私の好きなクラッシックの名盤
●モーツァルト・弦楽五重奏第五番(K.593)/クイケンカルテット+寺神戸亮
真っ先に思い浮かぶのがこれ。相互フォロアーにもなっている哲学者の萩野さんから教示され、クラッシックが好きになった記念碑的な録音だった。いろいろな楽団が演奏しているものの長らく理想の音源に見えることはなかったけど、この盤を聴いたことによって唯一無二であることが体得できた。出だしのチェロの音を聴いただけで傑作であることがわかるが、この曲の愁眉である第二楽章のチェロのピッチカートの部分を聴けば、誰にでもそれがわかると思う。
●バッハ・無伴奏チェロ組曲/ヴィーラント・クイケン
おそらくは最多の録音が為されている楽曲の一つで、私も20枚を超える録音を有している。名盤揃いの楽曲で、一人で複数回録音しているものも少なくない。
そんな中にあって、老年に達してから初めて全曲録音に臨んだこの盤は、個人的にはこの曲の決定盤と言っても良いと思う。私の最愛のK.593と同一人物が演奏しているのは偶然ではない。
●バッハ・無伴奏バイオリン組曲/ヤッシャ・ハイフェッツ
チェロ組曲以上に盤が多いもので、最も有名なパルティータ第二番の最終楽章であるシャコンヌだけの録音を数えれば、クラッシックの中で最も録音が多い曲と言えるかもしれない。
名盤揃いのこの曲の中でハイフェッツのそれを選ぶのは、圧倒的な演奏技術故のことだ。同時代に活躍したシゲティに比べると情緒に欠けるとか面白味が無いなどと悪口を言われもしたけれど、単なる感想に過ぎない「情緒」を遥かに超えるものがこの演奏にはある。透徹した技術は感情を凌駕するのだ。
●バッハ・ヨハネ受難曲/ラ・プティット・バンド
受難曲はマタイの方が有名だし、客観的に見ればこちらの方が優れていると思うけど、個人的な好みで言えばヨハネの方が、いや、リフキンシステムと古楽器によって奏でられたラ・プティット・バンドのヨハネが大好きだ。
リフキンシステムと言うのは、受難曲では定番となっている大人数の合唱団を設定せずに、独唱者が合唱者を兼ねるもので、器楽もこれに併せて最低限度の構成となっている(例えばバイオリンは第一と第二を併せても八人程度、チェロは二人程度とか)。
ラ・プティット・バンドの演奏が古楽器で行われていることも非常に重要で、特に本来はバイオリニストであるリーダーのシギズバルト・クイケンが奏じるビオラ・ダ・ガンバは一聴の価値があると思う。
これだけは10年ほど前に生演奏を聴いたこともあるので、もちろんそのことも名盤と感じる大きな要因になっている。シギズバルトの演奏はしくじりまくっていたけれど、それでもやはり生演奏は格別だ。