首相「誰と話せばトランプ氏に伝わる?」 与野党党首に吐露した苦悩

鈴木春香 谷瞳児

 トランプ米大統領による高関税政策をめぐり、石破茂首相は4日、与野党の6党首と国会内で会談し、トランプ氏との電話協議を調整していることを明らかにした。近く関係閣僚会議を設置する意向も示した。

 首相はこの日午後、与野党党首に呼びかけ、日本に対する相互関税や自動車への追加関税への対応を協議した。与野党党首が一堂に会して会談するのは異例だ。

 首相は冒頭、「言うなれば国難。政府与党のみならず、野党の皆様方も含めて、超党派で検討、対応する必要がある」と語り、各党首に協力を求めた。

首相「あと10分いいですか」

 これに対し、各党首たちはそれぞれの考えを首相に伝えた。立憲民主党の野田佳彦代表は「トランプ氏と直談判することが一番大切だ」と指摘。国民民主党の玉木雄一郎代表は「今こそ手取りを増やす経済政策が必要だ」と訴えた。

 30分ほどメモを取りながら話を聞いていた首相は、「あと10分、いいですか」と切り出した。トランプ氏との電話会談を検討していることを明かしつつ、「トランプ氏は批判されたりすることが嫌いな人」「誰と話せばトランプ氏に伝わるかが分からない」とも語り、対応に悩む苦しい胸の内を明かした。

 会談前の4日午前、首相は衆院内閣委員会で「報復関税とか、WTO(世界貿易機関)とか、何が一番効果的なのかということを考えて参りたい」と述べ、報復措置も含めて対応を検討する考えを示していた。だが、会談では「聞き役」に回り、具体的な対応を示すことはなかった。少数与党で苦しい国会運営を強いられる中、2025年度補正予算案の編成も視野に、今回の会談を野党の協力を取り付けるきっかけにしたいとの狙いもあるとみられる。

 会談後、野党側からは「首相本人が(トランプ氏と)人間関係をつくるしかない。それをつくれていないことに責任を感じるべきだ」(日本維新の会の前原誠司共同代表)との指摘も出たが、普段、政府・自民に厳しく対峙(たいじ)することが多い党首たちからも好意的に受け止める声が上がった。れいわ新選組の山本太郎代表は「首相は国難と言われる状況で話し合っていく姿勢を示した」、共産党の田村智子委員長も「会談の呼びかけは適切だった」と述べた。

 記者団の取材に応じた首相は、「(トランプ氏と)直接話をするのが良いに決まっているが、国会日程、先方の都合もある。まずは電話会談を模索している」と説明。「何を話すかきちんと整理した上で臨みたい」と述べた。

透ける「政権浮揚」の思惑

 首相は想定を上回る米国の関税措置を「国難」と位置づけ、与野党の一致団結を訴えた。ただし、そこには参院選に向けた政権浮揚の思惑も透けて見える。

 商品券問題などで内閣支持率は大きく落ち込んでいるが、首相は国民生活の改善につながる政策を打ち出せていない。予算成立を受けて臨んだ1日の記者会見でも「物価高への対応」「最低賃金の引き上げ」などと掲げたが、具体策には踏み込めなかった。

 そこで起きたのが、今回の関税引き上げだった。石破政権にとっては、日本経済への打撃を回避しつつ、物価高対策も含む総合的な経済対策を堂々と示せる状況になったとの見方もできる。

 政府高官は「不測の事態に対応するため、大規模な経済対策が必要との主張は通る」と意気込む。仮に補正予算を組む場合、少数与党の国会においては野党の協力が欠かせないが、緊急事態であることが状況を有利にするとの計算も働く。

 野党は、政権の意図を理解したうえで対応を決めることになる。政局もにらんだ難しい判断が求められそうだ。

 今回の党首会談について、立憲幹部は「経済対策の必要性で(与野党が)一致したというアリバイ作りだ」と警戒を強める。今後も与野党協議には応じるが、政権が打ち出す経済対策の「足らざる部分」を指摘することで、国民にアピールしていく考えだ。

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