さて、先ほどはカーバンクルはあまり強くないと言った。実際に攻撃力はあまり無く、能力もドーム型の結界を張るだけ。逃げ足は早いがそれは戦闘が強いことと=にはならない。
しかし、あくまでそれは真正面から戦うことにおいてのみだ。その結界の防御力は晶黽(ヴァルグ)の大群による毒液の豪雨をも防ぐほどのものであり、同格相手ならよっぽどの火力がなければ突破はされない。
そんな生き残る能力に特化したと言ってもいいのがカーバンクルだ。
「「「ぶ〜ん」」」
…さて、そろそろ現実逃避をやめよう。
今俺は…。
「「「ぶ〜〜ん」」」「ぶ〜ん」「「「「ぶぶ〜〜〜ん」」」」
デカい蚊の大群に襲われていた。
…いや、これは予想外なんだが‼︎いや、モンスター自体は目標通りだよ‼︎このモンスターは巨大蚊とそのまんまな名前のやつでその名の通り蚊だから耐久は低いし、この階層に出る異常な速さのの燕と違ってそこまで速くないから作戦に有効だからね。
けどさ……まさか異端児のモンスターに狙われる性質がここまでとは思わないじゃん‼︎幸い攻撃方法が近接のみで距離を取れてるけど流石に多すぎて虫大丈夫な俺でもきつい。
多分だけどこれ30匹入るよね!?しかもまた増えたし‼︎
まっまぁ幸いなことに目的地はすぐ近くだし、そこまで攻撃自体は結界で防御できる程度だ。魔力さえあればそこまで問題にはならない。
っと、目的地に着いた。
そこは、ダンジョンの端にある壁の部分で上の方が光を遮るように岩が突出している場所だ。
それにこの状況は決して悪くない。何せこいつらを全員倒せば大量の魔石が手に入るんだから万々歳だ。
さて作戦開始だ。まずは奴等を壁沿いに固まるように走る。そしてある程度まとまったところですぐさま壁とは直角に離れる。そうするとこの蚊達は、急激な方向転換とカーバンクルの足の速さで見失う。そのあとすぐさま蚊達の方に振り向いて結界を張ったまま…。
「キュキュキュー‼︎」《突撃ー‼︎》
と蚊を結界に巻き込んでそのまま壁とサンドする。んっ?流石に一回じゃ無理か。ならまた離れて突撃を繰り返して…。
「ぶっぶ〜ん」
今最後の一匹が羽も足も取れて、胴体は潰れて死んだ。
…よっしゃー、勝ったぞー‼︎いやー、数は多かったけど幸いな事に最初の突撃で殆どの蚊を巻き込めたのが大きかった。壁から離れる時も妨害する暇なく何度壁と挟んだから実質完封したし。
けど、生き物を殺したのに本当に何も感じないな。いや、嬉しくわあるよ!初めて戦闘に勝利したしね。
だけど虫だからなのか、罪悪感とか恐怖心は湧いてこない。
…まぁ、考えても仕方がない。とりあえず気持ち悪いけど蚊のお腹とか胴体あたりを抉って魔石を探してみると…。
あった。胸の中心部に紫色の石が存在した。これを食べればいいのかな?とりあえず食べよう。
「パクっ」
つっ!!凄いなこれは、身体中にまるで力が漲ってくるような。強くなったと自覚できる万能感が溢れる。強化種が魔石を求める理由が分かる。この感覚は…忘れられない。
また、食いたい。あの感覚を味わいたい。その思考に支配されそうになるが……その思考を理性で消し去る。
俺は生きるために魔石を喰らうのだ。目的と手段が逆転しては話にならない。
こうして俺の初めての戦いは俺の圧勝で終わった。