六月「はぁ…」
一夏「ん?どうかしたか六月」
ダンジョンに潜り何層もある階層の下へ下へと降りていく一夏と六月のコンビ
襲ってくるダンジョンから湧き出すモンスターを軽く狩りながらも会話をしていた
そろそろ中層に入る辺りでため息をついた六月に声をかけた一夏
六月「いや、なんていうか……アストレア・ファミリアの面々達からのアプローチが日々増していっている感が否めなくてさ…」
一夏「ああいつもの惚気か。聞いて損した、さっさと行くぞ」
六月「いや聞いてきたんだから最後まで聞けよな!!」
こんなふうに六月からのアストレアの面々についてのことを言われるのは今に始まったことではなかった
ガネーシャ・ファミリアは治安維持にあたるファミリアであるが、もう一つ都市の治安を守るファミリアこそが、六月の居候先のアストレア・ファミリアである
アストレア・ファミリアは、正義を司る女神アストレアが主神を務める、女性しかいないファミリアであり、皆が皆それぞれ正義を抱いており、そんな女の花園とも言える場所にいる六月は他の男性冒険者から度々恨まれたりすることがある
六月「嫌な?さっきダンジョンの入り口で遅刻の理由でリューの恋愛観が古すぎるって輝夜と乱闘しかけたって言ってたろ?」
一夏「…ああ…察した」
六月「本当マジで……なんで俺に対してあそこまで好感持てたんだか」
一夏「お前それ、他の野郎の前で言ったら襲撃喰らうことになるからな(最も、それやろうとした奴全員ワンパンだろうが)」
六月の話した相手であるリューことリュー・リオンはエルフでありアストレア・ファミリアには最も後に入団したエルフだが、その才能は恐らくアストレア・ファミリアどころかオラリオ中の冒険者の中ではトップに入る資質を持っている。また生真面目な性格であり長命種のエルフということもあり恋愛観がどこか懐古的すぎて、六月と同様極東出身でアストレア・ファミリアの副団長である腹黒エセ大和撫子ことゴジョウノ・輝夜とは仲が悪く毎週ほぼ必ず衝突する始末
そんな女の花園に3年も入れば自然と彼女達とも距離を縮めるのは必然であり、ただでさえ同性しかいないファミリアに異性が1人来たことでも意識しだし、また頼れる姿を何度も晒してみせた事も好意を持たれた理由に繋がっていた
六月「いやな?好意を持たれることは良いんだぞ?俺なんかを好きになってくれたあいつらの気持ちは嬉しい。嬉しいんだけどさ」
自身が生まれ育った境遇ゆえに、他人から愛されることのなかった人生を送ってきた
だからこそ向けられて来る好意を拒むことに躊躇してしまう六月
一夏「……お前もう、あいつらのうちの誰か。いやそれか全員自分の女にしちまえばよくないか?」
六月「一夏、お前それ俺の恋愛事情を知ってて言ってんのか?」
一夏「知ってて言ってんに決まってるだろ」
六月「……あいつらの気持ちは嬉しいさ。だが俺にはちゃんと好きな女がいる…」
一夏「……だからって…なんでよりにもよってお前の好きな相手があの傍若無人細目白髪女なんだよ!」
思わず声を荒げる一夏につい目を瞑る六月
その傍若無人細目白髪女ことアルフィアを、六月は異性として惚れていた
最初は自身を拾い、厳しくも自分をしっかり見てくれ、時より示してくれる優しさに恩人から姉のような存在へ、姉から好意を抱く存在へと変わっていった
一夏「前も言ったが、お前女の趣味悪いからな?俺だったら例え一万回生まれ変わってアイツと出会っても絶対惚れねえ」
六月「それは一夏だったらの話しだろうが。俺はその逆に一万回は惚れる自信があるな」
対して一夏はアルフィアに対し好意というものは抱いておらず、それどころか自分に屈辱的な敗北を味合わせなおかつ性格にも合わず理不尽にも暴力的なまでの力の差を数え切れないほど叩きつけられ、越えるべき相手と思いつつ大嫌いな存在と認識している
その上彼らに対し不器用にも姉貴分の様な振る舞いをして来るのが尚のこと癪に障る
