───都市南部『冒険者墓地』
都市南部に位置する第一墓地。通称『冒険者墓地』はその名の通り、多くの夢破れた冒険者達の骸が眠る。
雲一つない青い空の下、よく手入れされた質素な白い墓石が一定間隔に乱立するその様は綺麗を通り越して、いっそ不気味なように見えた。当然人は寄り付かず、静謐な空間がただ広がっている。
『相変わらず綺麗だねー。よく手入れされてる証拠だよ』
横に浮かびながら、目を細めてコロコロと笑うアーディに先程まで2人の間にあった不自然な静寂はどこにもない。
「それいつも言っていないか?まぁ俺は墓を守るだけで、手入れに関しては完全にハデスに任せてるからな。その言葉はハデスに送ってやってくれ」
『遺品目当ての泥棒さんも絶えない分、それから守ってるってことはこの綺麗な場所を作ってるのと同じだよ!」
恥ずかしげもなく、当然のように呆気からんと言い放つ。
ゼクス自身は気付いていないが、感謝を素直に受け取れない悪い癖がある。
アーディの一押しの言葉はゼクスのことをよく理解している表れだった。
「そうか……」
噛み締めるようにその一言を受け取るとゼクスは墓石の間に空いた狭い道を縫うように慣れた足を進める。
心なしかその速度は表情を隠すように、横にいたアーディを追い越す為早くなっていた。
『冒険者墓地』の中心にたどり着くと、そこは少し拓けており、小さな二階建ての小さな白い教会が建っている。
ほぼ行われない葬式を開く際の式場として機能する教会。そこが構成員実質一名の零細ファミリアである【ハデス・ファミリア】の
「ハデス!!居るか!?」
「おぉ〜ようやっと帰って来たか!!」
乱雑に扉を叩くと、慌てて建付けの悪い扉が不快な音を出しながら開かれ、中から好々爺然とした老人が顔を覗かせた。
「それで今回はまたなぁにをしでかしてきやんじゃ?」
いつもとは違いぼろぼろの布切れ同然となった
「少しダンジョンで石に躓いて派手に転んだ」
『そうそう【猪者】っていうすっごく大~きな石だったけどね!!』
「はぁ……やはりなんとなく面倒ごとな気はしておったが、想像よりスケールが違い過ぎるわ!!」
アーディの告発を聞き、老神は嘆くようにソファに沈み悶々とした声にもならないうめき声を出す。さながら本に出てくるようなゾンビのごとき姿にさすがにいたたまれなくなったので、急いで話題を変える。
「と、とりあえず久しぶりにステイタスが上がった予感がするから更新を頼めるか?」
「………わかった」
イスを抱え込むように座り、ハデスに背を向ける。
薄暗い部屋の中、恩恵が背中に刻まれていく。
「耐久がまぁまぁ上がっておるな。やはり【猪者】の一撃は相当こたえたようじゃな」
『うわ、これ耐久に関しては最大値いってるんじゃない?』
ゼクス・バーン
Lv.4
力:A870→A874
耐久:A861→A899
器用:E432→E451
敏捷:C678→C691
魔力:D521
耐異常:G
亡声:I
《魔法》
【クレオス・ビアッヘ】
・魂送魔法
【】
《スキル》
【
・発展アビリティ『亡声』の発現
・自身の死を知覚する
【
・臨死時における全能力値の超高補正
「能力値上昇は合計74か………オッタルを相手にしたのに変わらずしょっぱいな」
『たぶんこれ以上はさすがに器を昇華させないと厳しいねー』
渡された羊皮紙にどうしてもため息が漏れる。器の昇華の条件である偉業の達成は間違いなく満たしている相手だったが、どうやら肝心の戦闘の中身が偉業にはほど遠かったらしい。
正直なところ『暗黒期』以降はこの場所で墓守として仕事をしているくらいだからこれ以上力はいらないのだが。
「ため息ばかりついておると、幸せが逃げてゆくぞ。一先ず身体を休ませろ、儂はその間に次の
「………わかった」
ハデスに言われるとようやく身体が疲労を実感してきたのか、だんだんと意識が薄れていく。寝室に帰る気力もなく椅子に座ったまま、今夜は夢を見ずに済みそうだと安堵しながら、意識が途絶えた。