意味深な事ばっかり言ってたら1000年後の未来に跳ぶ100人の英傑に選ばれた男


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作:まだ早い
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1話:特に深い理由や計画はない


 

 意味深な事を言うキャラクター。

 

『ククク……せいぜい後悔しない選択をするのだな……』

 

『今はまだ語るべき時ではないわ』

 

『……いや、何でもない。それに、もう時間だ』

 

 色々な物語にて現れ、主人公に中身がありそうで全くない事ばかり言い、そしてストーリーか終わってから冷静に振り返ってみると

『あれ? コイツ実は何の役にも立ってなくね?』

 となる数々の登場人物たち。

 

 僕は14歳の頃、数々の物語に触れた結果として、自分もそういった人物になりたいと強い憧れを抱いた。

 

 何故なのか? と言われたら

『カッコいいから』

 という一言で終わるのだが、もう少しそのカッコ良さを詳細に語るならば。

 

 あの役に立たなさが良いよね。

 裏で何らかの活躍をするとか一切なく、主人公たちにヒントを与えているようで特に与えていない。重要そうに語って主人公たちを驚かせた話と思いきや、後から考えたら実は別になくてもどうとでもなるような話。

 いざ仲間になってみると、そこまで弱くはないけど、強くもない。ぶっちゃけ満を辞して仲間になった割には微妙。

 

 なのに、彼らの全身から醸し出す謎の『それっぽさ』。

 別に大した事を言っていないのに意味不明な説得力。

 

 ……これはもう、憧れずにはいられないっ! 

 

 こうして僕は、滅亡に向かう世界の中で物語のキャラを見習って意味深な言動をしまくった。

 意味深な人物は、主人公……この世界が現実である以上主人公なんて居ないのだが、それならばと重要そうな人間に何人か目を付けてストーカー……いや意味深な語りをし続けた。

 

 その結果として。

 

 

「──後は、私とあなただけね。絶滅する人類の中から100人の英傑を選び、環境が改善されるであろう1000年後の未来に送り込んで新たな人類史を刻む……『新世界』計画の対象者は」

 

 僕の目の前で98人目の『新世界』計画に選ばれた者を魔法陣に押し込み、語り掛けてくる銀の髪をした妙齢の女性。

 実年齢は結構な物になろうとしているのにも関わらず、見た目は20代でも通じると思うくらい美しい彼女の名前はアリスリーゼ。

 『至天の銀魔女』と呼ばれる世界最高の魔法使いだ。

 

 対して僕はいつものように、普通に目は見えているのにカッコいいからという理由で付けている、特に意味もなく希少な素材を使いまくって作った自慢の眼帯に手を軽く当てながら。

 

「フッ……そうだな。これもまた、因果といった所か」

 

「……なに? また何か企んでいるの?」

 

 僕が毎度の如く中身の全くない発言をすると、それに対してジト目で軽く睨んでくるアリス。

 何故かわからないけど、彼女と僕はやたらと縁があるんだよね。

 いやむしろ、僕たちは腐れ縁だとか相棒とすら言える関係かもしれない。

 こうして人類最後の日に、最後に残った2人として会話するくらいには。

 

 まあ最初に彼女と出会った際に、どこから見ても特別だったアリスを主人公候補と考えて付いていったのは僕なのだけれども。

 ああ、他にも候補は居たから、アリスにだけストーカーしたわけではないよ。意味深な男は忙しいのだ。

 

 ともかく。

 そんなアリスに対して、僕はいつものカッコいい感じを出しながら

 

「さあ、どうだろうな?」

 

 ──決まった。

 

『さあな』

 と

『どうだろうな?』

 という、二大意味のないカッコいいだけの意味深な発言。

 そうそうこれこれ、こういうのが良いんだよ。

 

 勿論、全く何も計画なんてない。

 

 ──アリスは魔法陣の製作者だから最後に残るのは当然だけど、僕が残ったのはたまたま彼女と僕が仲が良いからというだけだと思う。

 

 とはいえ、アリスはこういう僕がわけのわからない事を言った時には大体スルーしてくれるから、意味深プレイをする時には話していて楽な感じなんだよね。

 つまり簡単に言うならば、彼女の眼は節穴だという事だ。

 

「……まあ、あなたが今更どんな陰謀を成そうと、もうどうでも良いけれど。なにせ、この計画では『新人類』は記憶を抹消して未来に送る……封印ではなく抹消であり保存もしない以上、戻る事はあり得ない。……つまり今の私は死ぬという事と同義」

 

 ほら。

 アリスは僕にツッコミを入れずに他の話をし始めた。

 本当に良い相棒である。

 彼女、頭は良い筈なんだけどね。それも尋常ではなく。

 何で僕を見る目だけはないんだろうか? 

