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解体予定の小学校 仙台の企業が3Dデジタルで保存

3Dデジタル映像で記録された八幡小の校舎

 2025年度に建て替え工事が本格化する仙台市青葉区の八幡小(児童583人)で、1971~84年に整備された現校舎の姿を3D(3次元)のデジタル映像で詳細に記録し、保存する計画が進んでいる。取り組むのは青葉区のイベント・不動産業の山信商事。社長の山田翔さん(43)と祖父、母が卒業し、小4の長男が通う同校の風景を残そうと発案した。同校に無償提供する。

 同社が約5年前に使い始めたバーチャルで物件を内覧できる米国発の技術を活用する。360度回転しながら高精細な4K映像を撮影できる専用カメラ「マーターポート」で取り込み、データをクラウドに蓄積すると、撮影地点を自動的につなぎ合わせ、3D空間が生成される。

 パソコンやスマートフォンからアクセスし、自由に視点を移動できる。空間上に説明文や動画を埋め込んだり、実際の長さを測ったりすることも可能。仮想現実(VR)用ゴーグル型端末を使えば、その場にいるような感覚が味わえる。

 同社は昨年11月、敷地内の90カ所で撮影し、解体直前の体育館とプールを記録した。児童が残した感謝のメッセージや絵、手形から壁の染み、柱のさびまで鮮明に写し取った。今年2月号の学校だよりに2次元コードを載せ、児童や保護者に暫定版を公開した。

 山田さんは「匂いや音の記憶までもよみがえってくる。見る人によって、思い出すことがそれぞれ異なるのもすてきだ」と話す。

 市教委によると、5月ごろから体育館とプールの跡地に仮設校舎を建てる。同社は来年1月ごろの取り壊し開始前に鉄骨4階の現校舎の内部を撮影して完全版を仕上げる。

 東日本大震災時、山田さんは会社員として勤務していた宮城県多賀城市内で被災した。「ある日突然、どこに何があったのか分からなくなった」と振り返り「後世に伝えるべき重要な建造物は、予期せぬ天災や劣化のリスクに備えた方がいい」と指摘。市内の史跡や震災遺構「荒浜小」をデジタルアーカイブ化し、教育や観光に生かすことも提案する。

八幡小のデジタルアーカイブに取り組む山田社長=仙台市青葉区の山信商事
八幡小3Dデジタルアーカイブ

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