれている感じ」


海外でどのようなジャンルが好まれているかなど、国際ビジネスの担当者からの聞き取りが行われていました。

チームは去年12月、フアンさんとともにスペインのイベント「マンガ・バルセロナ」にも参加。
「マンガ・バルセロナ」の様子
その場で、日本でデビューしたい漫画家を募集したところ、70もの作品が集まり、その熱意に驚かされたといいます。

ではなぜいま、わざわざ「外国人の漫画家」に注目するのでしょうか。日本人の漫画家もたくさんいるとは思うのですが…。

チームによると、かつては黙っていても新人などから作品の持ち込みがありましたが、最近は漫画雑誌だけでなく、アプリからSNSまでインターネットを中心に作品を発表できる場所が増えているため、優秀な描き手の確保が課題になっているというのです。
千葉絢音さん
「まだ海外の作家さんというのは手を出している編集者も編集部も少ないので、そこは大きなメリットではないかと思います。めちゃくちゃ可能性を感じますし、おもしろいと思います」
チームでは、海外の漫画家からの持ち込みを受け付けているほか、日本の原作者とのマッチングを進める活動にも力を入れています。

こうした中で、フアンさんに続いて編集部が目をつけたのがコナタさん(24)です。
打ち合わせに東京の編集部を訪れたコナタさん
スペインでも人気作家として知られ、画力も高く、さっそく5月からウェブ雑誌での連載が始まることになりました。

作品は「メアヘイム」。中世のヨーロッパのような世界が舞台のダークファンタジー漫画です。
町や建物の雰囲気など、その世界観にはヨーロッパの文化で育った経験が生かされていてスペインに住みながら連載に臨みます。
コナタさん
「こんなに大きな出版社で連載を始めることにとてもワクワクしています。何とかヒットしてほしい、描き続けたいです」
編集部によると、海外の漫画家との仕事では、言語の壁はもちろん、生活様式や文化の違いが障害となることもあるといいます。

例えば、家の大きさや葬式の時の服まで、その説明に手間もかかります。

それでも編集部では、新たな作品づくりや将来的な海外展開への可能性を感じ、今後も外国人の視点や個性を生かしたヒット作を増やすことを目指したいと語ります。
「モーニング」編集部 三浦敏宏部長
「海外の人が漫画を描くと、母数は増えると思うんです。エンタメにおいては数・量が多いほどチャンスも増える、成功も増えるというものだと思います。10年後とかに今の若い部員とか若い作家とかが国を超えて漫画を作るのが当たり前になるためには、今のうちからやっておかないといけないと感じています」

まるでトキワ荘? 日本で育成も

阿蘇の山々を望む熊本県高森町。

才能ある外国人の漫画家を一から日本で育成する場所があると聞いて訪ねました。
週刊少年ジャンプの元編集長が立ち上げた東京の出版社「コアミックス」が地元の温泉施設を改修して作ったこちらの施設。

およそ2年前にアメリカ、インドネシア、オーストラリア、フィンランド、ブラジル、ロシアから9人の外国人が集まり、契約社員としてアシスタント業を行いながら日本でのデビューを目指す育成拠点です。
その様子はさながらトキワ荘のようです。

住居や食事、ビザの手続きなどもサポートし、一人ひとりに英語を話せる編集者もついて、漫画家と編集者が二人三脚で作品を作る“日本式の漫画づくり”を学びます。
フィンランド出身のエネワルドさん(右)
この取り組みについて出版社は“先行投資”だとねらいを語ります。
熊本コアミックス 持田修一社長
「出版社としては絶えず才能ある若い人たちを見いだして育てて、コンテンツを生み出せるような体制を作るのが生命線だと考えています。そのためには日本だけではなくて、海外の才能ある人たちを見いだして育てる。日本の文化を知りながら自分たちが描きたいものを学んでいくということに投資をして、続々とヒット漫画家が生まれていけば、一気に回収できると考えています」

将来的に海外でも活躍を

将来的に海外でも活躍を
フィンランド出身のエネワルドさん(21)は、5歳のときに人気アニメの「ワンピース」を見て日本の漫画に興味を持ちました。

その後、国内の出版社が海外の作家を対象に開催するセリフなしの漫画オーディションで作品が評価されて来日。

日本でヒット作を出すことが、世界でも評価される一歩になると話します。
エネワルドさん
「日本の漫画が好きで来ました。漫画はとても人気があるし、日本で働いて認められるようになりたかったです」
何度も企画を作り、去年「2037年4月3日のこと」という宇宙人と人間の交流を描いたSF漫画が初めての読み切りとして雑誌に掲載されました。
ファンレターももらったとうれしそうに話してくれました。

ほかの漫画家たちも続々と読み切りや連載が決定していて、持田社長は将来的に海外でも活躍してほしいと展望を語っています。
持田修一社長
「日本の漫画に熱中して自分で描いてみたいという人たちの受け皿を作って、日本でデビューしてもらう。そしてそれぞれの国に帰ってもらって、それぞれの国でスター作家になってもらうと、世界中の漫画文化というものが発展して盛り上がっていく。最終的には日本の漫画産業というのも拡大していくだろうと考えています」

海外で人気高まる日本の漫画

電子コミックの拡大によって、去年、過去最高となった日本の漫画市場。

その勢いは海外でも同様で、「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」によると、日本の出版分野の海外での売り上げはこの10年余りで3倍近くに伸び、3200億円に上っていて、その多くを漫画が占めています。

アメリカやフランスでは2023年のコミックス全体の売り上げのうち、およそ4割を日本の漫画が占めているほどです。

今回取材した大手出版社でもことし8月に「ヤングマガジンUSA」と題した雑誌をアメリカ向けに刊行予定で、青年漫画の海外へのPRを積極的に進める方針です。
また、経済産業省でもさらなる海外への販路拡大の支援に力を入れることにしています。

海外展開のさまざまな方策の1つとして注目されるのが、外国人漫画家の存在です。

今は国内で連載を始めヒットを目指す段階ですが、将来的には海外の読者に親しまれる作品が生まれることも期待されています。

取材の中で、熊本コアミックスの持田社長は「日本の野球選手がメジャーリーガーになったようなもので、野球の本場で活躍してまた日本に帰ってくるのと同じ。漫画の本場と言われる日本で活躍することでそれぞれの国の人たちが認められて、世界中で盛り上がりが広がっていけばいい」と話していたのが印象的でした。

フアンさんもコナタさんもエネワルドさんも、日本の漫画雑誌に掲載されることを夢のように思ってくれていて、さらなるヒットを目指して奮闘しています。

“メジャーリーグ”で活躍する彼らが、やがて世界中でもヒットする。

そんな日も遠くないのかも知れません。

(3月30日 おはよう日本で放送)
科学文化部記者
堀川雄太郎
岡山市出身 2014年入局
山形・鹿児島を経て22年から科学文化部
秋田放送局記者
志田陽一朗
札幌市出身 2022年入局
23年から秋田局で勤務
現在は秋田市政などを担当

あわせて読みたい

スペシャルコンテンツ