親友が分裂TSした!?
親友が死んだ1か月後、ミツキという女子が転校してきたのだが、その女子は自分が親友のミツシゲだと言い出した。しかし、他にも自分がミツシゲだという女子が次々に現れてきて……という感じの分裂TSな話です。ホラーじゃないよ。
2025/01/15~2025/01/21オリジナルウィークリーランキング7位になりました
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突然の衝撃的な出来事が起こると、人間って悲しいとかそういう感情って出にくいって聞いたことがある。
実際経験してみると「なるほど、本当だった」と理解する。
まさに俺、マサトモが経験しているのがそれだ。親友のミツシゲが、突然に事故で死んだ。
居眠り運転のトラックが赤信号突っ込んできたらしい。そのトラックの会社、労働環境最悪のブラック企業だったとかなんとか。
とにかく親友はそれであっさりと、本当に突然に死んでしまった。
クラスメイト達が葬儀の中で涙流しているのを見ている横で、俺は泣いてなかった。
仲のいい俺としては多分泣くのが普通なのかもしれないけど、なぜか涙が出なかった。
周囲は「あれだけ仲が良かったのに」「涙一つ流さないってどんな神経?」なんて言う奴もいたけど、自分でも不思議なんだよ。
気持ちの整理が追い付かないのかもしれない。どうにも現実を受け入れられない。
明るくて気さくで馬鹿な冗談でお互い盛り上がって仲のいいアイツがいなくなってしまったことに、理解が追いついてなかったのだと思う。
もしかしてこれが悪い夢でひょんなことでアイツがふざけた顔しながら「帰ってきましたー」なんて言うんじゃないかって思えて。
そんな現実を受け入れられない状況が続き、1か月経ったある時だった。
いつもの朝のHR、担任と一緒に入ってきたのは見たことのない一人の女子。
見た目は、まあまあ可愛い。自分の好みかと言えば好みだ。つまりのところ、その女子は新しいクラスメイトだった。
といっても厳密には転校生ではないようで、今までその女子は事故で昏睡状態だったらしい。
意識を取り戻して、そして復学して今日から同じクラスになるようで。ちなみに年齢は俺たちより一つ上とか。
丁寧な自己紹介と挨拶をする新たなクラスメイト、名前をミツキと名乗った彼女。しかし初めて会ったのにもかかわらず、俺はどこかその女子に見覚えがあった。
見覚え? 違う、誰かに似ているのだ。見た目ではなく、振る舞いとか話し方のクセとか。
違和感を抱いている中で挨拶は終わりその女子生徒、ミツキさんがつかつかと座席の間を歩き、俺の隣の席に着く。
ちょうどそこに新たに机が用意されていたのだが、俺はそんな動きをつい目で追っていた。
するとちょうどこっちの視線に気がついたのか彼女が振り向く。
いけないつい目で追っていた、と失礼なことに気がついて視線をそらそうとしたが、それより前に彼女が俺にこうささやいた。
「久しいなぁ、マサトモ」って。
はっ、となって振り返るとそこには彼女の笑顔、というかしたり顔があって。そして続く言葉は「オレだよ、ミツシゲだよ」って。
何を言っているんだ? と思ったけどその表情から受ける印象は、確かに死んだ親友のミツシゲそのものだった。
「俺はきっと明日からいじめられるかもしれない」
「それはひどいなぁ、もしイジメられたらオレが守ってやるよ」
