「失念していた」で済むのか
A氏は撮影中に、腕に巻いていた自分のスマートウォッチまで映されていることが心配になり、ディレクターに懸念を伝えた。だが、それは大量に流通している製品であることから、ディレクターは「特定されることはないと思う」と回答し、そのまま撮影を続けた。
さらに、A氏の子ども2人が写った家族写真も撮影された。後者の写真については顔に加工処理が施されたものの、スマートウォッチと同じく放送時に映像として流された。
取材チームは、別のJAに勤めるB氏の取材でも、ホテルを用意することをしなかった。代わりに選んだのは、勤務先のJAの管内にある公園。そこで、約3時間にわたって衆目にさらされたまま、撮影が行われた。
B氏も取材を受けた際に、自身を特定しうる「あるモノ」が映り込んでいることが気になった。そこでディレクターには「そのシーンは使わないで欲しい」と伝え、あるモノを除去してそのシーンだけを撮り直してもらった。
ところが、実際に放送された番組では、あるモノが映りこんだ最初のシーンが流されたから驚いた。
これに関して、意見書によると、ディレクターは「失念していた」と説明している。だが、この釈明は言葉通りに受け止めるわけにはいかない。
ディレクターは、「現代ビジネス」で記したとおり、身バレした告発者に筆者に記事を取り下げるよう働きかけるなどの隠蔽工作をしたほか、この後に記すとおり、虚偽の情報さえも報道していたからだ。