『おむすび』が訴えたかったこととは?
朝ドラは半年で120話を超える長丁場のドラマだから、最終週はきちんとラストに向かって収束していくものである。
最終週だけの小さな事件は起こるが、すぐにおさまりそうなもので、そのまま穏やかに最後に向かう。
でも、『おむすび』はそうではなかった。
そして『おむすび』が訴えたかったのは、そこだったのではないだろうか。
たとえば最終週に登場した若手の医師は、とても感じの悪いエリート医師で、結たちの提言を頭から相手にしない。
きちんとわかりやすい対立者である。
朝ドラでは対立者として出てきた存在は、ぶつかったあと、和解してやがて仲良くなっていくのがふつうである。
たとえば第8週に始まった神戸の栄養専門学校で初対面でぶつかった沙智(山本舞香)は、朝ドラ受けですぐに博多華丸が「のちの大親友やね」と楽しそうに見通していたように、きちんと友だちになっている。
対立した相手は「のちの親友」というのが朝ドラのお決まりである。
病院でも薬剤師の篠宮(辻凪子)や、管理栄養士の柿沼(しますい香奈)、内科の森下医師(馬場徹)らとは初対面のときにぶつかっていた。でもやがて仲良くなり、味方となっていってくれる。
でも最終盤にでてきた敵対する医師は、ぎりぎりまで嫌なやつで、最終話の1つ前で、上司によって排除されるばかりだった。
医師ではない主人公たちの判断が正しいと認められ、若い医師の判断は部長によって却下されたのだ。
ぎりぎりになって登場した対立者ときちんと和解できるのかと気になったが、制作側は気にしてなかった。
最後は、悪いやつは切る、という結末であった。
けっこう暴れん坊将軍のような朝ドラである。
それが『おむすび』の特徴であった。