全国38の都道府県にある銭湯の組合でつくる「全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会」では昭和33年から毎年、加入する銭湯の数をとりまとめています。
それによりますと、去年の銭湯の数は1653軒で、前の年より102軒少なくなり、過去最少を更新しました。
ピークは昭和43年の1万7999軒ですが、家庭での風呂が普及したほか、後継者不足や施設の老朽化などが原因で減り続けています。
さらにここ数年は、燃料費の高騰もあり、おととしは1755軒と初めてピークの1割を切りました。
連合会のデータをもとに分析をした民間の信用調査会社「東京商工リサーチ」は「燃料費の高騰が続けば、さらに経営が厳しくなり、地域の銭湯の減少が加速する可能性がある。銭湯は地域に根ざす『ふれあいの場』としての役割もあるため、そうした場がなくなっていくおそれもある」としています。
また、連合会では「今後も減少は続くとみているが銭湯やサウナへの関心も高まっているので減少幅は緩やかになっている。後継者を養成するなどして減少傾向に歯止めをかけたい」としています。
減り続ける銭湯 “燃料費高騰続けば減少加速も”信用調査会社
後継者不足や施設の老朽化などが原因で地域の銭湯が減り続け、業界団体のまとめでは去年、全国の銭湯の数は1600軒余りとピーク時の1割を切り、過去最少を更新しました。民間の信用調査会社は「燃料費の高騰が続けば、さらに減少が加速する可能性がある」としています。
さいたま 創業100年の銭湯が閉店
減り続ける、私たちに身近な銭湯。
さいたま市にある創業100年の銭湯は燃料費の高騰を理由に閉店することになりました。
閉店したのは、さいたま市大宮区の銭湯、「日進湯」です。
日進湯は1926年に創業し、「宮造り」と呼ばれる瓦ぶきの建物や、番台などがほぼ当時のままの姿で残っていて、地域住民だけではなく、全国から愛好家などが訪れる銭湯でした。
店主は3代目の山本美枝子さん(71)で、およそ50年、家族と店を切り盛りしてきました。
最後の営業日となった30日も午前10時すぎから浴槽を念入りに掃除し、ボイラーで井戸水を温めたあと、自分の身長よりも長い板で丁寧に湯もみしてお湯を作っていました。
山本さんによりますと、閉店を決めた主な理由はボイラーの燃料に使う重油の高騰で経営が圧迫され、数百万円はかかるというボイラーなどの大型設備の更新が難しくなったためだといいます。
山本さんは「重油の価格は数年前に比べて1.5倍ほどになり、もうけはほとんどありません。体もあちこち痛いし、お客様には申し訳ないが、自分の体とも相談して閉店を決意しました」と胸の内を明かしました。
午後3時前には、すでに10人ほどが店の前で列を作って待っていて、開店すると脱衣所はすぐにいっぱいになり、常連客などが、山本さんが入れた最後のお湯に気持ちよさそうにつかっていました。
訪れた多くの人が山本さんに「今までありがとうございます」などと声をかけ、中には手紙を渡す人もいました。
70年余り通い続けたという79歳の男性は「幼いころ両親に連れられてここに来たのを懐かしく思い出します。気持ちいいお湯と、元気なおかみさんに会えなくなると思うととてもさみしいです」と話していました。
そして、午後9時半、最後の客の男性を見送ったあと、山本さんはのれんを下ろしました。
山本さんは「最後の日にたくさんのお客様に来ていただき感謝しかありません。銭湯は地域の憩いの場として大切な空間です。小さくてもいいので、何とか残ってほしいです」と話していました。