年収ランキングの常連で“254億円寄付”でも話題になった「キーエンス」はそもそも何がスゴいのか
成長しているとき、調子に乗って大型(追加)投資をする。シェアトップ、上位を狙い、莫大な販促費をかける。キラキラしている(目立つ)がゆえ、これは儲かるぞと、外国企業も目をつける。労働コストが安い国の企業が、模倣の戦略を用いて、あっという間に追いつき、追い抜く。まさにアメリカの経営学者クレイトン・クリステンセンが言うところの「イノベーションのジレンマ」の罠にはまった。 キーエンスと同じ大阪に本社を置く、三洋電機、シャープは一時キラキラしたが、経営破綻した。そして、パナソニック(現・パナソニック ホールディングス)も同じ轍を踏んだ。今、このサイクルから抜け出そうと悪戦苦闘している。
セコム創業者の故・飯田亮氏は、「なぜ、あの会社があんなに儲かっているのかわからない、と言われる企業にならなくてはだめだ」と話していた。まさに、キーエンスはこのことを実践している。 キーエンスのビジネスモデルは、故・野中郁次郎・一橋大学名誉教授が構築したSECI(セキ)モデルに通じる。言語化しにくい個人の知識や経験(暗黙知)を組織全体で共有しデータやマニュアルなどの形式知に変換することで、新たな発見を得る知識創造プロセスを実現している。この循環がキーエンスの競争力を支える要因になっていると考えられる。
一方、表に出ていない暗黙知がたくさんある。その1つが、「キラキラしない美学」である。 キーエンスの強さに要因について書かれた著書が数冊上梓されている。これらの中でも、学術書(経営学、技術経営)ながら比較的読みやすい筆致で示唆を与えてくれる著書としては、延岡健太郎・大阪大学名誉教授(現・同志社大学特別客員教授)の『キーエンス 高付加価値経営の論理―顧客利益最大化のイノベーション―』(2023年3月、日本経済新聞出版)をお勧めしたい。「最小の資本と人で、最大の付加価値を上げる」という理念を掲げる同社について分析している。