闇派閥がオラリオに宣戦布告し、ヘラ・ファミリア 『静寂』のアルフィアにより叩き潰されたロキ・ファミリア首脳陣と六月
ゼウス・ファミリア 『
闇派閥の首領邪神エレボスの策略により、複数のファミリアの主神が天界へ送還され次々とファミリアを壊滅させた最初の夜を終えた翌日
2日目
イスカ「…オラリオ…どうなるかな…これから」
アスタ「……さぁ……でも状況は悪くなる一方」
リャーナ「ここもいつまで安全でいられるか…」
アストレア・ファミリアホームの広間にて、眷属達が集まって話をしていた
体中には包帯を巻き簡易的な治療をした後が残る
リャーナ「──セルティ、六月の容体は…」
そこへ団員の1人、セルティが広間に入ってきたので声を掛ける
セルティ「…一応部屋に寝かせたけど、かなり無理したのか…目を覚まさないわ……」
イスカ「それにしても…随分と雑だったね」
アスタ「あー…」
イスカのセリフにその場の全員は思い返した
少し前、ボロボロとなった六月を背負った一夏がホームに訪れるとそのまま六月を投げるようにしてイスカ達に渡すと『その(相手が好きな相手だからといってなんの反撃せずズタボロにされた)馬鹿はベットにでも放り込んでおけ、余計な治療せずとも自己回復高いから明日には回復してんだろうからさ(ちったぁ痛い目見ろ)』とそれだけ言いまた飛び出していった
イスカ「…馬鹿って……なにがあったんだろ…」
アスタ「それ以前に…あの六月をあそこまでボロボロにしたのは……」
リャーナ「……多分団長が会議で聞いた例のレベル6以上の闇派閥…それ以外考えられない」
セルティ「でも……あの六月が…」
六月がこのアストレア・ファミリアに監視を受けながらの居候を受けた間
数え切れないほど見てきた六月の規格外っぷり
その六月を負かすことができる存在など、同じくガネーシャ・ファミリアで監視を受けながらの居候をしている同格の一夏くらいしかいないと考えていた
だから、ネーゼから聞かされた六月の敗北は、オッタル敗北以上の衝撃があった
セルティ「……それでね…六月…眠っていた時に仕切りに『アルフィア』『アルフィア』って呼んでて」
アスタ「…はぁ?」
イスカ「…誰?」
リャーナ「む、昔の彼女だったりしてね、ハハハハハ…」
冗談のつもりで言うが乾いた笑い声をあげるリャーナ
アストレアの眷属達「「「「……」」」」
一同に沈黙が走るのだった
闇派閥はオラリオを包囲し、住人を外へ出られないようにした上、いつでも襲撃できるようジワジワと追い込み業の如く、オラリオの冒険者達を襲いこむ
正義をうたい、多くの住民を守ってきた彼女達アストレア・ファミリア
しかし、昨日の闇派閥の襲撃の際
多くの住人を守れず
結果多くの犠牲者を出してしまった
そんな彼女達を住人達は攻め、石や物を投げつけた
そのことに彼女達はなにも言い返せず
只々黙っているだけだった
が、
一夏「おい」
住民達の足元にまるで警告のつもりとでも言いたげに斬撃を飛ばし現れた一夏は
一夏「今あいつらに物投げたやつ前に出ろ。そいつも闇派閥の仲間と認定して今この場で斬り殺すぞ」
殺気立ちながら言う一夏に怯える一同にさらに言葉を続ける
一夏「お前らにアストレア・ファミリアを責める資格があるつもりか?テメェらはただ死んでしまった家族や大切な奴を失った行き場のない悲しみをこいつらにぶつけてるだけ。そもそもの話、これまでガネーシャ・ファミリアやアストレア・ファミリアはこうなる前から再三お前らに対してオラリオから避難するよう呼びかけがあったにも関わらず、なぜここにいる?ここで闇派閥との激戦区にあることは知っていたにも関わらず…散々言っても離れなかったってことは、お前らはお前らの命をこいつらに預けたってことだよな。自分で自分を守るなんて真似はせず他人に生殺与奪の権を預けた…ならここで死んだとしてもそれはこいつらのせいではなくこいつらに命を預けたお前らの自己責任ってことだな」
あまりの物言いに住人達の中で非難の声が上がるが半数近く、一夏の言葉に思うことがあるのか口を開けず下を向くばかり