「頼もしいが原因はお前だよっ!」
放課後、下校の道を歩く俺の隣には当の原因であるミツキが歩いていた。
実にカワイイ女子、新たなクラスメイト、であるがその中身は残念なことに先日死んだはずの親友のミツシゲだという。
「そんな、悪いことを私のせいにするなんて、よよょぉ」
「お前が勝手に俺のカノジョ宣言するからだろうがっ!」
そう、俺がいじめの危機に直面しているのはあのしたり顔の後にいきなり俺に抱きついて「カレは私の運命の人なのっ!」などと宣言しやがったせいだ。
爆弾発言にクラスは沸き立ち、女子は尊いものを見たと歓喜し、一部男子は茶化し、そして残りの男子は嫉妬の怨念を容赦なくぶつけてきて。
なにせ彼女、ミツキの容姿はまあまあいいし、スタイルもいいからお近づきになりたいと思っていたであろう一部男子としてはいきなりリサーブされてそりゃお怒りでしょうよ。
結果今日だけでもクラス中からの猛攻に耐えなければいけなかった。「どこで知り合った」「いつの間に!」「この野郎抜け駆けしやがって!」「コノウラミハラスベグガ」などなど。しんどい。
そうした猛攻が一日中あったせいでちゃんと確認できなかったけど、さあ帰るぞとという時にこの女子は「一緒に帰ろ♪」などと言いながら俺の腕に抱きついてきて。
柔らかい感触が腕に当たり緊張するとともに、さらなるクラスの彼女いない男子からの嫉妬の視線にさらされることになり、生きた心地がしなかった。
そして、今に至る。
「で? ミツキさん、キミはどうして自分がミツシゲだなんて名乗るのかな?」
一日中あれこれと振り回されていたせいでちゃくと確認できなかった。
どうして彼女が俺の親友のミツシゲの事を知っているのか、そしてミツシゲだと名乗ったのか。
「だーかーらー本人だって言ってるしー」
「あのなっ、ミツシゲはとっくに死んで……」
「ドキュメントフォルダ、設定用フォルダ、アーカイブ……」
「む?」
突然読み上げる各種フォルダ名、その階層の奥は、俺のパソコンの場合には裏動画と裏画像の保存場所!?
「中身は巨乳、ショートヘア、フリルメイド……」
「おいこら何言ってやがるっ!」
「いつか彼女ができたらスケスケベビードールを着てもらいたいと願って参考画像とサイト商品をいろいろと……」
「待て待て待てえぇぇっっ!!」
何故極秘フォルダの場所にと中身に加えて将来の願望まで知ってやがるっ!? まさか、マジで……
「お前の尻のアザの由来も言ってやろうか? それは小学校の頃平均台で強打したものだけど足踏み外した理由が教育実習生の……」
「もういいっ! そこまでやめえぇぇぇぇっっっ!!」
俺の秘密事項を次々に暴露していきやがってっ、周囲に誰もいなくてマジでよかった。
こんなことを知っているということ、そして語っている間の口調に、暴露したことへの含み笑いの仕方、これは確かに……
「マジで、ミツシゲなのかよ?」
「だからそー言ってるじゃん。まあこんな見た目じゃ疑うのも無理ないけどさぁ」
こうして会話している雰囲気は確かに親友で、死んだはずのミツシゲだ。
疑うのも無理ないというけどこんな非常識、そう簡単に信じられるわけがないだろ。
「で? なんで化けて出てきた? その女の子は体乗っ取ったのか?」
「失礼な。人を幽霊呼ばわりなんて」
幽霊意外に何があるってんだよ? というかその体は乗っ取ってるってあたりは否定しないつもりか?