 

「私が死んだ後に誰が何をしようと知った事ではないわ」

 

「フッ……生への未練はないと言うのか?」

 

 ちなみに、僕には未練がめちゃくちゃある。

 記憶消去には物凄くたくさんの事情があるから仕方ない事だし、記憶どころか本当に命を失う世の殆どの人類に比べたら遥かにマシとはいえ、今も怖くてちびりそうだ。

 

 とはいえ、その恐怖を表現してしまったら意味深な男の名折れというもの。

 僕は不敵に笑ってアリスに問いかけるが……

 

 あっ……トイレが近く……

 

「無い。私は自分の人生という物に満足したから。あなたに唆されてから、好きなだけ暴れて……楽しかった」

 

 如何にもやり切ったぜ。みたいな顔をするアリス。

 うーん。

 彼女はいつも僕に唆されたって言うけど、僕にはそんな事をした記憶はないんだよねえ。

 そしてトイレに行きたくなって来た。

 

「憎いお母様をボコボコにして魔法陣にぶち込んで、あの頭のおかしい『神殺し』といけすかない『至天の槍皇』の決闘を台無しにして魔法陣にぶち込んで……もう未練はないと言い切れる」

 

 うん。

 この人、もの凄い無茶苦茶な事をやったんだよね。

 

『銀の暗黒女帝』と呼ばれてた、裏の世界の支配者であるアリスのお母さんをぶっ飛ばした挙句、気絶した女帝を問答無用で『新世界』計画にぶち込んだり。

 人類滅亡の原因である神様を斬り殺した英雄にして『神殺し』と言われる世界最強剣士と、彼に唯一対抗出来る可能性のある人物として扱われていた『至天の槍皇』が決闘を始めた……直後に不意打ちの魔法で2人ともぶっ飛ばした挙句、気絶した2人を問答無用で『新世界』計画にぶち込んだり。

 

 勿論僕はそんな事をやれだなんて言っていない。

 

 記憶があるとしたら、アリスに初めて会った時……今より若くて綺麗だったけど、凄く怖い眼をしていた彼女に対して

 

 

『君の真の望みは本当にそれなのか……? 自身の胸に手を当てて考えてみるがいい』

 

 

 なんていう全く中身のない薄っぺらぺら過ぎる言葉を言った記憶ならあるけど。

 

 何故か彼女はそれらの神様もびっくりの蛮行を僕に唆された結果だって言ってくる。

 まるで意味がわからない。

 

 ──というか、本格的にお腹がまずい事になって来た。

 下品な言い方になるけど、小だけでなく大も……

 

「さて、残されたのは少しの時間ではあるが行かなくてはな……(う◯こに)」

 

「……はあ、やっぱり悪巧み。好きにしなさい。私はもう魔法陣に入っているから。……さようなら、フェルナンド」

 

「ああ。……さらばだ、アリスリーゼ」

 

 僕はアリスが魔法陣に入るのを横目に、小走りでトイレに向かった。

 まさか新世界に◯んこと一緒に行くわけにはいかないからね。

 記憶を失った新しい僕が新世界で初めて出会うのが自分のうん◯というのは流石にまずいって常識に欠けるという自覚のある僕ですら思うし。

 

 あ、そういえば。

 アリスとはこれで今生の別れなわけなのだけれども……まあ、今更か。湿っぽいのは僕たちらしくない。

 

 

 ……

 

 

 うーん、スッキリ!! 

