ダンジョンに【葬儀屋】が居るのは間違っているだろうか


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作:ノイマンⅡ
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第一話 冒険の裏側


アーディめちゃくちゃ可愛いのになんでみんな書かないんや……
せや……!!(投稿)


 生まれから、どこか他の子供たちとは違ったのです。扁平な場所にある田舎の村で、出産直前に死んだ母親の腑を食い破り、必死に生にしがみついて産まれてきました。

 

 髪色は鴉が濡れたような漆黒で、薄く開けられ光を灯した目もまた同じ色。輝く金色の長髪を持っていた母親とは似てもつかない色。

 

 初めは彼の親代わりとなった叔父と叔母は気味悪がっていましたが、時が経つにつれそれも薄れていきました。親で無くても、確かに本当の愛情を与えられて育った普通の子。

 

 惜しむべくはその生まれが特異だったことでしょうか。

 

 少年は成長するにつれ、『声』が聞こえるようになりました。周りに叔父も、叔母も誰も居なくても囁くような『声』は聞こえます。内容はハッキリとは聞き取れません。少年から話しかけても、『声』は変わらず同じ言葉を繰り返すだけ。

 

 

ーーー■■ください……

 

 

 叔父や叔母に迷惑を掛けない為にも、少年は『声』について黙っていました。ですが、時が経つにつれ『声』は大きくなる一方。当初は囁くようなか細い『声』がついに小声程度の大きさになります。

 

 

ーーー■きください……

 

 

 少年が生まれてから10年の月日が経った頃、『声』が増えていることに気付きました。いよいよもって煩くなり始め、夜も目が覚めてしまいます。眠れなくなった少年の深い隈や、よく崩すようになった体調を見た叔父と叔母は不信がり少年はようやく白状しました。

 

 『声』について聞いたはいいものの、その正体や対策など普通の田舎夫婦だった叔父・叔母には到底分かりませんでした。けど分からないなら、分かる者に聞けばいい。世界の中心、迷宮都市オラリオに住む全知零能の神々を尋ねることを叔父は勧めます。

 

 少年は家を出て、迷宮都市オラリオを目指しました。いくつもの集落や、街を経由して辿り着く頃にはついに普通の人の話し声程度に『声』は大きくなっていきました。祈る様に、縋る様に『声』たちは変わらず同じ言葉を繰り返します。

 

 

ーーー導きください……

 

 

 いよいよもって頭がおかしくなりそうだった少年は片っ端から門戸を叩き、聞き回りました。多くの場合、門番に弾き出されて終わり、街中で偶然出会えた神々は真面目に聞いても、はぐらかされるか、意味の分からない発言ばかり。

 

 最後の頼みで少年が訪れたのは、オラリオの夢破れた冒険者たちが眠る墓地の真ん中にひっそりと建っていた小さな教会だった。近づけば近づく程、『声』は増え、大きくなっていきます。

 

 扉を開き、少年の話を聞いた老神は『賢者』に頼み『声』を遮る魔法の掛かった道具を作って貰いました。

 

 少年は老神と『賢者』から与えられた魔法の道具により、ようやくあれほど煩かった『声』が止み、救ってくれたことを感謝し、老神と共に幸せにくらしたのでした。

 

 

◆◆◆

 

「はい、おしまい。来週も来てやるからちゃんといい子にしてろ」

 

 はーい!という子供たちの元気な返事を聞き、手作り感満載の絵本を閉じると、青年は地面に座っている間に付いた汚れを払いながら起き上がる。

 

 きゃっきゃっとはしゃぎながら離れていく、子供たちを後目にこの孤児院のシスターが近づいてくる。

 

「今日も態々ありがとうございます冒険者様!!ご支援だけでなく、子どもたちの世話まで……感謝致します!!」

 

「別に感謝されるほどのことじゃない。元々やってたやつの引き継ぎをしてるだけだ」

 

「それでもですよ……!!」

 

 心の底から感謝しているらしく、手を前に組みながら救世主でも見る眼差しでにじり寄って来るシスターをのらりくらりとかわす。

 まるで絵本に出てきた少年の様に綺麗な黒色の髪をした青年は隣に置いておいた同色のコートと銀槍を手に取り、シスターに別れを告げると、閑散としたダイダロス通りへと出て行った。

 

 

『むぅ〜今、シスターさんに鼻の下伸ばしてデレデレしてたでしょゼクス?』

 

「そんな訳ないだろう()()()()。大体、俺はお前が生前していたことを引き継いでいるだけだ。用がなければあのシスターには会ってさえ居ない」

 

『質問の答えになってないよ〜』

 

 辺りにはゼクス以外誰も居ない。だが、呆れた様に顔を横に向けるゼクスの目には薄らと淡い紺色の髪を揺らす少女が映っていた。

 

