世界を救う英雄を育てた英雄


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作:スカイハーツ・D・キングダム
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第6話 静寂のアルフィア


六月「なにを…言っている…」

 

アルフィア「聞こえなかったか?──お前達を、この都市諸共終わらせに来た──そう言った」

 

アルフィアの言葉に同様を隠せない様子の六月

 

そして今のアルフィアの立ち位置

 

それはまるで、この都市を襲う者達の一員として、アルフィアが来たかのようなものだった

 

六月は賢い方だ

ゴミの様な家で育った為、生き残るのに必要な力だけでなく知恵も身に着けた

当然理解力も人並み以上にはある

 

それでもなお、今の状況が理解できない

否 理解することを拒んでいた

 

そんなはずがない

そんな事があって良いはずがないと

 

なにせ単独でオラリオを滅ぼせるだけの力を持つ目の前の彼女が敵対勢力についたことではなく、自分や一夏に指導者として、時には不慣れな姉として接し、一夏はともかく自分はそんなアルフィアを家族として、姉として慕い、そして1人の男して惚れていた

 

そんな存在が敵になり自分達に牙を向けたと信じ難かった

 

アルフィア「お前達のことはエレボスから聞いた。私達(ゼウス・ヘラ)がこの都市を去った後、都市のてっぺんの後釜に座ったあの美の女神の所の猪小僧率いるファミリアをアイツとお前のふたりで攻めそのまま叩き潰したようだな。結果今のオラリオのてっぺんに立ったのはロキとフレイヤの眷属ではなく、お前達2名。ヘラ・ファミリアが都市最強/最凶だったあの頃に戻った──」

 

淡々と、しかしどこか嬉しそうに話す様子のアルフィアに内心戸惑う六月

 

アルフィア「先ほどロキの所の雑音共と殺りあったが、私達が都市を出ていってから年月が経ったというのに未だにレベル5……それに引き換えお前とアイツは奴らと同じレベル5…いや、スキルと魔法を考えればお前達の実力はレベル6以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巫山戯てるのか

 

六月「──ッッ!」

 

が、アルフィアの言葉から発せられた殺気に無意識に臨戦態勢を取る

 

アルフィア「曲がりなりにも私達のいた時代からこの都市にいた貴様らが、あとから来た小僧共にあっさり並べられ越えられておきながらなぜ現状のまま満足する なぜ上に行こうとする気概を見せん。滅ぼされたいのか?貴様達全員 来る黒き終末に何もできずに滅びたいのか

 

アルフィアが一夏達を育てたのは、いずれ来る厄災から世界を守る為の後継者を育てる為だった

 

その後継者達は順調に育っているのに対し今もオラリオにいる冒険者達は停滞したまま

 

そんな現状に激しい憤りを隠せずにいた

 

アルフィア「お前達がこのままなにもせず只々滅びゆく下界のままでいたいのならば、いっそ私達が滅ぼしてやろう」

 

六月「──だから、だから義姉さんは…奴らに──闇派閥に手を貸したのか─」

 

アルフィア「──さて。話は終わりだ……六月…今この時より私はお前達の敵となり、この都市を滅ぼす。それが嫌なら、私を殺してでも止めるのだな」

 

六月「─待って義姉さ!」

 

アルフィア「私は本気だ──まずはお前からだ」

 

アルフィアはそう言うと六月に手を向け

 

六月「!」

 

その動作にこの先とうなるかを予期した六月は考えるよりも先に身体を動かす

 

アルフィア「『ゴスペル』」

 

その瞬間、不可視の音の衝撃波が一直線に放たれ、先ほどまで六月の立っていた家の屋根は吹き飛ばされ、後方に続く建物が次々と破壊されていく

 

アルフィアの魔法『サタナス・ヴェーリオン』

 

それは不可視の音の衝撃波を長射程で放つ

通常、魔法の出力効果は詠唱する際の詠唱式の長さで決まり、短ければ速攻で放つことができるがその分出力は低く、逆に長ければそれだけ高い効果を発揮できるがその分発動までの時間が掛かり、長ければそれだけ相手に防がれやすい

