カクレオンの店主ですよ!悪いモンスターじゃありません!


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作:猫ネコねこキャット
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都市最強怖い


 

 

 ワタシは牛が苦手だ。

 食べる意味ではなく、生物的な意味で苦手だ。

 特に転がってくるピンク色の牛なんて見ただけで逃げたくなる。

 しかし、ワタシは猪の方がもっと苦手だ。

 

 だからワタシはなぜかミノタウロスを鍛えている不審者を見なかったことにして下へ降りていく。

 

「待て。お前にも手伝ってもらう」

 

 つもりだった。

 

 ワタシ透明化しているのになんでバレたんだろう? というかなんで冒険者がモンスターを鍛えてるんだ?ワタシはこれから仕事があるのでそんな暇は……

 

「潔く姿を表せ」

「お断りさせていただきます」

 

 やっぱりこの猪の人と関わると碌な目に遭わないのは商人になる前から知っているので、早いところ、さよならバイバイしようとすると地面から足が離れ、視点は上下反転する。厳つい猪の顔が見え、尻尾に強く握られている感触が存在した。仕方なくワタシも環境に溶け込む擬態をやめて本来の姿を表す。

 

「離して」

「断る」

「殴ってもいい?」

「望むところだ……といつものように言いたいが、今はフレイヤ様から承った務めがある」

「ならその務めを邪魔しないように下に行くから離してよ」

「無理な相談だ」

 

 やっぱりこの人面倒くさい!

 修行中も見るや否や襲ってきて、商人を始めてからも商品なんて眼中に無く、ワタシと戦おうとしてくるし。ぶちのめしても、地上へ運ぶ最中で絶対に目を覚ますからカクレオンとしての理不尽感も演出できない。ワタシがこの世界で唯一嫌っている人間だ。

 

「女神から、お前にも手伝って貰えと助言を受けた」

「その女神様に抗議文を書くので持っていってもらってもいい?」

 

 フレイヤ様とか言ったかな。なんとも迷惑な女神様だ。ワタシと彼の今までを知っていながら言うのであれば、相当性格の悪いタイプに違いない。神様ってものが性格終わってることはアルセウスで知っているがこの世界でもやはり変わらないらしい。

 

「別に貴様にもこのミノタウロスを鍛えろと言っているわけではない。鍛えるための商品と知識を売れ」

「もう今日は店仕舞いなんだけど…」

「あと少しで日付が変わる」

「頭イノシシすぎない?」

 

 他の客なら店仕舞い後にも売って欲しいなら売っただろう!例えそのお客さんが過去に泥棒していたとしても、ワタシに喧嘩を売った犬の人だとしても。だがこの猪だけは別!でもこっちから問答無用に殴るのはカクレオンとしてのプライドに傷がつく。

 ワタシとしての感情とカクレオンの商人というプライドがせめぎ合っていると気絶していたミノタウロスが目を覚まし、こちらを睨んだ。

 

「あのミノタウロスは……」

「なんだ?」

「…なんでもないですよ」

 

 ゼノスかどうか、聞こうと思ったが彼らが今は人間たちに存在を隠していることを思い出して踏み止まる。腹立たしいが、長いこと関わってきたせいか、この猪なら彼らのことを受け入れることができる人間だとはわかっているが、今聞くべきことじゃない。というかミノタウロスの本能に任せた攻撃を見れば彼らとは違うことを察したのだから聞く必要はなかった。

 

「そもそもどうして冒険者がミノタウロスなんか鍛えてるの?」

「女神の神意故だ」

「いつもワタシを襲うのも?」

「それは俺の意思だ」

 

 そう言う彼の顔は「女神がそのような指示を出すわけないだろう」と書いているように思えた。表情変わってないけど。

 

 しかし本当に謎な人だ。強くなるためにワタシに挑んでいると前に言っていた。しかしワタシに挑まなくとも強くなれる方法なんていくらでもある。ダンジョンならより深い階層に挑めばいい。自分よりも強い冒険者に挑めばいい。どうしてワタシなのだろうか。でも今回はワタシを頼る理由はわかる。モンスターを鍛えるために手伝ってくれ、なんて普通に言えば異常者だ。それに万が一手伝ってくれたとしても強くするための手段が魔石を食べさせることしか人間にはわからない。しかし魔石を食べさせるのでは無く、わざわざ剣を持たせて鍛えているところを見るに魔石での強化はしたくないようだ。であるならばモンスターのワタシならば、モンスターの鍛え方やモンスターを鍛えるためのアイテムがあるのだからワタシを頼るのが最も可能性のある人選なのだろう。

 確かにゼノスたちと一緒に魔石に頼らずに技術を鍛えようと訓練したおかげでモンスターの鍛え方は知っているし、製作したアイテムを使えば楽に鍛えられる。

 ワタシ以上の適任はいないと自信をもって言える。

 

 だけど、猪の言うことに従うのは絶対に嫌なので拘束を振り解いて下へ続く階段へ向かう。

 彼のすることにワタシは関係ない。ワタシは善人でも悪人でも無く、ダンジョンで物を売るだけの、ただの商人。

 

「倍の値段で購入しよう」

「いらっしゃ〜い!」

 

 ただの商人だから仕方ないね。

 

 

 

 

「やはりお前の売る商品は常識を逸脱している」

「常識とか知ってるんだ…」

 

 煽るためとかじゃなく、純粋に思ってしまったことを口にしながら脳内そろばんで金額を確認してお代を受け取り商品を渡す。

 技が成長しやすくなる『たんれんのタネ』や各種回復アイテムに加えて、その他のアイテムも全て2倍の値段で売りつけた。

 もともとワタシを頼れるなら頼るつもりだったからか、全て現金でのお支払いとなったのには驚きましたが、最近はお釣りで現金を使う機会も多いんで良しとした。

 それにしても驚いた。彼を客としてワタシが接することになるなんて。今まで会うたびに殴ってたからな…。

 

「……少し気になったのだが」

「なんだい?」

「なぜお前は俺にだけ接し方が違うんだ?」

「普段は協力者でも客でも泥棒でもない相手だから」

 

 そう言ってミノタウロスの修行に戻った変人を置いて、ワタシは下の階層へ降りて行くことにした。

 

 

 


 

オッタル

なにこいつ…強…挑みまくろ

 

カクレオン

なにこいつ…怖…商品買えや

 

これが数年続いているようす

 

 

 

 

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【ベヒ猫ASMR】アリアに癒やされる甘々なひととき [M.V.P]
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