一夏「可哀想なのは子供だ。本来、子供は大人に守られるべき、自分で自分を守るすべも知らず、身を守る力を持たない非力な存在だ。だからその命は親である大人に預けるしかない。だが大人になればその命は自己責任…自分の身は自分で守るべき、それがどんな方法だとしてもな。今この場で子供を返せって言った親どもに聞こうか。そんなに大切なら、なぜこんな激戦区に大切な子どもを留まらせたんだ。俺がなにを言いたいかわかるか?お前達の子供を殺したのは闇派閥だが、そんな危険な存在がいたにも関わらず冒険者なら守ってもらえると鵜呑みにして、その命を軽い気持ちで預けたお前ら親である大人の判断という名の過信。それが子供達の死因の一因」
厳しく言い放つその言葉に多くの大人が泣き崩れた
すぐにでも止めようと動くアストレア・ファミリアだったが
一夏「それとお前ら、恨む相手を間違えんな。お前らを襲い命を奪ったのはこいつらではなく闇派閥。こいつらは別に家族でも大切な誰かでもない赤の他人のお前らを命がけで守った。守ろうと必死に足掻いた。それも…お前らからすればガキでしかないこいつらがだ。何故かわかるか?それがこいつらの謳う正義とやらだ。俺はこいつらの掲げる正義は青臭すぎて好きになれんがな…だがその正義がなければ、今頃お前らも死んでいた……俺達は、全知全能の神じゃねえ。不完全で、失敗もする人間だ…完全完璧にはできねえねえんだよ……それでも、俺達にできることは、限りなく0に、限りなく100に近づけることだけだ」
一夏の言葉は彼女達にも響くものだった
だからこそ動けなかった
それだけ言うと一夏はそばの建物の後ろに行くとナニかを引きずって、住民達の前に放り投げた
住民達「「「「!!」」」」
アストレア・ファミリア「「「「!?」」」」
それは、手足を切り落とされ、猿轡をそれズタボロにされた闇派閥の構成員
それも1人や2人ではなく、何人、何十人も生かされた状態だった
一夏「そんなにお前らの大切な誰かを殺された怒りをぶつけたいなら、そいつら好きにしていいぞ」
それはある意味悪魔の囁き
一夏「お前らにはそいつらをどうこうしようとする権利がある。殴るなり拷問するなり殺すなり好きにしろ。あぁ、長く苦しんで欲しいなら死なないように手加減しながらやれ。だがこれだけは言っておく、そいつらを痛めつけることを大切な誰かの敵と捉えて復讐しようとも、それは正義とは言えん…ただの八つ当たり、もっと言うなら自己満足の為の行い…まあそれは大概の正義の考えに該当するか」
闇派閥構成員「──!!」
猿轡をされながらも、これから自分がされるだろうことを憂いもがく構成員達に一夏は冷たく言い放つ
一夏「お前ら…覚悟してやってたんだよなぁ?誰かの命を奪うってことは、当然お前らも奪われる覚悟をして戦場に立ってんだよなぁ?あぁ…言わなくていいぞ、答えはわかりきってる」
構成員の1人に近づきながら頭を掴み
一夏「そんなに死を救いと考えるならテメェらで勝手に自殺でもして死ね。どんなに苦しくても、嫌なことがあろうと、それでも足掻かねえ、生きようとしない奴にかける慈悲は持ち合わせてない。テメェらの思想を他人に押し付けて、今を生きようとした奴らの命を、お前らの都合で奪うなクズ共」
闇派閥構成員「───ッッ!!!!!」
目玉に親指を押し付けて潰す
一夏「……さて、お前ら好きにしていいぞ。俺は止めない……あぁ、安心しろ。その間周りの闇派閥が来ても俺が手足切り落として追加してやるから」
そう言い住民達に闇派閥の生殺与奪の権を与えた
すると住民達は戸惑いながらも闇派閥に近づくと持っていた石や物を、時には拳や蹴りをぶつけ痛めつけていった
これを見ていたリューは飛び出し止めようとしたが輝夜に止められた
曰く、自身のいた国でも見せしめという名目で民衆のガス抜きの為に公開処刑をすることがあったと
これはそれと同じ
住民達の怒りを解消させる為のもの
