「西フランク王国の建築家」の感想
「西フランク王国の聖騎士」がここ最近でもかなり面白いゲームだと思ったので、同シリーズの「西フランク王国の建築家」も購入し、プレイしてみた。結果、ゲーマー向けの要素がありながらも、軽いプレイ感を持った良くデザインされた作品だと感じたため、感想をまとめたい。
以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。
◆0.背景
・2人プレイ(+BOT)とソロプレイのみをプレイしている。
・ヴァリアントルール(VPP)を未導入での感想となる。
◆1.実践
・2人
28対44で負け。初回ということで、方向性がわからないままにプレイ。こちらは美徳を優先せず、闇市場を使用するプレイで、あちらは美徳を上げるプレイとなった。
序盤はかなりの速度でギルドホールが埋まっていったが、終盤では、金(資源の方)が必要である相手に対し、こちらが脱税を駆使し、拘束を繰り返したことにより、ずるずると長引いてしまった。
・2人+BOT
24対25対26でBOTの勝利。BOTの処理に手間取りながらもプレイ。BOTがいることで、唐突な拘束が発生するため、謎の緊張感が生まれた。2人プレイにおけるにらみ合いが上手いことなくなり、2人だけの時よりもスムーズにゲームが進んだ。
・1人+BOT
35対23でBOTに勝利。テンポよく進むが、当たり前だが、プレイ感が大きく異なる。
BOTはあくまでランダムで拘束してくるので、運要素を管理して、効率よく点数を稼ぐ、パズルゲームのような感覚だった。
◆2.感想
・軽妙なプレイ感
各要素を見ると、ゲーマー向けゲームという印象を受ける。ワーカープレイスメントにビルディング、拘束という強いインタラクションに、特殊能力付きのカード(弟子カード)……と要素が詰まっている。
しかし、実際のプレイ感は軽めだ。人によっては中量級に分類するだろうし、プレイ時間を見てもそれぐらいで終了する。
・加速度がない
拡大の要素が弟子ぐらいしかないので、ゲームに加速度がつかない。
むしろ、一度手札などの初期リソースが消費されていると、スタート時よりもひどい状態から始めることもある。
そのため、序盤の加速度に比べて、終了のタイミングが遅くなることがあると感じた。
・BOTが存在しているのがうれしい
どうしても、ゲームによっては、3人以上でプレイした方が楽しいことがある。もちろん、そういうゲームでは、3人以上集めればいい話なのだが、どうしても2人で遊びたい時に、簡易的でもBOTがあるのはかなりうれしい。
3人には劣るが、BOTがある方が、2人だけよりは格段に面白くなる。
拘束というインタラクションがあるため、2人だとどうしてもにらみ合いだったり、リソースの消耗合戦だったりするタイミングが生まれやすい。
BOTがいると、その運要素が程よい揺らぎを生み出していて、2人プレイの停滞感が上手い具合に中和されていると感じた。
◆3.考察
・プレイ感が軽妙である理由
要素は少なくないゲームだと思うが、実際のプレイ感は妙に軽い。悪い意味ではなく、やっていることの濃厚さに対し、気軽にプレイできるのだ。その理由を少し考えてみようと思う。
一つ考えられるのは、ワーカーを重ねるほど強いが、重ねると拘束されやすいというシンプルなジレンマが根幹にあることだ。
入力のメカニクスとしては、単純なワーカープレイスメントとなっている。各手番に1ワーカーを置くだけのアクションになっている。そして、ワーカーが重なる(同じ場所に置かれる)ほど、強力になっていく。また、その代償としての拘束というアクションも、インタラクションは強いが、複雑ではないので、わかりやすい。
強いアクションを連打している人々を咎めて、金をせしめるという流れは面白く、盛り上がりやすい。取られた側も、ある程度納得感が生まれるので、直接攻撃されたというような印象も薄い。
拘束は強いインタラクションだが、されてもデメリットがあるだけではない。アクションは弱くなるが、ワーカーは返ってくるのだ。拘束した側は入手手段が限られている金銭が得られ、拘束された側はワーカーを回収できるという双方に利益が得られる側面があるため、許容しやすい。
