税率算出方法、批判広がる 「貢献考慮しない単純な割り算」 米相互関税

 トランプ米大統領が2日発表した「相互関税」の税率をめぐり、算出方法への批判が広がっている。米政権は、各国・地域の貿易障壁などを勘案して算出したと説明していたが、実質的には米国が抱える貿易赤字を輸入額で割っただけだった。

 「この39%という数字はどこから来たんだ?」

 ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は2日、ネット上の記事で、欧州連合(EU)が米国に実質的にかけていると評価された関税率に疑問を呈した。EUが米国製品に現実に課す平均関税率は3%に満たないからだ。

 トランプ氏が「非関税障壁」だと批判する欧州の付加価値税(VAT)の平均税率約20%を加味しても「39%にはほど遠い」と困惑をつづった。

 算出方法に関する推測が飛び交うなか、ジャーナリストのジェームズ・スロウィッキ氏は同日、Xに、「このフェイク関税率の出どころがわかった」と投稿した。政権側は、各国の関税率や非関税障壁を加味して算出したと主張していたが、「米国が各国に抱える貿易赤字を、その国の対米輸出額で割っただけだ」と指摘した。

 これに対し、ホワイトハウスの広報担当者はX上で反論。「ノー。我々は文字通り関税と非関税障壁を計算した」と述べ、政権が計算に用いた数式を示した。2日夜に米通商代表部(USTR)が公表した分数の数式だ。

 分子にはA国への輸出額から輸入額を引く式、分母には二つの指数とA国からの輸入額を掛け合わせる式がある。この二つの指数がミソだ。

 USTRは、指数を定義しているが、それに沿って計算すると「1」になる場合が多い。1をかけても、数字は変わらない。難しく見える数式は、分子の貿易収支(貿易赤字)を分母の輸入額で割ることと等しかった。米政権が考慮したとされる各国の米国への関税率や非関税障壁は、数式には登場しない。だが通商政策を担当するナバロ大統領上級顧問は米CNBCに「(計算は)洗練された分析に基づくもの」と述べた。

 米政権は、算出した各国の「関税率」の約半分を相互関税として9日に各国に課す。反発は必至だ。

 米国に46%の実質関税をかけていると評価された日本の経済官庁幹部は、「対米投資などの貢献を全く考慮しない単純な割り算」と憤る。「どういう意図でこの計算をしたのか、米側に事実関係を照会する」という。(榊原謙=ワシントン、多鹿ちなみ)

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