アストレア・ファミリアの中でも純粋で綺麗な正義を信じていたリューは、目の前の行いを肯定する仲間に、否定したい気持ちと目の前の闇派閥達により罪のない命を、親友だったアーディを殺された恨みから肯定したいという矛盾にさえなまれ、ついその場を逃げるように走り去った
そして
リュー「貴方だけは──貴方だけは言って欲しくなかった!!」
シャクティ「……」
感情に赴くままにシャクティを掴み建物に押し付けるリュー
歩いた先で、シャクティが団員達に負傷者の手当てや亡骸の処理、市民の避難誘導の指示を出していた
最初はその光景を見ていたリューは妹のアーディを亡くして辛いはずなのに指揮をする姿に感嘆としていた
だが
シャクティ「敵に情をかけるな!アーディの様な愚行を犯すな!──アーディはその甘さ故に死んだ!奴は敵も味方を救おうとし、結果死んだ。捕縛が不可能と判断したら撃破に移れ、お前達が同じ轍を踏むことは許さん!!」
実の妹の死を愚かと言い、団員達を鼓舞するその姿にリューはまるで冷水を頭からかけられたかのような冷たさが心を巣食う
感情のまま掴みかかり胸の内を吐き出す
アーディは優しかったと
誰よりも正義を尽くそうとしたと
命を救おうと命をかけたことを
だが
シャクティ「今のオラリオでは綺麗事は許されん。団員を死なせない為なら、私は妹の死を利用してでも守る。それが、今の私の正義だ」
訂正することもなく、只々自身の中で決めた正義を口にし、自身を掴むリューを睨み返した
それに、ただでさえ壊れかけていたメンタルが、砕け散りそうになった
リュー「っっ──!!」
逃げるようにその場を去る
シャクティ「……」
その後ろ姿をみていることしかできないシャクティ
そこへガネーシャが近寄り声を掛け
シャクティ「教えてくれ!私達は、後どれくらい犠牲を払えばいい…!後どれくらいの犠牲で、私はあの子に謝ることができる!!」
他の者に吐けなかった本音をぶつけ、悲しみに暮れるのだった
一夏「……シャクティ」
建物の陰から、そんなシャクティとリューのやりとりをずっと見ていた一夏
ふたりはどちらも出会った当初は散々警戒されたが、今では良い友人関係を築けている
そう自負できるくらいには
……前の世界にいた頃は、あまり他人の事を考えられる余裕はなかった
この世界に来て、ようやく余裕を持って考えられるようになった
だからこそ、今あのふたりの抱えているものに…気づくことができた
リューは己の中の正義感に対する迷い
シャクティは妹を否定することでしか、今を未来を守ることに繋げられない己の非力さへの葛藤
見てられなかった
こうなった要因は自身の嫌うあの女も関係してると考えると尚更嫌になる
一夏「もう…歯車は止まらねえ……この戦いを終わらせる以外に………四の五の考えるのは辞めるか…」
一夏の中で、ある決意と共に、来る決戦へ向け準備をすることにした
イスカ「あ!一夏止めて!!」
一夏「おい、怪我の具合見に来たってのに何やってる」
アストレア・ファミリアのホームの近くまで来た一夏は、六月の容態を見に来た
だが、当の本人は体中に包帯を巻いているにも関わらず無理に動こうと、ホームの外まで出ていた
ちょうどそばにいたイスカが止めるように言い一夏が割って入る
今この場にはボロボロの六月と一夏、イスカにアスタ、セルティとリャーナ、ホームに帰ってきた輝夜とライラ
一夏「……一応聞く…どこに行くつもりだ」
六月「…決まっている……アルフィア義姉さんの所へだ…あの人と話をしたい」
まだ治りきっていないにも関わらず、それでも身体を動かしアルフィアの元へ行こうとする
一夏「(こいつ…アルフィアが何処にいるのか解ってんのか)……なにを話すつもりだ」
六月「思い直して欲しい、こんなことは間違っているって」
アルフィアがやろうとしていることに反対する六月は、説得しようと足掻く
そんな六月を見て一夏は
一夏「無駄だ」
それを否定する
六月「……なんだって」
一夏「無駄だって言ったんだよ。お前、アルフィアのやろうとしてることを止めて、あわよくばアイツを救おうとか考えてるだろ。アイツがお前の説得を聞くとでも思うのか?」
