子供の頃
理想や夢
多くの少年少女は将来や未来に希望を描き それを信じそうなる事を望み生きていくだろう
だが
少なくとも 彼は
彼には自分が決めた生き方を自分自身で決めようにも、周りはそれを決して許してはくれなかった
彼の姉
彼女の親友である篠ノ之束《しのののたばね》が開発した女性にしか使えない近代テクノロジー IS…正式名称〈インフィニット・ストラトス〉は世界最強の兵器であり、元々は宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ……だが、開発当初は注目されなかった……しかし…今から数年前に起きた『白騎士事件』と呼ばれる事件により…従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった
そしてこのISには、女性にしか使えないという欠陥があった
その結果このISを使える女性こそが男性よりも優れた存在だと世に浸透し、今や男の社会的地位は酷く、ISが生まれる前の女性の社会的地位が低いと揶揄されていた時代とは逆転
いや、むしろその時代よりも今のほうがよりひどい惨状とかしている
女性は女として生まれてきただけで偉いと勘違いし世間では男だからという理由だけで理不尽な目に合わせるなど、世はとんでもない暗黒期に入っていたのだった
そんなさなか、ISを使い最強を決める世界大会の初代覇者となり最強の称号 ブリュンヒルデを手に入れた存在こそが、織斑千冬だった
そんな千冬は一夏にとっては尊敬する唯一人の家族だった
だが、同時にその存在は一夏に負荷を与えていた
世間の女性は千冬の事を まるで神でもあるかのように崇め、世界中には熱狂的な信者の様な者達が多くいた
それらの存在は 一夏の生き方を遮ることとなった
突然だが 一夏は勉強も運動もあらゆる事を凡人以上にやりこなせるだけの優秀さを持ち合わせていた
だが 千冬を神の如く崇める女達からすれば
『織斑千冬の弟なんだからそれくらい出来て当然』
『流石はブリュンヒルデの弟』
『完璧な織斑千冬の弟も完璧でなければならない』
と、まるで彼を織斑千冬を引き立たせるためのアクセサリーか付属品の様な扱い
そして 完璧でなければ価値はないとでも言いたげなものだった
そう 彼の人生を彼自身が自由に決めるなんてことを周りは許さず、織斑千冬を引き立たせる様強要し、不自由を味わってきたのだ
そんな境遇を幼少期から周囲に受けてきた彼は腹に溜めに溜め、中学2年を終える少し前に 事件は起きた
たまたまテストでケアレスミスを犯し、ほんの一点減点を受けてしまったのだ
だがそれでも満点からほんの一点
それも今回のテストは難しく一夏よりも上は居ない難易度だった
これは褒められるはずのものだった
だが 実際には完璧な結果を出せなかった彼を 織斑千冬信者だった女性担任や女性生徒がこぞって責め立てたのだった
この様な理不尽を受けた場合 人によっては様々な行動を起こすだろう
例えば言葉による反論 もしくはその場から逃げ出す 或いは激昂
では一夏は何をしたのか
彼は拳を握りしめたかと思えばふたりを殴る
が、流石に理性は保っていたため、ふたりの背後の窓ガラスをぶち抜いたのだった
当然その手は血まみれとなり、教室は大騒ぎとなった
その後、親の居ない一夏の保護者として、千冬が学校に来て学校側と話し合いをし、しばらくの停学処分を受けることとなった
家に帰ったあと 千冬からなぜあのようなことをしたと怒られた
すると、学校でも溜まっていた怒りはここでも爆発し、遂には初めての姉弟喧嘩に発展した
一夏はこれまで千冬が姉だったことで受けた不条理さを、窮屈で不自由だった事を全て吐き出し、挙げ句の果てには
一夏「俺の親でもない癖に 俺の生き方を指図するな!」
一夏が世間や周囲から受けてきた事以外にも 不満は存在していた
それは 親の居ない自分を女一つで育ててくれた千冬の人生の負担になっていることだった
育ててくれた事に恩は感じている だからこそ、千冬の負担になりたくない。その為に中学卒業後は働きに出るつもりで居たが、千冬は高校や大学にも行かせるつもりで早くから働いてきた
何度も何度も 中学卒業後は家を出て働くと言っても言うことは聞かず、いつも力でねじ伏せ意見を通そうとしてきた
この姉までもが、俺の生き方に指図しようする
我慢の限界を超え、今回ばかりは例え拳で殴られようとも引こうとはせず、自分の全てを吐き出した
結果
バチッ
千冬からビンタを一発喰らわされた
だが、そのことに一夏は驚いてはいなかった
彼が何よりも驚いたのは
千冬「そうだ……私は……お前の親ではない。ここにいるのは、親の真似事をする、ひとりの女だけだ。お前の、私達の親は ここには居ない」
これまで 一度たりとも見せることのなかった 強く勇ましかった姉の暗く悲しむ表情だった
一夏「!」
気がつけば、一夏は家を飛び出した
あんな顔を見てしまって、否 姉にあんな顔をさせてしまった自分自身を呪うかの如く とにかくなりふり構わず、走り続けた
それがいけなかったのだろう
次の瞬間突き当たりから飛び出した車を回避することができなかったのだから
一夏「なんだ……ここは…」
一夏は気がつくと、何処かの平野にひとり佇んでいた
周囲を見渡しても、人っ子一人居なく、更には建物の影もなかった
