NHK連続テレビ小説『おむすび』公式サイトより

視聴率で苦戦…朝ドラ『おむすび』の“残念だったところ”と、それでも「評価したい」と思うワケ

朝ドラヒロインの基本

予定調和で終わらない。

そこから読み取れるメッセージ性は「いまは続く」ということではないか。

現在の生活はまだまだ続く。

主人公はまだ三十代である。

平成16年(2004)年高校入学シーンからドラマが始まり、令和7年(2025年)まで描かれていたから、最終話で36歳あたり。

ここで人生が丸められるわけではない。これからいままで以上にいろんなことが起こる。敵対する医師はまだまだ出てくるだろうし、まだまだやっつけていかなければいけない。

書いていて、医師をやっつけるとか、物語としてどうなんだろうとおもうのだが、でもそういうドラマだからしかたがない。いつも医師をやっつけたい管理栄養士の物語ではない。ヒロインの前に立ちはだかる障壁は常に乗り越えていかなければいけない、ということである。

それが朝ドラヒロインの基本である。

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具体的な行動は、とてもいろいろ間違っているのだが、どうしようもない。

いろいろむずかしい。

そういうエピソードの出し方や、前に設けられた障壁の質にはたしかにいくつか問題があったようにおもうが、しかし物語構造として、「いまを精一杯生きる」というメッセージを発していたとおもわれる。そこは私はとてもよかったとおもう。

これは「夢を持て、それに向かって進む人生こそが素晴らしい人生だ」とのいわば対立軸である。

夢を持て、と若者に勧める、それがいいことなのかどうか、けっこうむずかしいところにある。

もちろん夢を持ったほうが、充実した人生を送れる若者はいる。

そうやって大きなことを成し遂げる者もいるだろう。

でも、夢を持てといわれるほうがプレッシャーになって(だって何も浮かばないから)、よりつらくなる若者もいる。たぶん、そっちのほうが多い。

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