制作幹部も全員見過ごした
番組制作の過程では、取材だけではなく、編集もお粗末そのものだった。
意見書によれば、番組の編集は通常、取材記者と編集作業に携わるオペレーターが共同で行う。ところが、ディレクターは編集の技術に長けていたらしく、これを一人で手がけた。告発者の顔や体形を隠す映像加工も独自の判断で実施した。
さらに、ディレクターが放送前日のぎりぎりまで映像を編集していたため、部長とキャップは通常行っている編集済み映像を事前に確認することはせず、放送当日を迎えている。
同日午後3時に始まった事前の視聴では、「調査報道ユニット」からは部長やキャップ、「news23」からは制作プロデューサーや番組プロデューサー、当日の編集長らが参加した。
だが、身バレを心配する声は一切出なかった。
放送後に疑問の声を挙げたのは、ほかならぬ告発者たちである。だが、ディレクターの対応はこれまたいい加減だった。
放送翌日の13日未明に、当該番組の内容がYouTubeとTBSのWEBサイトで配信された。ディレクターは同日朝にB氏から、「あるモノ」が映ったシーンが使われているという問題を指摘された。
ディレクターはこの時に初めて、B氏との約束を思い出したそうだ。だが、指摘があったことを、調査報道番組部長やキャップにはすぐに報告しなかった。
両者が問題のシーンの存在を知ったのは、別の報道番組「Nスタ」でJAの自爆営業を追及する続編が放送された後の3月末になってから。ただ、この時点になっても、告発者がディレクターに「身バレ」したと訴えていたことは、報道局全体で共有されていなかった。
TBSがその問題を知ったのは、『週刊現代』が4月24日に質問状を送ったからだった。