年収ランキングの常連で“254億円寄付”でも話題になった「キーエンス」はそもそも何がスゴいのか
「企業は社会の公器である」というオムロン創業者・立石一真氏の理念のもとに、身障者が働ける工場(オムロン太陽)まで設立した「良心経営」は高く評価すべきだが、『論語と算盤』の算盤ではキーエンスのほうに軍配が上がった。 ■「全世界当日出荷」を可能にする営業力 キーエンスは世界46カ国250拠点で事業を展開している。多くのグローバル企業が採用しているような代理店、販売会社経由ではなく、顧客との距離を短くしたグローバル直販体制「グローバルダイレクトセールス」を展開。顧客ニーズをいち早くくみ取れる体制を構築した。
専門知識を持ったキーエンスの営業担当者が顧客の生産現場へ足を運ぶ。そして、悩みを聞き、隠れたニーズを見つけ、即座に課題を解決する。この営業手法が顧客満足度を高め、リピーターを増やす要因になっている。 「グローバルダイレクトセールス」は、キーエンス製品を世界のデファクト・スタンダード(事実上の標準)にするうえでも貢献している。 実は、同社が発売する製品の7割は世界初、業界初。当然、初めて目にした顧客は戸惑う。そこで、テスト機を使ってもらい、得た評価をすぐさま企画・開発にフィードバックする。そして、汎用性の高い標準品としても販売できるように改良、開発する。その結果、幅広い業界でキーエンスの製品が使われるようになる。
メーカーにとって、FAの休日は許されない。キーエンスは、個客との密なコミュニケーションを通して、業界の市場動向をいち早くキャッチし、正確な需要予測を行い見込み生産する。そうすることで、オーダーのあった商品をその日のうちに届けられる「全世界当日出荷」を可能にした。こうして、生産現場で部品待ちの不安を解消している。 JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)と呼ばれる伝統的な日本企業の価値観からすれば、このような顧客に密着した営業を行うには、接待にさぞかし多くの時間と金をかけているのでは、と邪推するかもしれない。ところが、実態は実に合理的である。