「オレは死んだというよりも、異世界に転生していたのだ!」
「はぁ?」
なんかテンプレ来たな。異世界転移ですってよ皆様。
「トラックに轢かれたーと思って気がついたらさー自称女神さまが『魔王を倒してください』だってよ。で、なんやかんや頑張りましてオレ、アッチの世界で魔王と協力して諸悪の根源な自称女神さま(笑)を撃破しました!」
「女神様撃破しちゃったのかー」
これもよくある話だよなー、助けてくださいって呼び寄せた張本人が実は全ての悪の源だったってやつ。
「まあその魔王ってやつも魔王って呼ばれているだけで単なる一族のトップなだけだったし」
「軽いなー魔王様」
やっぱりよくある魔王って名前だけだったなパターンですか。
「そしてオレ頑張りました! 自称女神撃破してその力をネコバ……もとい有効活用してこの世界に戻ってくるのを! 転生してから延べ7年かかりましたがね!」
「今ネコババって言おうとしたな?」
時間差がすごい。こっちの世界では1か月しか経ってないのに。世界によって時間の流れが異なっている説もやっぱりよくある話だけど。
ということは実質的に7歳年上になったのですか? ミツシゲの奴は。
「しかし戻ってくるって……なんでそんな姿に?」
「だってオレの体ってとっくに火葬されちゃったんだろ?」
「そだねー」
そもそもトラックに轢かれてミンチよりひでぇなことになっちゃったわけだし、そのまま戻ったらゾンビどころじゃないよな。
「じゃあその姿はなんだ? まさかお前がファンタジーな能力で作り上げたゴーレムとか言い出すんじゃないよな?」
「まさかー、どうせ作るんだったらゴーレムは変形ロボ一択でしょ?」
ってことは作ろうと思えば作れるのかゴーレムを。スゲーなおい。自称女神のパワーをネコババしただけのことはあるな。
せっかくだから作ってもらってもいいかな? 変形合体ロボなゴーレムを。
「このボディは事故で植物状態になっていた女の子の体でね、譲ってもらったって感じですよ」
「植物状態ぃ?」
「そう、ミツキって女の子は実在する女の子だよ。家族と共に交通事故にあって、他の家族はみんな死んじゃって彼女だけは長年植物状態になっていて、そのの体を譲ってもらいまして」
「つまり、精神乗っ取り的な?」
「人聞きが悪いなー。ちゃんと奥底で眠っていた本人と契約して譲ってもらいましたから」
植物状態の人間の体を譲ってもらうってそんなホイホイできるものなのかよ。
そういえば有名な異星人な巨大ヒーローは地球人の体にホイホイ間借りしてましたな。もしかして異世界に長年過ごしていた影響で倫理観おかしくなっているとかないだろうなこいつ。
「って契約ってどういうことだよ? それじゃあ元の体の持ち主はどうした?」
「そりゃあオレがいた異世界に転移するってことで話通しました。例の魔王が自称女神に変わってその世界の管理人するようになりましたからそのツテで」
「それはツテというものだろうか?」
自称女神に変わって魔王が世界の管理人、ねぇ。大丈夫だろうか同じようにあくどいことしないだろうなその魔王。
しかしその元の体の持ち主の子も異世界転移でオッケーしちゃったんだ。いいのかなぁ?
「というわけで今はオレが正式にミツキちゃんってわけでぇーす♪」
「さいですかー」
顔も見た目も元々のマサトモからはだいぶかけ離れている。だがこの喋り口調に乗りは紛れもなくミツシゲであり。
見た目……うん、スタイルいいのはオレの好みではありますが。
「ちなみにお前の好みに合わせてオレの魔法で胸は盛っています」
「盛れるのかよ魔法でっ!?」
なるほど、たわわな感じは魔法によるものでしたかー。
長年植物状態にしては栄養いきわたってるボディだと思ったんだよなー。
「つーかお前それでいいのかよ? 男だったのに女になっちまって」
「しょうがないしね。なにせ誰でもいいってわけじゃなくて波長が合う必要があるからねぇ」
波長ねぇ、合わなかったら拒絶反応でもあるのだろうか?
それで波長が合うところで探したらその体の女の子だったというわけか。なんともまあ。
「あれ? ちょっと待て。それじゃあお前は今は戸籍上はミツキって女の子なんだよな?」
「おう、そーです。さすがに元の家族のところに顔を合わせるわけにはいかないでしょ」
「それじゃあ生活どうすんだよ? さっきその体の子の家族は死んだって言ってただろ?」
元々の体の女の子の生活圏があったはずだが、今の俺の学校に転校してくるのだって事務手続きが必要だし、さすがにそれは保護者がいないと無理なんじゃないか?
それにどの程度の期間植物状態だったのか知らんけど、その間の医療費だって馬鹿にならないはず。さすがに無料にはならないんじゃないかな?
「それについてはちゃーんと対策してありますよ」
「って誰!? と思ったら……保健室の先生?」
いつのまにやら後ろにいたのか、突然声を掛けられ振り返ったところにいたのはウチの学校の保健室の先生で、名前は確かミヤコって言ってたか?