 

しかし、アルフィアの魔法は超短文詠唱という数ある魔法の中でも魔法の早撃ちに優れてる分類というだけでなく、圧倒的なまでの破壊力と速度と長射程を誇り、音ゆえに不可視で回避も困難というこの世界の魔法の常識を覆す規格外なもの

 

アルフィア「──やはり避けるか。相変わらずお前のフィジカルギフテッドは厄介だな」

 

六月がアルフィアの不可視の魔法を回避できたのは、自らのスキルの持つ五感を恩恵持ちのどれよりも感じ取れた為であり、僅かな空気の揺らぎから攻撃を察知し回避が出来た

 

当然、同じく不可視の高速の斬撃を飛ばす一夏の魔法にも対応することができる

 

六月「止めてくれ!俺は、アルフィア義姉さんとは戦えない!戦いたくない!!」

 

いくらアルフィアといえど、レベル5まで上がった六月は自分をも脅かしかねない存在に至っている

 

だが、とうの六月がアルフィアと戦うことに消極的

いや、戦いを拒んでいる

 

六月「俺が強くなろうと決めたのは、貴女を殺す為なんかじゃない。俺を拾ったアンタとヘラ様に恩を返す為、いつか隻眼の黒竜を貴女達先代に代わって倒す為に…!!」

 

必死で戦闘を拒む六月

 

これが他の相手ならともかくアルフィア相手に全力を出せない

 

だが

 

アルフィア「──そうか……そんな甘い考えで私の前に立とうなど、ぬるい

 

続けざまにゴスペルを六月に放つ

 

動揺したこととアルフィアに全力を出せない事で無意識に手加減をしてしまいゴスペルの一部が六月の身体を掠る

 

そしてくらってみてわかる

そこにはアルフィアの怒りの感情が込められていることを

 

アルフィア「私はお前達をも殺す。その為にこの都市へ来た。私を殺せもしないものが、あの黒き終末に勝てると思うのか?──私は何時も言ったはずだ──『英雄になれ』と」

 

六月「──」

 

アルフィア「私に恩を感じているのなら、英雄になれ。私を倒し、黒竜を倒せ」

 

六月「──まさか」

 

アルフィアとの会話の中で感じた違和感

 

アルフィアがなぜこのタイミングで闇派閥に協力し、

都市に牙を向けたのか

 

なぜわざわざ自分を倒すようにいうのか

 

その答えに誰よりもたどり着いた六月

 

──まさか──アルフィア義姉さん──貴女は──

 

それを口にしようとしたが

 

彼女から放たれた

 

 

福音(ゴスペル)

 

 

音に遮られ 吹き飛ばされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィア「最後の最後まで反撃をしなかったか───お前とアイツはならばオラリオの冒険者共のようにはならないと太鼓判を押したが……私の見込み違いだったか」

 

──駆けつけた

 

見覚えのある魔力の残穢と聞き覚えのある破壊音に導かれ、たどり着いたその先

 

無残にも瓦礫と化した建物の山

 

おびただしいほどの血が地面に流れ落ち

 

そして

 

アルフィア「──遅かったな──愚弟(一夏)

 

アルフィアの足元に 動かない相方の姿があった

 

一夏「……一応確認する、闇派閥に手を貸した─って事で良いんだな」

 

アルフィア「……そうだ……」

 

一夏「大勢の罪のない人々を殺りに来た…いや、殺ったあとか」

 

アルフィア「……ああ…やはりこの都市には雑音共がひしめいて実に過ごしづらい……静かにさせるのにもうしばらく時間が掛かりそうだ」

 

一夏「六月は……お前がやったのか」

 

アルフィア「…見ればわかるだろう……アレだけ敵意を見せ攻撃したというのに、最後の最後まで一切手を出さなかった……期待外れか」

 

一夏「六月…こいつはお前への恩を返す為に、必死に強くなろうとした……お前みたいな性格の悪い傍若無人なんぞの為にだ……それをこんなふうに痛めつけて…なんとも思わねえのか?」