 

 

 重荷から解き放たれた僕がアリスと居た部屋に戻って来たら、そこには既に僕の為の魔法陣しか無かった。

 

 赤々と輝くその五芒星の陣は、美しさと共に恐ろしさと幾ばくかのカッコ良さを感じさせる。

 デザインを提案したのは僕だ。

 うん。我ながらナイスなセンスと断言出来る。

 

 ──アリスと『天理の賢者』と『時空の賢者』という世界3大魔法使いが共同制作したこの魔法陣は、入った人間を1000年もの間、異次元に飛ばす。

 そこで被験者は数々の『調整』を受けて新人類として生まれ変わり、新世界へと旅立つのだ。

 

『調整』というのは、例えば対象を若返らせて全盛期の肉体にしたり、仮に目覚めた先の環境が劣悪だろうと適応出来るようにしたり……頭の良いアリスと賢者2人が色々と話していた。

 

 アリスは新世界には興味がないらしいけど、天理の賢者考案の前人未到の魔法陣という物に対しては、世界最高の魔法使いとして興味津々だったらしい。

 暴れる事にしか興味のないキリングマシーンたる彼女にしては珍しく積極的に議論していた気がする。

 

 ちなみに、アリスは『至天の銀魔女』以外にも『破壊の賢者』という異名も持ち、他の2人と合わせて3賢者と呼ばれている。あまりにも彼女にぴったりすぎる異名で、初めて聞いた時に少し笑いかけた。意味深な男として我慢したけど。

 

 

 ──さて、ではそろそろ最後に残った人類である僕も魔法陣に入り、記憶を消去して新世界に行かなければならない。

 

 さっきも言ったように怖い。あまりにも怖くてしょうがない。

 記憶を消すという事は、先に行ってしまったアリスが言ったように、今の僕は死ぬという事を意味している。

 けれど、この建物にかけられた生命維持の魔法が切れるのも近い。グズグズした結果仮にそうなったら僕はあっさりと記憶どころか命を失うだろう。

 100英傑以外の人類と同じように。

 

 ……新しい『僕』は新世界で一体どういった行動をするのだろうか? 

 右も左もわからぬままに99人の英傑に囲まれて『僕』は生きていけるのだろうか? 

 少なくとも、今と違って新世界では恐らく物語に触れる機会がない以上『僕』は意味深な男に憧れたりはしないのだろうな。

 

 ……自分で言うのも悲しいが、僕は、才能に恵まれなかった。

 

 もっとはっきりとわかりやすく言うならば、僕は凡人だった。

 勿論、僕は自らに才能がないからと腐ったりはせずに、凡人なりに鍛えはした。

 これまた自分で言うのもあれだけど、普通の人より明らかに努力量は多かったと思う。少なくとも、周りの人間から頻繁に止められるくらいには。

 そうしなくては、この終末世界において僕の理想とする意味深な男になるのは不可能だと思ったからだ。

 

 別に、意味深な男は必ずしも強くなくても良い。

 というか最初に語ったように、意味深なキャラクターがあまりにも強すぎると、それは解釈違いである。

 

 さりとてあまりにも弱過ぎる男は意味深になり得ない。その辺のチンピラに意味深な男がボコボコにされてしまっては、その男は最早意味深でも何でもないただの雑魚でしかない。

 少なくとも、僕はそういった崇高なる理念を持っていた。

 

 凡人でも、鍛えまくればそれなりにはなる。

 実際に僕はそこそこ強くはなった。

 

 ただ、それなり以上にはなれないというだけだ。

 もしこの世界が、凡人でも鍛えれば鍛えるだけ強くなるという程に優しい世界だったならば、きっと人類は滅亡しなかっただろう。

 

 とはいえ、意味深ムーブをするのには十分な強さにはなったから、僕は思う存分楽しんだ……結果として、民と一緒に死ぬ事を選んだ人類最後の王様やアリスを初めとする凄くて偉い人たちから過大な評価を受け、化け物の見本市たる100英傑に選ばれたのである。

 

 うん。世の中にはどうやら節穴しかいないらしい。

 こんな事をしている僕が言うのもなんだけどね。

 

 

 ──なんて、考えながら僕は魔法陣に入る。

 現実逃避の為に考え事に耽った成果か、思ったよりはすんなりと入る事が出来たな。どうやら僕も最後くらいはそこそこやるらしい。

 

 でも、あれ? 

 

「そういえば、記憶消去って魔法陣に入る前に何かする必要があったような……?」

 

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