一夏にとって姉とは織斑千冬唯一人に対し指すものであり、断じてアルフィアは自身の姉、織斑千冬の代わりなどではない
存在もその振る舞いも何もかもが苛立たせる
それこそが一夏が抱いたアルフィアという女だった
だからこそ初めて六月が一夏に自身がアルフィアに好意を抱いていると伝えた際『正気かお前? 一度アミッドの方に診察に行こうか?』と思わず言ってしまったため一晩中乱闘となり、両者を止める為にガネーシャやアストレア・ファミリアが総動員する羽目となる事態へ繋がった
一夏「そこまで行けばもはや病気だな。どこがいいんだあんな女」
六月「それはもう何百回も言ったろうが、一夏こそ、いつまでアルフィアを目の敵にしてんだ」
一夏「それについても何百回言ってんだろうが。とにかく俺はアイツを好きになることなんざ絶対ない。死んでも御免だ」
そう言い合いながらも順調に中層へ足を運ぶ両者
彼らの通った後には無数の斬撃と破壊の跡が残るのだった
一夏「はぁ…わかっていたが…やっぱ物足りねえな。階層主なんて言われても、所詮はゴライアス。ただ図体がでかいだけの的でしかないな」
六月「まだ殺りあったことはないが、バロール辺りの階層主がいるとこまでそのうち行かないか?」
一夏「あぁ……それは良いけどよ、それしようとするとシャクティ達がうるさいからな。一応適性レベルまだ達してねえし」
六月「多分俺もアリーゼ達に言われそうだっっと」
そう呑気に座って話している一夏と六月
そのふたりが座っていた地面が揺れ動く
否、それは地面などではなかった
ふたりが座っていた場所は地面ではなく
一夏「今だからこそ言うが、この程度の強さなら湧くまでのインターバル1日1体でよくないか?」
六月「そうなったら大抵のファミリアは通れず潰されるだろうな」
まるで地球の漫画
進撃の巨人にでも出てきそうな大型の巨人のモンスターにして、この中層の階層主
『ゴライアス』の頭の上だった
しかし、このゴライアス、ただのゴライアスではなかった
道中倒したモンスター達の命とも言える魔石を大量に収集しまとめた袋をあえて食べさせ強化させたゴライアスだった
ただしその姿は実に痛々しいことになっていた
右腕は斬り落とされ、片目は潰され、胴体から下にかけて引き千切られた跡がとにかくこれでもかと出来ていた
一体何がこの階層主をここまで痛めつけたのか
その答えは言わずもがな一夏と六月のふたりであった
一夏「ほらほらどうした?俺はこっちにいるぞ?頑張れ頑張れ。俺達が飽きるまで、何度でも相手になってやるぞ?」
六月「趣味悪いな」
一夏「お前こそ、人想いにとどめ刺さない辺り大概だろ」
『ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!』
手負いとは言え階層主を前に呑気に会話するふたりの姿にゴライアスは怒り心頭気味にその巨大な腕を振り下ろした
それに対し一夏は特に慌てる様子を見せず、それどころか片手をポケットに突っ込み、もう片方の手の人差し指をゴライアスに向け、ただ一言告げた
『解』
その瞬間、ゴライアスの巨大な腕はまるで何かに一太刀されたかのように斬り落とされた
『ゴアアァァァァァァァ!!』
もう片方の腕を持っていかれ痛み苦しむゴライアス
だがそれをみてなお容赦なく責め立てる男がいた
『ゴアァァ!!』
無防備となっていた胴体に一瞬で接近し拳に力を込め一撃を叩き込んで見せた六月
その一撃を食らったゴライアスはその巨体を大きく吹き飛ばされダンジョンの壁に叩きつけられた
一夏「改めて思うが、お前のその馬鹿力はいつ見ても爽快だな」
六月「指一本で相手を斬るお前もな」
一夏「ンじゃあトドメ、刺してもいいか?」
一夏が六月に顔を向けながら聞くと、六月は無言で帰り支度を始める
それはあとは任せるというサインである為、一夏は壁に叩き込まれたゴライアスへと飛びその胴体に触れ
一夏「じゃあな」
『捌』
その言葉を綴ると次の瞬間
ズパパパパパパパ!!!!