次に考えられるのは、ワーカープレイスメントにありがちなプレイスの占有がほとんどないという点だ。ごく一部の強力なアクションを除いて、縛りが発生しない。このため、ワーカープレイスメントにありがちな、一手のミスで全体が崩壊するような緊迫感がなく、気軽にプレイスを決めることができる。それで勝てるとは言っていないが……
また、アクションや能力がシンプルにまとまっている点が、大きいのではないかと考える。テキストがギリギリ必要ない程度の能力に収まっており、負荷が少ない。カードに重きを置いたゲームでは、特殊効果が複雑なこともあり、それを数枚手札に持っていることは、負荷になりがちだ。
最後に、得点源が明らかで、すぐに確認できることも大きい。ギルドホールと王国倉庫でしか、ほとんど得点にならないため、そこに着目していれば、点数の上下は把握できるし、得点化したい時の行動が明確だ。重量級ゲームにありがちなポイントサラダで、どこに集中すればいいのかわからないといった状態にはなりにくい。
これらの細かい要素が噛み合うことによって、軽妙なプレイ感を生み出していると考えている。全体的に良くデザインされていると感じる。
・勝利点の獲得手段の限定
前述したが、勝利点を取ることができる箇所が限られている。
それによって見通しが良くなっており、ゲームが終わりそうとなった時にも、自分がやるべき手段がすぐにわかるようになっている。
特に大聖堂のアクションは枠も限られているので、それの取り合いをやったり、闇市場に回って建物で勝利点を稼いでいくという方向性がかなりはっきりと出ている。
しかし、悪い点もあり、もう逆転の目がないというのもわかりやすくなってはいる。ただ、この手のワーカープレイスメント+ビルディングゲームにしてはプレイ時間が短めなので、そこでバランスを取っているように感じた。敗北が確定した後の時間が短く、許容しやすい。
・お金の実装
お金の取得方法は大きく3つに分かれている。
まずは、普通のアクションプレイスを使う方法だ。これは1ワーカーだけでやっても出力が弱いので、何度も重ねて使うようになる。そのため、拘束にもつながる。
次に、他人のワーカーを拘束し、牢獄に入れることでお金が得られる。ワーカーの数あたりでお金がもらえるので、必然的にワーカーが重なっている箇所は、拘束されやすく、インフレを防いでいる。
最後に、徴税所の税金を盗るというやり方だ。税金という、各アクションにおけるコストがあるのだが、それは徴税所に貯まっていく。それを盗むことができるのだ。もちろん、美徳が下がるため、悪いルートに入るきっかけになっている。
このように、取得の方法がこのゲームの特徴的なメカニクスと絡まっており、それは意図的であると感じる。『ワーカーを重ねると強くなるアクション』『拘束によるインタラクション』『美徳トラックによる制限とボーナス』というところに、お金は関わっている。
拘束というアクションにお金を使用するため、どうしてもお金は必要だ。そのためにやらなければいけない行為が、それぞれこのゲームの特徴に繋がっているのは上手いデザインだと思った。プレイヤーは意図せずして、このゲームのコアを意識することになる。
・美徳の特化があまり強いデザインになっていない
上がり過ぎたり、下げ過ぎたりすると、アクションに制限がかかる。また、下げ過ぎることもデメリットが大きい(借金が増える)し、上げ過ぎてもメリットが小さい(借金が破棄できるのだが、美徳を上げるプレイをしている場合、そもそも借金がないことも多い)。上手く美徳を管理しつつ、美味しいところをつまみ食いしていくのが強いと感じた。
そのため、単に美徳を稼いでいったり、低くしたりという単調な行為が強いというわけではなく、トラックの数値を都合よく管理していく、マネジメントの面白さがある。
・BOTがシンプルながらに良い
BOTはよくあるタイプで、カードをめくるとそこにワーカーが置かれる場所が書かれていて、BOT用の処理も記載されているというものだ。それ自体は普通なのだが、追加行動用のデッキというのが用意されているところが工夫されている。