六月「……」
一夏「あの女はマジだ。本気で俺達を殺るつもりだ…そのつもりで掛かってきた……次戦えば、その時は殺し合い…どちらかが死ぬまで終わらない死闘になる」
六月「………」
一夏「そもそもの話…俺はあの女の事を殺すつもりでいる。だからアイツが戦いを放棄してしまうのは困る」
アストレア・ファミリア「「「「!?」」」」
六月「っっ──!」
一夏のアルフィア殺害宣言にその場の全員は驚く
アストレア・ファミリアが驚いたのは、目を覚ました後の六月にアルフィアとは誰かと質問攻めに遭い、ついつい話した
それで彼らとアルフィアの関係を知り、今の一夏の言葉
つまりそれは同じファミリアの先輩であり彼らにとって師であり姉代わりでもあったアルフィアを殺す
ファミリア内での殺し合いをしようとする
常に殺し合い同然の事をファミリア内でやるフレイヤ・ファミリアでも本当に殺すことはなかったのにだ
六月「……本気で…言ってんのか……」
一夏「……ああ…」
六月「あの人を、本気で殺すつもりなのか…」
一夏「当然だろ」
六月「あの人は…俺達の義姉さんだったんだぞ!今まで一緒にいた、家族だったんだぞ」
一夏「そう思ってんのはお前だけだ…俺はアレを姉と、家族と思ったことはただの一度もない……俺の姉は、世界で唯一人…俺の実の姉だけだ……ましてや俺はあの傍若無人細目白髪女が死ぬほど嫌いなんだよ…それこそ殺してしまいたいくらいにな……そして、殺さなければならないが理由が出来た……アイツは
六月「──!」
一夏「なによりアイツは殺した…殺しすぎたんだよ……罪もない命を次々とな…当然ケジメはつけるべきだ…あのクソババアに無理やり恩恵刻まれて眷属にされたとはいえ、俺とあの女は同じ恩恵を刻んだ同門…同じファミリアだ……ならアイツがした事のケジメをつけるべきなのは、同じファミリアの俺達しか居ねえだろ……」
六月「……一夏…」
一夏「そんなにアイツを殺すのが嫌なら…お前は来るな…いや、ぶっちゃけお前は戦力として期待してない…アルフィア相手に本気になれないお前がいた所で足手まといだ。あの女は、俺1人で殺す」
そう言い背を向けて歩き出そうとする一夏
六月「ふ…ざけるな……」
六月は無理やり包帯を剥ぎ取り
六月「なんで…なんでお前はそう簡単に、あの人が生きる事を諦める!!たとえ罪にまみれようとも!あの人が、生きられる未来をなんでお前が見ないんだ!!」
一夏に向け拳を込め殴り掛かる
怪我をしていたにも関わらず、既に第一級冒険者並みの動きができるくらいに回復していた六月
これもフィジカルギフテッドにより強化された自然治癒力の結果
そんな六月の拳はまともに喰らえばオッタルはおろか、そのオッタルを下した『暴食』のザルドすらも無視できないダメージを負いかねない一撃を秘めている
当然速度も速く、並みの第一級冒険者は避けるという指令を脳に伝達する前にくらうだろう
だが
一夏「……馬鹿が」
それを一夏は首を動かす程度の動作で避け、ガラ空きとなった胴体に一撃を叩き込み
六月「がぁ!!」
そしてそのまま顔面を掴むと
一夏「万全でもない…冷静でもない…」
ドドドド────ンンンンン!!!
六月を地面に思いっきり叩き込み、地面を陥没させる程に頭部を押し付けた
普段はタフでこの程度でも問題なく動けるはずの六月だが、負傷が治ってない身体でノーガードでまともに受けてしまい、流石に意識を失った
一夏「覚悟を決めていない今のお前が俺に勝てると思うな」
そう六月を見下ろ
一夏「さっきお前は言ったな……なぜアイツが生きる未来を俺は見ないのかって……その答えは単純だ──アイツ自身が見ようとしないからだ」
そう言い、今度こそ一夏はアストレア・ファミリアホームを去った
一夏「……はぁ…なんか、今日は、嫌なことばっかあって本気でやになるわぁ………こんな日は、久々にあっちで寝泊まりするか…」
一夏「──は?」
アルフィア「……なぜここに来た」