巨大な身体を持つモンスター、ゴライアスの身体は賽の目状に切り刻まれた
一夏「……んじゃあ。帰るか」
六月「…だな」
あとに残った戦いの跡へ背を向けながらふたりは帰路に着くのだった
一夏の魔法『御厨子』は対象を切り刻むという魔法
六月のスキル『フィジカルギフテッド』は捨てることで得た超人的な身体能力と五感
この若い2人の冒険者は、そのシンプルなまでの力だけでこのオラリオに根を下ろす数多の冒険者達のてっぺんに立っていた
彼らが通った後にはまるで天災の跡とも言える戦いの跡が残り、そんなふたりをオラリオの神々や冒険者はこういう呼ぶのだった
【危険児二人 ただし最強/最凶】
《キャラクターズファイル》
織斑一夏
レベル5
《スキル》
【
・自他との間にルールや誓約を結び 様々な効果を得る
得られる効果は縛ったものの大きさやリスクにより変化する
【
・他者の魔力の色や残穢を見る事ができ
自身の魔力のコントロールの効率を上げる
・魔法使用時の魔力のロスを軽減させる
【リゲイン】
・魔力量&マインドの総量に応じて肉体、内臓の修復再生回復を果たす
【
・自身の体内を部分的に分解し新たに作り替える
・毒物の分解の際、その毒物の強さに応じて分解にかける時間が変わる
・失ったマインドの自動回復を施す
《発展アビリティ》
精癒F 精神力の常時自動回復
魔力操作E 魔法を使う際の魔力ロスを最小に抑えられる
耐異常G 異常状態に対して耐性を持つ
治癒E 回復魔法や治療行為に補正が掛かる
《魔法》
上記の縛りの影響で全て詠唱破棄できる
縛りにより詠唱破棄で発動可能。詠唱したほうがより威力と速度、術式効果や対象の拡張を起こす
【
斬撃魔法
・超短文詠唱/短文詠唱
詠唱式:【
・飛ぶ斬撃 形状の変化や規模も込める魔力量に依存
指先から放つ
・スペルキー【
威力は解に劣るが最低でも鉄を切り刻む威力を持つ
・超短文詠唱/短文詠唱
詠唱式:【
・触れた対象の魔力量・強度に応じて自動で最適に切断する
相手に直接触れなければ発動しない 詠唱することで術式対象を無機物に限定させることが可能
【
炎属性魔法
詠唱式:【
・地獄の炎の如く一撃を放てるが通常の魔法弾と比べ威力に反し速度がなく範囲も狭い
その為普段は掌で溜めて放つ
【彼らが最強/最凶と呼ばれたわけ】
事件簿 【フレイヤ・ファミリア陥落事件】
当時レベル4だったふたりに興味を抱き、自身にとっても目の敵とも言えるヘラに対しての嫌がらせも兼ねてふたりを欲しがったフレイヤは眷属達を差し向けた所返り討ちに遭わされ、あまりにもしつこかったためふたりの怒りを買いたったふたりでフレイヤ・ファミリアホームに殴り込みに行きその場にいた多くの団員を叩き潰しながらホーム内へ侵攻し炎金の四戦士(ブリンガル)ことガリバー兄弟(長男アルフリッグ、次男ドヴァリン、三男ベーリング、四男グレール)をふたりは踏み潰すように蹴散らし、六月がカースウェポンを使う黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)ことヘグニ・ラグナールを落ちていた長剣で圧倒し斬り伏せ、一夏が白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)ことヘディン・セルランドの放った魔法を上回る速度の魔法を連射し最後には地面に斬り刻まれた跡を残して倒され、フレイヤの護衛として残っていた団長にしてオラリオ最強の男 猛者(おうじゃ)オッタルと副団長にして都市最速の男 女神の戦車(ヴァナ・フレイア)アレン・フローメルと交戦し、高速で動くアレンの動きを全て見切りレベル詐欺とも言えるステータスから来る拳を六月が顔面に一発叩き込みノックアウト
そして最後に残ったオッタルを一夏はレベル差をまるで感じさせないまでの戦いを行い、多少の手傷はついたが本気を出したオッタルを倒し、戦いを終えた一夏はオッタルたちに向け『この程度で都市最強をよくも名乗れたな。アルフィアの方が100倍は強かったわ』と言葉を吐き、これがきっかけでオッタルは今まで以上に鍛えるようになりふたりがフレイヤ・ファミリアホームを出る頃にはまるで災害でもあったのかと思わず想像してしまうほどボロボロとなったオラリオ最大派閥の本拠地の姿が残ったのだった。またフレイヤに対し『次俺達に嫌がらせしたら、テメェのファミリアを斬り刻んでお前も天界に送還させてやる』と警告した。なおその時の発言には一切の嘘偽りがなかったので本気で殺るつもりということがわかり、彼らの存在はオラリオでも危険な存在と認識されつつも新たな都市最強/最凶が誕生したことを理解した
なおこのふたりはこの襲撃でレベル5にランクアップした