まず、普通のデッキのみを見た場合、ランダムで単調な動きとなっている。しかし、BOT用の処理が重いということはないから、2人プレイに手軽に加えることができるし、拘束というインタラクションの強いアクションがランダムでめくられるため、ハイリスクハイリターンを取るか、ローリスクローリターンを取るか、という選択がプレイヤーに迫られることが多い。
また、追加用のデッキが別に10枚用意されており、特定の行動の際に、デッキの捨て札にランダムで追加される。こうすると、次にリシャッフルされた時に追加のカードが増えているという、簡易的なデッキ構築のようなメカニクスになっているのだ。そして、追加用のカード10枚のうち、5枚がゲーム終了条件と勝利点に直結するプレイス(ギルドホール)にワーカーを置くというものなのだ。
つまり、プレイすればするほど、強い行動がデッキに追加されていくことになり、ゲームが加速していく。
これはプレイヤーのみでは、発生せず、むしろ、それが欠点の一つというぐらいなのに、BOTでは実現されていて、ゲームが失速する前に終わりやすくなる。負荷が少ないながらに、十分機能的な実装になっていると感じた。
◆4.懸念
・拡大の要素がほとんどない
拡大要素は弟子ぐらいで、プレイスが増えるということもない。
そのため、後半に状況がリセットされると、展開が失速しやすい。
後述するが、足の引っ張り合いもできるシステムになっているので、思ったよりも終了フラグがなかなか立たないという状態になりやすい。
・ある程度プレイヤーにバランスが委ねられている
良し悪しがあるが、最近のゲームにしては、プレイヤーにバランスがある程度委ねられているゲームだ。
拘束は比較的自由度の高いアクションであり、私怨などで、誰かを集中的に狙うということもできる。
また、お互いに足を引っ張るような展開にすることもできてしまう。
たとえば、意図された設計ではあるのだが、金(お金ではない方)の入手経路はかなり狭い。鉱山に2ワーカー以上を置かなければ取得できない。他には闇市場で手に入ることがあるが、品ぞろえはランダムなので、こちらに金がなく、誰かの資金が十分にある状態だと、鉱山にワーカーを置いてもすぐに拘束され、金をなかなか手に入れられないという問題が発生する。手札や大聖堂の関係から、金がなければギルドホールが埋まらないという状態になることがある。建物カードは単純なドローなので、金を使わない建物が引けるかどうかは運だし、他にも建築条件があるので、膠着はしやすい。
だらだらとゲームが続いてしまい、その間、足を引っ張り合うのだから、良い印象が残らなくなってしまう可能性がある。
・コンポーネントに改善の点がある
コンポーネントに改善の余地があると思われる場所がある。
まず、弟子や手札に制限があるのだが、それがプレイヤーボードに記載されていない。共通ボードにもないため、ルールブックを確認するしかない。これでは、忘れやすくなってしまう。スペースはかなり残っているように見えるので、記載があるといいと思った。
一方、美徳に関する初期値の箇所にはちゃんと印がある。こういう良い部分もあるため、他の部分も配慮して欲しいと思ってしまった。
セットアップのたびにこういう気遣いが有難いと感じる
◆5.まとめ
少人数やBOTを入れてプレイをしているためだとは思うが、たびたび収束性が悪くなってしまうことがあったが、それ以外はかなり面白く感じた。
のちに記事化する予定ではあるが、「西フランク王国の聖騎士」はこれ以上に気に入ったゲームとなっており、似通った軽妙がありながら、パズル的で面白いと感じている。プレイ時間やゲーム要素に比例しない、軽いプレイ感は、西フランク王国シリーズの特徴なのかもしれない。最終作である「西フランク王国の子爵」も楽しみだ。
◆参考作品
「西フランク王国の聖騎士」


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