美人だとうわさで就任時は話題にはなったが、男子には絶妙に人当たりが悪く一方で女子には優しいという落差から色々諦めた男子も多かったのだが。
それにしても何でここに先生が?
「ミツキだけだとさすがに生活環境は整えられないからねー」
「だからミヤコも含めてカバーするって感じで……」
「ちょい待ち、それじゃあミヤコ先生がその面倒を見るってか? けど二人ともいつの間に……」
知り合った? と言おうとしたけどなんかおかしい。一度怪我して保健室でこの先生の世話になったことはあったけど、その時と比べて明らかに人当たりが違う。
この話し方のクセ、笑い方、今まさに一緒になって説明して話しているミツシゲと妙に似ているのだが?
「実はっ! オレはこのミヤコ先生のボディも譲ってもらったのだ!!」
「ちょっと何言ってんの?」
なんかミヤコ先生が腰に手を当て仁王立ちするかのようにして言い出した。
なにそれ? 譲ってもらったってどゆこと? まさか……
「「そう、ここいる二人はどっちもオレ、ミツシゲなのだ!」」
「分裂してるーーーーっっ!!」
なんかとんでもないこと言いだしたぞ! さっきまで話していた転校生のミツキちゃんがミツシゲだと思っていたら、こっちのミヤコ先生もまたミツシゲだと!?
分身!? というか一人で二つのボディを操っているっていうこと? 分裂ですか!?
「うーん、分裂と言うのが正しいのかわからんけど……」
「並行稼働ともいうよな。どっちもオレだから」
「どうしてそうなった!?」
分裂していて二人とも同一人物ってすごくない? 他人の精神乗っ取り(?)だけでなくて意識を分裂させて並行稼働って、これも異世界で得た技術というか魔法なのか?
ところでこうなった場合ってどんな思考回路になるの? 自意識って大丈夫?
「一応ミツキがメインで、ミヤコはサブみたいな?」
「スマホの2台持ちじゃないんだから……」
そんな人間のボディをお手軽に使い分けるようなことしないでくださいよ。
「ていうか、そもそもミヤコ先生当人はどうしたんだよ? そういえば長期療養中って話を聞いたような……」
「うん、実はミヤコ本人は推しの配信中に興奮して絶叫した勢いで椅子から転倒してねぇ」
「それで後頭部強打の脳出血で昏睡状態になっていたのですよ」
「なんてアホすぎる事故……」
まあまあ美人で男子の注目の的だった保健室の先生、その実態は推しに熱狂するあまり事故ったのが原因で死亡(?)するタダのアホオタクだったとは。
「で、ミツキちゃん本人と同じようにミヤコ先生本人も異世界転移の要件出したのですよ」
「そしたら『すわっ!? リアルネコミミょぅι゛ょを堪能できる世界となっ!?』と秒で合意されまして」
「ロリコンかよっ!?」
もしかして学校の女子にだけ対応よかったのってソッチの気があったからか?
うーん、中身がいなくなって学校の平和が保たれたかもしれない。
「というわけで、だ」むぎゅ
「早速この二人でマサトモをご案内だー」むぎゅ
「お、おい何するんだよ俺をどうするつもりだコラぁぁーーっ!」
両サイドからしっかり腕をつかまれて連行される俺。いったいどこに連れていくつもりだよ。
くそっ、柔らかいものを押し付けてきやがって……
そんなこんなで二人(?)に腕を掴まれ連行されたのはとあるマンション。
タワマンではないけれど、これはそこそこお高いマンションではないのでしょうか?
ってことは、だ。ミヤコ先生が保護者って立場だとするとここミヤコ先生の家なんですか?
こんな高そうなところ住んでるのかよ? 保健室の先生ってそんなに立派なお給料もらえるのですか?
などと思いながらマンションのエレベーターホールに進み、3人(?)で乗る。いまだに俺は腕を掴まれたままだ。
一方は同じ学校制服を着た女子、一方は大人の女性。そんな二人の美女に挟まれた俺って他人から見たらどう映るだろうか? 今に至るまでに誰も出くわすことがないのはある意味幸い。
ここから先は大丈夫だろうか? と心配したが、エレベータがたどり着いたのは最上階。そこで降りてマンションの廊下を進むが、このフロアってもしかしてお高い部屋じゃないのですかね?
