私は同じ名前の、この本の主人公に憧れている。
この本の名前は、『テリーのワンダーランド』
主人公・テリーは、精霊にさらわれた姉を救うために異世界へ旅立つ。
その旅の中で、テリーは「モンスターマスター」となり、モンスターたちと心を通わせ、仲間として共に戦いながら冒険を続けていく。
色んなモンスターを仲間にして、大会で優勝し、姉と一緒に帰ってくる――
私は、そんな物語に心を奪われた。
いつしか私も、モンスターと出会い、仲間にして、一緒に戦って冒険がしたいと思うようになっていた。
でも、現実は違う。
今の時代の冒険者は、創作とは違って、自分自身が前に立ってモンスターと戦い、レベルを上げ、強くなっていく存在。
モンスターと心を通わせるなんて、ただの夢物語――そう思っていた。
……思ってたんだ。
でも、この前のこと。
私の村にキャラバンがやってきて、その中の人が教えてくれたんだ。
「オラリオには“調教師(テイマー)”と呼ばれる冒険者がいる」って!
その人も詳しくは知らなかったみたいだけど、その“調教師”は、自分でも戦えるけど、モンスターを戦わせることもできるんだって――!
もう、その瞬間には決めてた。
私、オラリオに行く!って。
お父さんもお母さんも、「まだ早い」って反対してきたけど、私は毎日お手伝いを頑張って、説得も全力でした。
そのおかげで、「毎月お手紙を送ること」を条件に、オラリオ行きの許可をもらえたんだ!
そこからはあっという間だった。
行く日も決まり、必要な荷物やお金も準備してもらって、大事にしていた『テリーのワンダーランド』も持って――
そして、ついにその日が来た。
うちの村はオラリオの近くにあったから、親に送ってもらって向かった。
オラリオについた――
ここから、私の夢への第一歩が始まる!
……そう思ってた。
でも、私はすぐに自信をなくしてしまった。
ちょうどオラリオに着いた日、運悪く「怪物祭(モンスターフィリア)」という祭りが行われていた。
ガネーシャ・ファミリアが主催する、モンスターをテイムする過程を見せるイベントだ。
でもそれは、私が憧れた“テリー”のやり方とはまるで違った。
テリーは「スカウトアタック」っていう、相手を傷つけない不思議な技でモンスターと心を通わせていた。
だけど、この祭りで見たのは、モンスターを本当に傷つけて、弱らせて、従わせていた。
――こんなの、私がなりたい“モンスターマスター”じゃない。
私は、モンスターと仲良くなりたいんだ……!
でも、周りに聞いてみても、モンスターをテイムしているのはガネーシャ・ファミリアくらいで、他のファミリアはモンスターを倒すばかりらしい。
宿を探したり、ギルドでファミリアの情報を聞いたりしてる間に、怪物祭でテイム予定だったモンスターが脱走して、冒険者たちがそれを追いかけて大騒ぎになったりと……。
もう、初日から色々ありすぎて、ぐったりだった。
そもそも私は、ファミリアに入らないといけないのか?
でも、ファミリアに入らなきゃ生きていけないっていうし――
いろんな考えが頭の中をぐるぐるして、気づいたら泊まった宿で寝ちゃってた。
翌朝、ギルドでもう一度話を聞いたら、まず驚かれた。
「10歳でファミリアに入りたいなんて正気か?」って顔だった。
それでも、私はダンジョンでモンスターを見てみたいし、もしかしたら……神の恩恵(ファルナ)で、何か特別な力をもらえるかもしれない。
一生懸命説明したら、渋々だけど、ファミリアの情報がまとめられた冊子をもらえた。
それから私は、その冊子を片手に、いくつものファミリアを回った。
でも、どこに行っても「子供すぎる」と断られてばかりだった。
そして最後に残ったのが――
最近できたばかりで、団員が一人しかいないという「ヘスティア・ファミリア」。
……正直、拠点の見た目からして他とぜんっぜん違う!
これまで見てきたどのファミリアとも雰囲気が違いすぎて、私は戸惑って入口でオロオロしていた。
すると、拠点の中から一人の青年が出てきた。
白い髪に赤い目。
どこか兎を思わせるような雰囲気で、年齢もあまり離れていなさそうだった。
「行ってきます」と言いながら出てきたその人は、立ち尽くす私に気づいて声をかけてきた。
「こんなところに来るなんて、どうしたの?」
――これが、私と“ベルさん”との初めての出会いだった。