【第18回】補助金取消処分の根拠とされる「第24条」とは何か?
―「補助金等適正化法」から読み解く、中小機構の処分の正当性
今回は、補助金等適正化法第24条について解説している法令解説書の内容をもとに、交付取消処分の「根拠」とされている法律が何を意味しているのかを、わかりやすくお伝えします。
■ 第24条は「補助金の返還を命じることができる」という規定
補助金等適正化法の第24条は、国が交付した補助金が不正に使用されたり、目的外に使われたりした場合に、交付決定の取消しや返還命令を出すことができるという条文です。
📖【法律の条文(概要)】
補助金等の交付を受けた者が、虚偽の申請や不正な手段で補助金を受けたときなどに、交付の取消しや返還命令を出すことができる。
この「出すことができる」というのがポイントで、実はこの条文は「必ず取消さなければならない」とまでは言っていません。つまり、裁量の余地がある規定です。
■ 「交付の取消し=義務」ではなく「判断次第で可能」な制度
解説書では、第24条に基づく取消し処分について、次のように整理されています。
この条文は、補助金の目的が達成できない場合や違反行為があった場合に「取消しや返還命令ができる」という裁量規定である。
つまり、必ず取消さなければならない義務的な規定ではない。
実際の取消しにあたっては、個別の事情を踏まえて、国側に一定の裁量判断の余地が認められている。
また、違反行為があったとしても、それが軽微であったり、補助金の目的自体は達成されているような場合には、取消しを行わないという対応も許容されるとされています。
■ 本件訴訟との関係:中小機構に裁量判断はあったのか?
現在私たちが争っている訴訟では、「事業再構築補助金」の交付決定が取消され、補助金の返還を命じられました。中小機構は、この第24条を処分の根拠に挙げています。
しかし問題は、
❓ 本当に中小機構が第24条に基づいた適切な裁量判断を行ったのか?
という点です。
今回の取消しは、「報告書に一部不備がある」という理由でしたが、事業自体は完了し、補助金の目的も達成されていました。そうであれば、処分にあたっては
軽微な違反に過ぎないのではないか?
補助金の目的達成を踏まえ、取消し以外の措置(例えば指導や是正)もあり得たのでは?
といった点が本来考慮されるべきです。
ところが実際には、中小機構は明確な裁量判断の理由も示さずに、事務委託先であるパソナとのやり取りだけで取消しを進めたと見られます。これでは、本来「裁量の余地」があるはずの処分が、単なる形式的な機械処理になっているのではないでしょうか。
■ まとめ:法律が定める「判断の余地」を無視してはいけない
第24条は、補助金の取消しを可能にするための重要な条文ですが、それはあくまで「判断の余地がある」ものであって、形式的に一律適用されるものではありません。
補助金の趣旨や実態を無視したまま、一律的な取消し処分がまかり通れば、真面目に事業を行ってきた中小企業の信用や経営に重大なダメージを与えかねません。
今回の訴訟は、まさにその「判断のプロセス」が問われている裁判です。


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