●中央団長の談話公表
金沢市本町2丁目で計画されている戦前の朝鮮独立運動家・尹奉吉(ユンボンギル)の「追悼記念館」について、在日本大韓民国民団中央本部(東京)は4日までに、「到底賛同できない」とする団長談話を発表した。記念館構想を巡り、在日韓国人の地位向上に取り組む民団が態度を表明するのは初めてで、そのトップが「ノー」を示した格好だ。地元では予定地がある芳斉地区の住民が、建物の所有者宛てに開設中止を求める要望書を送付したことも判明。街宣車による抗議行動も激しくなってきており、降って湧いた計画に困惑と反発が広がっている。
金沢市にある民団石川県地方本部はこれまで、北國新聞社の取材に対し、計画への関与は否定していたものの、その是非についての明言を避けていた。
民団中央本部の金利中(キムイジュン)団長の談話は3日付で、中央本部のホームページに4日掲載された。記念館計画に関して「地域の理解を事前に得ることなく進められ、日本、韓国同胞の皆さまの生活に不便と多大なる不安をもたらしたことは、憂慮に堪えない」としている。
在日韓国人を代表する団体として、計画には「一切関与していない」と主張。「韓日両国の平和と安寧、日本地域社会の発展のため、分断と暴力、ヘイトがない社会を強く望み、そして目指していく」と結んでいる。
●地元有志は中止要望 町連、対応を協議
地元では、3月27日の芳斉地区町会連合会の会議で、記念館計画への対応が議題となった。反対の意見が相次いだものの、住民の意向を全て確認できていないことから、暫定的に有志として要望書を提出することにした。
この中では、住民の安全安心が脅かされているとし、「芳斉地区と尹奉吉は全く縁がない。記念館を開設することは誠に遺憾だ」と記している。要望書は3日、登記上の建物所有者となっている都内の企業宛てに送られた。町会連合会では22日の総会で、あらためて対応を検討するという。
計画を巡っては、複数の韓国メディアが1月末に「追悼記念館」と報じ、その後、「尹は日本人を殺傷したテロリスト」と主張する団体が開設の中止を求める街宣活動を展開。3月30日には、全国各地から街宣車約80台が金沢市内に集結し、渋滞が発生するなど一時騒然とした。
計画を主導する、韓国の公共放送KBSの元客員研究員、金光萬(キムグァンマン)氏(70)=韓国在住=は、これまでの取材に「追悼記念館ではなく、北陸と韓国の歴史を案内する施設だ」と強調。当初予定していた4月29日の開館は延期するものの、「中止はない」としている。
★尹奉吉(ユン・ボンギル、1908~32年) 戦前の朝鮮独立運動に身を投じ、32(昭和7)年4月29日、中国・上海で行われた日本軍の天皇誕生日の記念式典に爆弾を投げ入れ、日本軍首脳らを殺傷した。旧陸軍第9師団のあった金沢に連行され、同年12月19日に三小牛で銃殺された。野田山に記念碑が残る。