GROKを併用して書いた物語です。
三人だけのお茶会の後で置いてきぼりにされてしまった小枝を描いています。
2025/04/06更に加筆しました。
贖罪の塔の最上階、星々が瞬く夜空の下で、最後のお茶会が終わった。
その夜、12年分の思い出を語り尽くした小枝・ロウファルテンは、ミセリアとフォルティスと共に贖罪の塔の屋上へ向かった。
空には美しい虹が架かり、それを見たミセリアは優しく呟く。
「見て、虹が架かったよ。」
フォルティスが微笑んで「ああ、虹が架かったな」と続ける。
小枝の心には、美しい虹と、ミセリアの優しい笑顔、そしてフォルティスの「小枝、お前は俺の誇りだ」という力強い言葉が深く刻まれた。
やがて三人は手を取り合い、四月島に別れを告げ、旅立った。
…はずだった。
ミセリアとフォルティスが光に包まれて消えた後、何故か小枝は一人で贖罪の塔の最上階に取り残された。
一度出たら二度と戻れないとされている四月島で、彼女は完全に取り残されたのだ。
「私だけ、どうして…。」
小枝はそう呟き、心をざわつかせた。
愛する二人と離れたことで、ほろ苦い寂しさと強い不安が彼女の心を支配し始めた。
突然の孤独に耐えきれず、小枝は絶望に飲み込まれていった。
彼女は贖罪の塔を駆け下り、もう一つの出口ともされている北の谷に向かった。
もう二度とミセリアやフォルティスに会えないかもしれないという恐怖が、彼女の心を押し潰していた。
途中で何人かのアナザーとすれ違い、声を掛けられたが、何の言葉も返すことができなかった。
北の谷の崖に立ち、身を投げて死ぬことを考えた。
だが、その一歩を踏み出す直前、彼女は立ち止まった。
「これは何かのトラブルに違いない。きっとすぐ直る。私も旅立てる。二人にまた会える…。」
小枝はそう自分に言い聞かせ、絶望を押し留めた。
彼女が再び贖罪の塔の最上階に戻った頃には、架かっていた虹はもう薄くなっていた。
更に時が過ぎ、夜空には再び星々だけが静かに輝いていた。
小枝は贖罪の塔の最上階に座り込み、どれくらい時間が経ったのかも分からないまま、ただ呆然と佇んでいた。
「これから私、どうすれば…。」
不安そうに呟いた彼女の声は、夜風にかき消された。
それでも、彼女の心の奥底には、小さな希望の灯がまだ消えていなかった。
「二人にまた会える…。そう信じたい…。」
小枝はそっと目を閉じ、二人の笑顔を思い出した。
その瞬間、微かな風が彼女の頬を撫で、どこからか温かな光が差し込んだような感覚がした。
「…え?」
小枝が顔を上げると、空間が突然、淡い光に包まれた。
驚いた小枝が顔を上げると、そこには見慣れた二人の姿があった。
ミセリアの柔らかな笑顔と、フォルティスの頼もしい眼差しが、彼女を見つめていた。
「遅かったな、小枝。ずっと待っていたぞ。」
フォルティスが力強く言うと、ミセリアが優しく微笑んだ。
「小枝、キミが来るのを待ってたんだよ。あたしたち、キミなしで旅立つなんて考えられなかったから。」
小枝は目を丸くした。
二度と戻れないとされているのに、戻ってきてくれた。
それはまさに奇跡だった。
彼女が信じ続けた希望が現実となり、目の前にいる二人の姿に、胸が熱くなり、喜びが溢れ出した。
「ミセリアさま…フォルティスさま…!」
小枝の声は震え、涙が溢れ出した。
彼女は心から嬉しくて、信じられない気持ちでいっぱいだった。
「でも…私、遅れてしまって…。ごめんなさい、ミセリアさま、フォルティスさま…。」
小枝の声は震え、涙が止まらなかった。
ミセリアがそっと近づき、彼女の手を取った。
「遅れた理由なんて、どうでもいいよ。小枝、キミが大好きだよ。いつも純粋で、どんな時でも一生懸命頑張るキミの姿に、あたしたちは何度も励まされてきた。キミがそばにいてくれるから、あたしたちはこんなにも強い絆で結ばれてるんだよ。」
フォルティスが大きく頷き、力強い声で続けた。
「そうだ、小枝。遅れた理由なんてどうでもいい。お前が来ないなら、俺たちはどんな奇跡でも起こしてここに戻ってくるつもりでいた。三人で旅立つと決めたのだから、待つしかないだろう?」
小枝の目から、涙が次々とこぼれた。
彼女が抱えていた不安が、二人の言葉で溶けていくようだった。
「ミセリアさま、フォルティスさま…。ありがとうございます。私、ずっと怖くて…でも、こうやって戻ってきてくださるなんて…本当に嬉しいです…。」
ミセリアが小枝を抱きしめた。
「気にしなくていいよ。小枝の努力と愛情は、あたしたちが一番よく知ってる。キミは、誰よりも優しくて、責任感が強い子だよ。」
フォルティスが少し照れくさそうに笑って付け加えた。「小枝、俺たちの旅立ちはお前がいてこそだ。さあ、行くぞ。新しい世界で双子として生まれ変わるのだ。太陽の下で仲良く育つ未来が待っているからな。」
小枝は涙を拭い、力強く頷いた。
彼女の心から不安が消え、温かな光が広がった。
ミセリアとフォルティスの手を握り、三人は再び光に包まれた。
今度こそ、三人一緒の旅立ちだ。
贖罪の塔の最上階から、新しい世界へ——。
小枝は過去の出来事をすべて手放し、愛する二人と共に未来へ進んでいった。
(了)