選択的夫婦別姓の早期導入を求める経団連の昨年6月の提言を巡り、問題視されたトラブルの多くが現在解消されている状況が自民党会合で指摘され、経団連の永井浩二副会長(野村ホールディングス会長)が「追い付いていないところがあった」と釈明していたことが3日、分かった。複数の出席議員が明らかにした。立憲民主党も経団連の意見聴取を踏まえ、月内にも選択的夫婦別姓に向けた法案を提出するが、議論の土台が揺らぎかねない事態といえる。
3年前に7割の銀行で旧姓対応
永井氏は3月6日に党本部で開かれた「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」の会合に出席。旧姓の通称使用による課題を説明したが、各省庁が改善が進んでいる状況を明らかにした。経団連は提言で、11のトラブルを指摘していた。
このうち、「多くの金融機関では、ビジネスネームで口座をつくることや、クレジットカードを作ることができない」との弊害例については、金融庁の調査で令和4年3月時点で、7割の銀行で旧姓名義で口座開設が可能となっている。ただ、クレジットカードは大手5社のうち、旧姓の通称使用が可能となっているのは1社にとどまっている。
「通称では不動産登記ができない」問題については、旧姓のみの登記は認められていない一方、提言公表前の6年4月以降、既に旧姓併記が可能となっている。
さらに「研究者は、論文や特許取得時に戸籍上の氏名が必須であり、キャリアの分断や不利益が生じる」との弊害例については、姓が変わった研究者も論文の執筆者名に旧姓の併記、注釈で対応することが可能となっている。3年10月以降、特許庁に提出する全ての書類に旧姓併記が認められている。
パスポートトラブル報告なく
また、「空港では、パスポートのICチップのデータを読み込むが、そこに旧姓は併記されていない。よって、出入国時にトラブルになる」との指摘については、パスポートに旧姓を併記する要件が緩和された3年4月以降、海外でのトラブル事例は報告されていない。
会合の出席議員からは経団連側に対し、「実態に合わせた主張をしていただきたい」と苦言を呈する声も上がった。永井氏は「追い付いていないところがあった。考えたい」と語ったという。
一方、WT事務局には経団連から、旧姓の通称使用によるトラブルについて、最新の状況にアップデートした事例集は報告されていない。
青山繁晴氏「バイアスかかっている」
会合に出席した青山繁晴参院議員は3日、記者団に「経団連には調査機能もあり『追い付いていない』はあり得ない。バイアスがかかっていると見るべきだ」と指摘し、「最初から方向性を決め、それに沿うデータを持ってきているのだろうが、本来の経団連のあり方とは違う」と語った。(奥原慎平)