 かつて『暗黒期』と呼ばれる時代に『闇派閥』が張り巡らした悪辣な策により非業の死を遂げた少女、アーディ・ヴェルマが確かにそこに居た。

 

「やはりガキの相手は慣れん、なるべくやらないに越したことはないな」

 

『まーたそんなこと言って、ちゃんといいお兄ちゃんしてたよ?ずっとムスッとしてたのが玉に瑕だけど』

 

「そうか?ならいいが……」

 

『うわっ、私が言うのもなんだけど後半完全にスルーされたよ』

 

 シクシクと嘘泣きをしているその姿は到底死んでいるようには見えない。

 

「そんなことより、今日はダンジョンに………ッ!?」

 

『ん?もしかして『声』がした?』

 

「あぁ、だが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 『声』がしている方角、聳え立つバベルの塔をゼクスは見つめる。恐らく誰かが()()()()()()()()()()。『声』は死んだ者か、死に近しい人間から聞こえる。ダンジョンという命の危険が腐るほどある迷宮を内包する都市オラリオでは特別珍しいことでもない。

 

『ちょうど今からダンジョンに行くところだったし、ついでにちょっとだけでもいいから様子を見に行ってみない?』

 

 ね?とでも言わんばかりにアーディは両手を合わせ、顔を傾ける。それは果たして生前『正義』を志していたのからか、それとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はぁ……分かった。だが、間に合わなくても期待はするな」

 

『うん…!!ありがとう!!』

 

 根負けしたゼクスは大人しくダンジョンへの入り口、バベルへと駆け出した。

 

 

◆◆◆

 

 ーー迷宮(ダンジョン)9階層

 

 『声』のする方へと全速力で階層をlv.4の身体能力をふんだんに使い、駆け抜けて来たがあと一歩というところで思わぬ足止めを食らっていた。

 

 第一線級冒険者の1人であるゼクスは当然この程度の階層の怪物(モンスター)なら数秒程度で片付けられる。こんな階層で足を止めるなら桁違いの異常事態(イレギュラー)が必要だが、今回に限っては違った。

 

 ーー()()()()

 

 まるで直前に激しい戦闘があったような痕跡を残す広間(ルーム)。そこには1人の獣人が道を塞ぐ様に佇んでいた。

 

「なぜお前が俺の前に立ちはだかる【猛者(おうじゃ)】ッ!?」

 

「随分と久しいな【葬儀屋(アンダーテイカー)】。そうか、あの兎の『声』を聞いてやって来たか」

 

『あちゃー……よりにもよって急いでいる時に……』

 

  1人納得した様子を見せるオッタルに少しイラッと来るのをゼクスは抑える。

 

「知人としてかつての自分を少しずつ取り戻していることとを嬉しく思う。だが、ここはこれ以上通せん。何よりお前が相手ならな」

 

 

(ーー俺が行くとマズいことでもあるのか…?)

 

 思案する。先程の口振りだとオッタルは既に何者かを通している。激しい戦闘の痕跡から察するに今のオッタルを無理矢理退けるのは、恐らくもう一つの都市最強ファミリアの【ロキ・ファミリア】のみ。

 

 あの兎とは誰を指しているのかは分からないが、恐らく言い分からこの先の『声』の発生元だと思われる。最も加速度的に『声』が小さくなっていることから、【ロキ・ファミリア】が来たことで命の危機はーーーッ!?

 

『前!!!!』

 

 突如、眼前に迫り来る大剣をアーディからの忠告で寸前に認識し、背後に飛び退く。

 

「考え事か……?感心しないな……この先にいる者のことなら案ずることはない。不本意ながら、既に【ロキ・ファミリア】が向かった」

 

 銀槍を構え、オッタルを睨みつける。アーディの忠告が無ければ手痛いでは済まないダメージを負っていたかもしれない。

 

「いつになくよく喋るなオッタル。これもお前の所の女神の指図か?」

 

「あぁ……久しぶりに知り合いに会えて少々はしゃいでいるのかもしれん」

 

「【ロキ・ファミリア】を通しておきながら、なぜ俺を阻む?」

 

「例え冒険をしているだけであっても、命の危機に瀕しているならお前は間違いなく飛び込み、救いに行くだろう」

 

「何よりあのお方も今の錆びついたお前のことをさぞ嘆いていた。その錆を落とせるなら俺が戦うには十分すぎる理由だ!!」

 

 都市最強が地面を抉るほどの威力で蹴り弾丸の如き速度で迫ってきた。




あれ?なんか気付いたらオッタルと戦ってるんだが!?手が滑った……
というわけでベルくんの初めての冒険の裏側です。
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