唐突な展開に一夏は戸惑いながらも人並みよりも賢い頭を働かせ、今の状況を理解しようと頭の中で考察した
一夏「(……突然の平野。ドッキリ…なわけないか…車にひかれたかと思えばここにいた。①ここは死後の世界②今流行りの異世界転生、もしくは転移。いやどっちにしろ俺今詰んでね?こんなわけわからん場所にひとりなんてな)」
とにかく歩きながらどうするか考えながら足を進める一夏
一夏「(でもこれ、考え方によっては、俺晴れて自由を手に入れたんじゃねえのか?)」
しばらく歩いていると、一夏の思考はそこへ辿り着いた
ここは死後か異世界かどうかは知らないが、ここには自分を縛り不自由を味合わせる存在はいない、自分や姉を知る者がいないということは、何もかもを0から築くことができるということだ
一夏「……そう考えたら、この世界に来たのもそう悪くはないか。どうせ元の世界に帰れるかどうかわからんし、開き直って今の状況を満喫するかね♪んじゃ、とりあえず何処か人のいるとこまで行ってから、これからの俺の人生どうするか決めるとするか!」
そう言うと一夏はこれからの未来を思い描きながら先ほどよりも軽い足取りで平野を突き進むのだった
一夏「はぁ……はぁ……はぁ……まあ、地球じゃねえんだ。こういう生き物が居てもおかしくはねえわな」
そう息を荒げながらも手に握る短刀を握りしめ身体に付いた血を拭き取る一夏
平野を突き進んでしばらくすると、ゴブリンの群れに遭遇し襲撃を受けた一夏
一夏はこれらの地球では見かけない生物を目にし驚きながらも自分に襲いかかるゴブリン達を明確に敵と判断し襲いかった一匹の攻撃を避けた瞬間顔に蹴りを叩き込むと短刀を持つ方の腕を絡みつくと関節外しの技を披露し短刀を奪い取ると残り全てのゴブリンの急所という名の急所を切り裂き生き延びることに成功した
生まれて初めて、人間以外を相手にしただけでなく、人の形をした生物を殺してみせた
不思議なことに、一夏は落ち着いていた
それはここが異世界なら自分の世界の倫理観はある程度捨てて置かなければならないと頭で理解していたから
恐らくこの先場合によっては人間相手ともやり合うことになるかもしれないとも
???「ほぅ……見た所…恩恵を刻まれた冒険者ではなさそうだな」
一夏「!?」
突然背後から声がしたため思わず短刀を前に向けながら後ろを振り返りつつバックステップをした
そこに居たのは、灰色の長髪 黒いドレスを着用した両目を閉じた恐らく街を歩けば10人の男女が振り返るような美女だった
だが、一夏はそんな美女を前に見惚れてなどいなかった
彼の心を今駆り立てていたのは『激しい警戒心だった』
音もなく、声を挙げるまで決して一夏が気づけなかった程の高度な気配隠し、もしも敵なら何も気付かずにやられていた
何より一夏が警戒した最大の理由は
一夏「(なんだ……この女……クソ強えぇ……多分、いや確実に千冬姉やあのクソ兎(束)よりもずっと上だ)」
一夏は幼少期より周りを凌駕する者達を身近で見て育ってきた
その影響で相手を見て判断する能力は育っていた為、一目見た瞬間からこの女性の異常なまでの強さを理解し警戒した
???「……私の正体……を…察したわけではなく……私自身を見て警戒したか……なるほど…存外観察眼は大したものらしいな……お前ならば……或いは」
なにか考え込む様子の女性
その間一夏は頭をフル稼働させこの状況をどう乗り切ろうか考えていた
一夏「(さて、どうするか…どう見ても戦って勝てる相手じゃねえ。にげ、られやしねえな多分。ワンチャン捨て身覚悟で突っ込むか?いやんな脳筋みたいな最後迎えたくはねえし『おいお前』)ん?」
思考中だった一夏を呼び止めた女性
???「お前、私の下へ来い。お前を私のいるヘラ・ファミリアへ入団させることを今決めた、私について来い」
一夏「……は?」
突然の決定事項に一夏は困惑した
ヘラ・ファミリアとはなんだ? 入団とはなんだ? 何を考えそんな結論に至った? そもそもお前は何者か?
様々な疑問が交差した
当然だ 自分はこの世界のことを何も知らなすぎる
この女の正体もわからない
犯罪者の可能性も捨てきれない
だが拒否れば何されるかわからない
最悪殺されるかもしれない
それを頭では理解していた だからここはおとなしく言う通りにすべきである
それが生き延びるためなら自分の自由を捨てきれるような者ならば
一夏「……ざけんじゃねぇ」
???「?」
一夏「ふざけんじゃねえ!!俺の生き方や俺の道は俺が決める!!名前も知らねえ赤の他人なんぞに指図されたかねえ!!」
だが 彼は決して、自分の自由を 人生の生き方を選ぶ自由を手放してでも生きるような思考は持ち合わせてなかった
それどころか 他人に人生の生き方の指針を決められるくらいなら死を選ぶ
そういう男だった
???「……ほぅ…私の強さを前にその様な世迷い言を吐くか雑音」
一夏「だったらどうする?俺を滅ぼしてみるか?」
短刀を握り拳に力を込めつつ女性を強く睨みつける一夏
???「……良いだろう……なら思い知れ……強者の作法を教えてやる」
ここで初めて両目を見開きオッドアイを晒して見せた女性に
一夏「はぁぁぁぁぁ!!!」
一夏は覚悟を決め短刀を片手に飛び出したのだった
それが
この世界で一夏が 後に愚姉と呼ぶ存在
アルフィアとの出会いだった
これは 世界を救う英雄 を育て上げた英雄の序章
彼が世界最強になるまでの物語