 

アルフィア「だからなんだ…私は英雄になれと言った……私を倒し、黒竜を倒し、英雄になれとな……だが、こいつは英雄になることよりも、私を傷つけることに躊躇した……私にも勝てない奴が、英雄になどなれるものか……私は、六月ならばなってくれると期待した……だが……失望した」

 

淡々と述べるアルフィアに、徐々に湧き出しそうになる殺意を抑え込む

 

一夏「──」

 

アルフィア「もうこの男に用はない……興味もない……こいつを連れて消え失せろ…」

 

一夏「──最後に聞かせろ……お前は…俺達の敵ってことで良いんだな?」

 

 

アルフィア「……ああ」

 

最後のその言葉に

 

一夏「…そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇派閥に与する(アーディを殺したあいつらの仲間)なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺してやる(死ね)

 

抑えていた全てを解放させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「『解』」

 

指先から放たれる不可視の高速の斬撃

それは第一級冒険者以下では対応しきれず、気づけば斬られる目に見えない刃物

 

第一級でもこれを避けきれるものは六月を除き存在しない

 

アルフィア「『ゴスペル』」

 

対するアルフィアは手から放つ不可視の音の衝撃波

第一級以下を一撃で仕留め、第一級ですら致命になりかねん威力を誇る

 

2つの不可視が衝突をしたが、威力でまさるゴスペルには及ばず、少しも拮抗できずにいる

 

一夏「─ッ」

 

飛んでくる不可視の魔法をなんとか避ける一夏

 

アルフィア「流石に私の魔法を長く受け続けたことはある」

 

アルフィアはそう言いながらも攻撃する手を緩めない

 

ヘラの下にいた頃

 

毎日のように一夏はアルフィアに挑み続け、数百以上の敗北を重ねてきた

 

その為アルフィアの魔法を放つタイミングをなんとか感じ取れ、加えて異端の眼で魔法発動の際に起きる魔力の起こりを見る事ができ、事前に回避ができる

しかし、高速の不可視の攻撃である為、たとえ発動を見れていたとしても、ほんの僅かでも避けるタイミングを見誤れば命中する

そこは長い間アルフィアの魔法を受けた経験が役に立った

 

一夏「……」

 

まともに撃ち合っても勝ち目がない

 

それをわかっててなお放ち続ける一夏

 

アルフィア「……私を相手に只々撃ち続けるか…いや」

 

アルフィアが振り返るとそこには迫りくる建物の落下

頭上に降り注ぐそれにアルフィアは魔法を頭上へ向けざるを得ない

 

アルフィア「……(私を狙い撃ちすると見せかけ、周囲の障害物を切り、私を狙った)」

 

一夏「(テメェの攻撃魔法は確かに強力だが、連射性能は俺の魔法に及ばん。一度放てば次に発動するまで2〜3秒のインターバルがある…よって)」

 

一夏「『龍鱗 反発 番いの流星』(その間に俺の持つ最速をぶつける)」

 

普段詠唱を縛りの効果で破棄した状態で放つ斬撃

 

しかし、詠唱をした状態で放つ際には速度出力共に100%以上の状態で放つことができる

 

アルフィア「『ゴスペル』」

 

アルフィアが頭上に放ったと同時に放たれ迫りくる斬撃

 

隙だらけとなったその胴体を不可視の斬撃が切断する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魂の平静(アタラクシア)

 

ことはなかった

 

 

静寂の園(シレンティウム・エデン)

 

 

それがアルフィアの第二の魔法にして不可侵の絶対防御

敵の魔法を完全に無効化する上こちらも超短文詠唱という

そのうえこれは全身を纏うエンチャントである為360度どこから魔法を撃とうが無効化するという攻撃魔法同様防御面でもチート

 

一夏「……チッ……相変わらずの不可侵……面倒だ」

 

