6日午後、長崎県の対馬空港から患者を乗せて福岡市の病院に向かっていた医療搬送用のヘリコプターが消息不明になり、その後、壱岐沖の海上で機体が転覆した状態で見つかりました。
海上保安部によりますと、患者の本石ミツ子さん(86)と搬送に付き添っていた息子の本石和吉さん(68)、それに病院の医師、荒川渓さん(34)の3人が死亡しました。
機長や整備士など3人は意識があるということです。
長崎 ヘリ事故 機長“海面に着く前に緊急時用の浮きを出した”
6日、患者を運んでいた医療搬送用のヘリコプターが、長崎県の壱岐の沖合で転覆した状態で見つかり、3人が死亡した事故で、救助された機長が海上保安部の聞き取りに対し「海面に着く前に手動で緊急時用の浮きを出した」という趣旨の説明をしていることが、捜査関係者への取材で分かりました。機体が海に不時着する前に何らかのトラブルが起きていたとみて、海上保安部が当時の状況を詳しく調べています。
機体は海に不時着したとみられ、緊急時に使用するエマージェンシーフロートと呼ばれる浮きが膨らんでいた状態で見つかっていますが、機長が7日、入院中の病院で行われた海上保安部の聞き取りに対し「海面に着く前に手動でフロートを出した」などと説明していることが、捜査関係者への取材で分かりました。
不時着を前に何らかのトラブルが起きていたとみて、海上保安部が当時の状況をさらに詳しく調べています。
運輸安全委「機長に着水する意思あったと考えられる」
事故を受けて、国の運輸安全委員会の航空事故調査官が7日、福岡市の病院を訪れ、救助された機長などから当時の状況などを聞き取りました。
福岡市東区の福岡和白病院は、事故があったヘリコプターの運航を委託していて、病院には運航会社の担当者が常駐しているほか、救助された機長や整備士、それに看護師がこの病院に入院して治療を受けています。
事故の調査に訪れた国の運輸安全委員会の奥山克也 航空事故調査官は報道陣の取材に応じ、7日は治療を受けている機長など3人のほか、運航管理担当者に話を聞いて、事故当時の状況や脱出時の様子などを確認したと説明しました。
この中で、緊急時に使用する「エマージェンシーフロート」と呼ばれる浮きが膨らんでいたことについて「マニュアル操作をしないかぎりフロートが広がらないので、機長に着水する意思があったと考えられる」と述べ、現時点では不時着水の可能性が高いとみていることを明らかにしました。
また、ヘリコプターを運航していた会社の別の機体が去年7月に墜落し、2人が死亡した事故が起きていたことについては「機種が違うこともあり、別の事故として調査するが、管理体制などで気付く点があれば検討する」と述べました。
8日は、佐賀市にある運航会社の本社で機体の整備状況なども調査する予定で、今後、機体を回収し状態を見て速度や高度のデータが残っているかなども確認しながら再発防止に向け事故原因を明らかにするとしています。
ヘリ運航会社「3人の命を失う結果 深くおわび申し上げます」
ヘリコプターを運航していた佐賀市の「エス・ジー・シー佐賀航空」が、7日、会見を開きました。
この中で、宮原幸徳 統括航空事業本部長は「3人の尊い命を失う結果となったことを深くおわび申し上げます。事故が起きたことは非常に遺憾に思っています」と述べました。
会社によりますと、この機体は2013年に製造され、これまでに事故はなく、修理をした記録もないということです。
事故当日、飛行の前に行われた点検でも異常はありまでんした。
66歳の機長は、ヘリコプターでの総飛行時間が3692時間と経験豊かで、今回の機体での飛行も643時間行い、当日の健康状態も問題はなかったということです。
午後1時30分に対馬空港を離陸したという連絡があってから17分後、ヘリコプターの航跡をモニターしている画面上で機体が動かなくなったといいます。
この間、ヘリコプターとは連絡をとっていなかったということです。
また、機体が強い衝撃を受けると自動で位置情報などを知らせる「ELT」と呼ばれる装置が作動したかどうかはわかっていないということで、今後、機長などから聞き取りを行って明らかにしたいとしています。
会社では、事故機以外にもヘリコプター1機とセスナ5機を所有しているということですが、事故を受けて、国の運輸安全委員会の調査が行われている間は、すべての運航をとりやめるということです。
国交省 “海上に不時着水”
国土交通省によりますと、今回の事故では、これまでのところパイロットが機体を制御できない状態だったことを示す情報はない一方、機体を水に浮かすためのフロートは意図して使われたとみられるということです。
このため国土交通省は、「墜落」ではなく海上に「不時着水」したとしています。また、機体に目立った損傷は確認されていないということです。
亡くなった親子の知人「2人とも優しかった」
亡くなった本石さん親子を知る女性は「まさか私たちの知っている人がヘリコプターに乗っていると思わなかったので、ニュースを見てびっくりしています。2人とも優しくて、育てているみかんやコメができたら持ってきてくれていました。2人の家族にはどんなことばをかけていいかわかりません」と話していました。
また、息子の和吉さんと同級生だという60代の女性は「ニュースを見てからとにかくショックで、きょうは何も手につきません。いつもニコニコしていた和吉さんの姿が思い出されます。島民にとってはヘリコプターは必要なので、きちんと原因を調べてもらいたい」と話していました。
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