そしてとある部屋の扉が開かれる。
「「おかえりなさーい」」
出迎えたのは二人の人物。一人は快活そうな、俺よりも年下のまだ幼さの残る女の子。もう一人は物柔らかな雰囲気を醸し出しているすごくおおきい大人の女性。
二人はどことなく似たような印象を受ける。血のつながった姉妹なのだろうと推察される。
そして、それ以上に推察されるのは……
「そっちもミツシゲだな?」
「よくわかったねぇ」
「その通り。私たちもミツシゲでぇーす」
ほうら、な? 予想通りでした展開が見えちゃったのですよ。
「ていうか何人いるんだよっ!? 2人に分裂したかと思ったら4人っ! しかも姉妹かよっ!!」
「その通り、こちら姉妹でロリな姉のミカとっ」
「大人な魅力いっぱいな妹のミホでぇーす♪」
「しかも小さい方が姉でデカい方が妹っ!?」
そういえばフィクションではよくあるネタだったね、サイズが逆な兄弟姉妹な設定っ!
「こんな小さい子のスカートの中だって興味あるだろぉ? ムッツリスケベなマサトモ君っ」ぴらっ
「アホっ! スカートめくってんじゃねえっ!?」
自称姉でロリなミカの体でスカートめくって見せつけてきやがって。
ピンクなパンツが見えちまったじゃないか。俺は断じてロリコンじゃねえっ!
「ダイジョーブ、見た目に反して成人年齢だから合法」
「合法だからいいというもんじゃねだろっ!!」
こいつ倫理観大丈夫か? いや他人の体乗っ取ってる時点で倫理観も何もあったものじゃないな。
「じゃあこういうおねーさんに甘える方がいいかな?」むぎゅっ
「ぐおっ!?」
今度は大人なボディな妹のミホが俺に抱きついてきて、というよりも俺の顔面を谷間にっ!?
で、デカい、柔らかい、埋まってしまう……
「ふふんっ、こちらもちょっと盛ってみました。ついでにミルクも出るよ♪」
「ぷはっ!? なんて魔改造してんだお前はっっ!!」
見た目大人実年齢不詳な妹にとんでもない事しやがって。
既に自分のボディになっているからっていくら何でもやっていいことと悪いことあるだろうがっ!!
「つーか本当にその二人はボディを譲ってもらったんだろうな? 乗っ取ったんじゃないよな!?」
「失礼な、ちゃんと譲ってもらいましたよ」
「悲しいことに二人の姉妹は父親から壮絶な虐待を長年にわたり受け続けそれに耐えられなくなり感極まって自殺を……」
「うおぉぉぉっっっ!? 想像以上に重いっっ!!」
とんでもない悲劇のヒロインじゃねえか。あんまりすぎるよその展開はっ!
「ご安心ください、当の父親は徹底的に成敗して絶対目覚めぬ恐怖の悪夢を延々と見続けるようにしました。一生病院送りと監獄だねあれは」
「二人の姉妹はちゃんと異世界転生して冒険者として楽しんでおります」
「救われてよかったー」
しかし本来のボディはこうしてミツシゲに乗っ取られて(?)しまっているのであり、それを救われたといっていいのだろうか?
ついでに問題の父親に地獄の悪夢を見続けさせるって、当然の報いとはいえそんなことできるミツシゲって怖すぎないか?
