年収ランキングの常連で“254億円寄付”でも話題になった「キーエンス」はそもそも何がスゴいのか
「キラキラネーム」に「キラキラ女子」。そして、最近は「キラキラ(元)社長」が注目されている。 【100社ランキング】20年間で激変した「平均年収ランキング」 一方、キラキラすることなく、「失われた30年」においても、40%を超える売上高営業利益率を達成し続け、直近では50%を超えたグローバル企業がある。キーエンス(大阪市)だ。「静なる優良企業」の競争力をビジネスモデル、働き方、経営者論などの視点から洞察してみると、意外な気づきがあった。 ■ファブレスが生む高収益体質
まずはキーエンスの主要業績と時価総額を見ていきたい。 2023年度(2024年3月期)の連結業績は、売上高9673億円、営業利益4950億円、営業利益率は51.1%という好業績を計上した。2024年度(2025年3月期)も増収増益になる見通しだ。 現在、東京証券取引所プライム市場に上場しているキーエンスの時価総額は、約14兆9329億円(2025年3月14日時点)。トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソニーグループ、日立製作所、三井住友フィナンシャルグループに次いで日本の上場企業の中で6位に位置している。
キーエンスがどのような会社か知らない人は、これらの数字を見て驚いたことだろう。 同社は、センサー、測定器、画像処理機器、制御・計測機器、研究・開発用解析機器、ビジネス情報機器などのファクトリー・オートメーション(FA:工場の生産工程を自動化する)機器を提供している。それらの企画、設計、販売に徹し、生産のほとんどを外部に委託するファブレス経営で成長した。 ファブレスというビジネスモデルを採用した理由は主に次の3つだ。
① 商品の特性とマッチした技術、生産ラインを持つ工場を柔軟に選択できる ② 自社工場を持ってしまえば、新商品を製造するたびにラインの再編成を強いられる。これが生産性の悪化やコスト高を招く。生産体制を意識するあまり、柔軟な企画が生まれなくなる ③ 世界情勢や市場の変化に左右されず、付加価値の高い商品を大量生産するのに適している オムロンの立石義雄・元会長が生前、「なぜ、キーエンスに勝てないのか」と口惜しく思っていた。オムロンのほうが取扱製品の幅が広いという点もあるが、ファブレスというビジネスモデルを使っているか否かが売上高利益率の差に表れた1つの大きな要因と考えられる。