アルフィア「……昔お前が何度も放った時よりも、威力も速度も上がっている。まともにくらっていれば、レベル7の私と言えどただではすまない……それだけの才を持っていながら……英雄になろうとしない……」

 

一夏「……」

 

アルフィア「この際だ…お前が私を嫌うように、私もお前が嫌いだ。だが、お前の才は認めていた…ヘラに恩恵を刻んで僅か数年で第一級…いや、この分ではレベル6間近といったところか……1年後2年後、お前も六月も今以上に強くなる。それこそ、ゼウスとヘラを超える程に……そう革新するものがあった……だが、お前は英雄になろうとはせず、六月は英雄になることよりも私を優先しそれを拒んだ……お前達はどちらも私からすれば落語者も良い所だ」

 

一夏「黙れ。言ったはずだ。俺は俺の好きな様に生きるってな…お前達旧世代の遺物の願いなんざ知ったことか…俺の生きる道を邪魔すんなら、俺は誰だろうが斬り伏せる!」

 

そう言いながらアルフィアに急接近し、アルフィアに殴りかかった

 

魔法に対する絶対防御を持つアルフィア相手にまともに魔法で撃ち合っても勝ち目がなく、それなら体術を始めとした物理攻撃を浴びせるべき

 

アルフィア「出来もしないことを口にするな…」

 

が、アルフィアはその細い手で一夏の腕を掴むともう片方の掌を向け

 

アルフィア「『ゴスペ』」

 

一夏「舐めるな!」

 

放とうとした寸前に左足でアルフィアの魔法を撃とうとした方の手を蹴り上げ、音の衝撃波の向く先を変え回避する

 

そしてそのまま

 

一夏「『発火せよ(イグナイト)』」

 

一夏第二の魔法

 

炎の魔法を掌に纏いそれをアルフィアにぶつけようと殴り掛かるが

 

それをアルフィアは掌で防ぐ

 

その瞬間、アルフィアの周囲に展開されていた不可視の対魔法の結界がクリスタル状になってその姿を現し、一夏の炎と衝突し押し合いが繰り広げられた

 

一夏「ッッッッ!!!」

 

必死に炎をアルフィアにぶつけようと押し込むが

 

アルフィア「………」

 

対してアルフィアは涼しい顔をしており、それどころか

 

アルフィア「その程度の炎で、私を焼き尽くすことができると思うか!」

 

一夏「ぐぁ」

 

一瞬の隙をついてアルフィアは一夏の胴から顎にかけて蹴り上げ、それをまともに受けた一夏は脳震盪を一瞬起こしてしまう

 

アルフィア「フン」

 

そのままガラ空きとなった胴体に何発もの拳を一瞬で叩き込み地面へ倒れ伏せさせた

 

アルフィア「六月に比べればまあまあだが、やはり…この程度か」

 

一夏「……」

 

アルフィア「お前も、次代の英雄に足らんか」

 

アルフィアに言わされるがままの現状

それに酷く腹を立てていた一夏

 

一夏「……」

 

無言で立ち上がるとスキル発動

 

【リゲイン】

スキルでありながら下手な治癒魔法よりも肉体修復再生回復に特化したレアスキル

 

アルフィアによって負わされた傷を直してみせた

 

アルフィア「……そうだった…お前にはそれがあったな」

 

一夏「……」

 

アルフィア「それがあったおかげでお前は何度も私に挑んでこれた……全く、おかげでお前には特に手を焼かされた。何百回私に叩きのめされようが何百回も立ち上がる。その図太さだけは感心し」

 

一夏「アルフィア」

 

叩きのめそうが立ち上がる一夏に口を開き、そのしぶとさを褒めようとしたが、一夏は遮る

 

一夏「お前がなにをそんなにベラベラと喋ろうが、あんだけ俺達に建前並べようがどうだっていい……俺が言いたいことは一つだ」

 

アルフィア「……なんだ?」

 

一夏「──お前」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弱くなったな

 

 

アルフィア「──なにを言って」

 

一夏「もっと言ってやろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前に残された時間は そんなにないのかよ

 

 

 

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