うん、逆らうのはやめておこう。
「ってことはこのマンションの部屋って二人の姉妹の部屋っつーか家ってことか?」
「いいや私の持ち家だ!」
「また出たぁ」
またしても新たな人物が出てきました。これで5人目。
保健室の先生ことミヤコさんと見た目同じくらいの大人な女性、なのだがどこかイケメンな匂いを感じる。
「この部屋の持ち主は私、ミクルの持ち家だ!」
「そして中身は当然ミツシゲ、と」
「その通りっ!」
「だよなぁ」
当然5人目の人物もまた、ミツシゲでした。どうやらこの物件所有者らしい。
考えてみれば娘二人を壮絶な虐待し続けている父親がこんな立派な部屋に住んでいるとは思えないよな。言ってしまえばミクルなる人物が保護したという立ち位置にも見える。
「これだけのマンション所有してるってことは、金持ちか?」
「そうだな、彼女はエンジニアだったのだが、ちょいと働きすぎで5徹してしまい心臓が……」
「ワーカーホリックかよ」
さすがに5徹はダメだろ。どう考えても死ぬぞ。あ、死んだのか。
「そして異世界を紹介したところ田舎でスローライフをすると申しており……」
「ワーカーホリックというよりも社畜だったのかな? スローライフできるかなぁ?」
「で、オレが彼女が残した資産をちょっとお借りして株取引してがっぽり設けて」
「お前才能ありすぎだろ」
「いやいや、ちょっと未来予知のスキル使っただけですから」
「チートじゃねえか!?」
なんてこった、異世界の魔法使えば株取引で絶対損しないのか! 最強だな!!
でもなんかしっぺ返し食らいそう。ほどほどにな。
「けどさぁ、お前異世界から戻ってきて男から女になったのは仕方ないとしても、何だって5人に分割って……」
どう考えても滅茶苦茶だ。女子学生のミツキに保健室の先生のミヤコに虐待受けてた姉妹のミカとミホに会社員なミクルに、それが全員同一人物って、どうなの?
「いやー、波長がが合うのが5人いるってのはわかったけどさぁ」
「誰にしようかなーって悩んで」
「けど、一人選んだら他の4人はダメになることになるし」
「そしたらその子たち、救われないかもって思って」
「だったらいっそのこと……」
「「「「「全員使わせてもらおうと!!」」」」」
「もったいない精神ってものじゃねーだろ」
どんな発想したらこんな結論に至るんだよ。そりゃ話聞いたら元々の体の持ち主たちみんな異世界紹介されたみたいだし、まあ救われたっぽい気もするし、悪くはない気もするのだが……
「それにぃ、女になったらお前のカノジョになれるしぃ」
「………………は?」
こいつ、なんかいった? カノジョ、とな?
「お前未だにカノジョなしだろぉ?」
「女の子との会話もままならねぇじゃん」
「ヘタレだからなぁ」
「モテたこともないし」
「だからここらで親友のオレが一肌脱いでやろう、と」
「お、おい。本気か?」
いやそりゃ彼女いたらいーなーなんて思ったりもしますよ? 正直今日だってミツキを見た瞬間タイプだとは思いましたけど。
あ、そうか。こいつ狙ってたんだな。俺の好みを知ってるからその姿になって、しかもボディを盛ったとか言ってたし。
しかし、だ。
「5人いますけど?」
「「「「「ハーレムでいいじゃないか!!」」」」」
「正気かお前!?」
いくら彼女欲しいといってもいきなり5人も彼女できるってダメだろおい。
いや待て、中身は全員同一人物で実質一人だが、でも体は確実に5人で……
「お前なぁ、たったオレ一人のカノジョでハーレムだぜぇ?」
「えぇ?」
「同年代で巨乳な同級生のミツキちゃんとぉ」
「おねーさんで魅惑的なミヤコとぉ」
「姉だけど合法ロリなミカちゃんとぉ」
「妹だけど爆乳お母さんみたいなミホちゃんとぉ」
「イケメン女子なミクルがぁ」
「「「「「みんな好きにできちゃうんだぞぉ♡」」」」」
「う、うわ……」
5人が迫ってくる。それも全員同一人物。一糸乱れる攻めの姿勢、同一人物だからこそできる阿吽の呼吸。
ここから逃れることは、困難を極める。
「さて、この家のベッドはキングサイズ! みんなで寝ても余裕の広さだっ!」
「最低な誘い文句じゃねえかコラーーー………っっ!!!」
それなりにお楽しみいたしました。