ある日のベルの鍛錬その1
アルフィア「ベル。今から私たちがお前に向かって石を投げる。お前はそれを目隠しをした状態でその場から1歩も動かずに交わし続けろ」
ベル「無理だよお義母さん!?」
アルフィア「黙れ。英雄になるというのならこの程度難なくクリアしてみせろ」
ザルド「すまんベル・・・俺たちは無力だ・・・」
ベル「叔父さん!?」
アルフィア「ではいくぞ」
ベル「ま、待って──────」
第1の試練─────四方八方からによる拳大の石の投擲(手加減していてもLv5~Lv8冒険者によるもの)を目隠しした状態で一歩も動かず回避。初挑戦ベル・クラネル7歳、初回クリア9歳。なお、クリアしてからは石はより大きくなり投擲スピードも上げて再挑戦させるものとする。
◆◇◆◇◆◇◆
アミッド、エイナ、フィルヴィスからベルへの連続の説教が終わった翌日。ベルはヘスティアにステータスの更新をお願いしていた。
「まったく、いくらアルフィアくん達に鍛えられているからって無茶は良くないぜベルくん・・・」
「すみません神様・・・」
ヘスティアは上裸になってソファの上でうつ伏せになっているベルの背中に乗って恩恵の更新を行いながら軽めの注意をする。散々説教されたことで参っていたベルは素直にその言葉を聞いていた。
「よし、これでベルくんのステータス更新完了だ」
ヘスティアはベルの背中から降りてステータスの写しを羊皮紙に書き写してからそれをベルに渡した。
ベル・クラネル
【ステータス】
Lv.1
力:G271→E421
耐久:E470→C697
器用:D532→B775
敏捷:C634→S985
魔力:H187→E411
【スキル】
双神物語(デウスストーリア)
・ゼウスとヘラの血縁者の証明
・魔法スロットに関係なくゼウスとヘラの眷属の魔法を使用することができる使用できる
・ゼウスとヘラの眷属のスキルを使用することができる。
現在使用可能スキル
・神饌恩寵(デウス・アムブロシア)
・流血闘術(ブラッディ・コンバット)
ブレングリード、斗流血法・シナトベの血闘術が使用可能
・致命兎魂(ヴォーパル・ソウル)
ヴォーパル刃術を初めとしたスキルの使用が可能
現在使用可能魔法
・サタナス・ヴェーリオン 詠唱式:【福音(ゴスペル)】
・エアリアル・ブレード 詠唱式:【切り裂け(ジャッジ)】
・ケラウノス 付与魔法 詠唱式:【駆け抜けよ(アクセル)】
[[rb:大英雄願望 > ヘラクレイノス]]
・早熟する
・英雄への憧れが続く限り効果持続。
・英雄への憧れの強さによって効果向上。
・全武器の使用適性向上
・致命傷回避(1日最大12回まで)
・能動的行動アクティブアクション に対するチャージ実行権。
・発動時、周囲の味方の戦意高揚
【魔法】
治癒ノ鐘音(サナトゥース・コーリング)
詠唱式:【傷ついた英雄、怯える民、失われた箱庭、絶望を乗り越え立ち上がれ。我が力、我が願いををもって癒せぬ者さえも癒しつくすることをここに誓う。さぁ顔を上げよ、我らが戦士たちよ、我が鐘の音を聞き、その傷を癒せ。】
傷の治療、体力回復、状態異常及び呪詛の解除。生まれ持った病をも軽減させる。詠唱完了時ベルを中心に地面に魔法陣が浮かび上がりその魔法陣にいるベルが味方と認めたもの達を治す。
フャイアボルト
・速攻魔法。
・戦意によって威力上昇。
(うわぁ・・・スキルの影響があるとはいえ伸びすぎじゃないかな?これは格上のミノタウロスを倒した影響もあるのかな?)
ヘスティアは他の子たちとは明らかに違うベルのステータスの伸びに少しだけ引いていた。《大英雄願望》という成長促進スキルなんてベル以外の所有者は聞いたこともない[[rb:希少 > レア]]スキルの存在があるとしても飛躍と言っても過言ではないステータスの上昇ははっきり言って異常である。
「あの、神様・・・。ランクアップは・・・」
ベルはステータスの伸びに最初は驚いていたものの、アルフィアやザルドを始めとした頂点たちの存在を知っているためにそこまで驚いていなかった。それよりも今回のステータス更新でランクアップが可能になっているかどうかが気になっていた。しかしベルの思いは届かずヘスティアは申し訳なさそうに答える。
「残念だけど今回はないね。まぁ冒険者になってたった2週間でランクアップなんて流石に前代未聞すぎるよ」
「そうですか・・・」
強化種含めた2匹のミノタウロスを討伐したことでランクアップできるかと思ったがどうやらまだ偉業が足りなかったようでランクアップに至らなかったようだ。ベルは内心がっかりしていたがそれに気づいたヘスティアはベルに元気を出させようと声をかける。
「そんなに落ち込む必要ないよベルくん。今回は残念だったけどまだベル君のステータスは伸び代があるんだから次に向けて頑張ればいいのさ!」
「神様・・・!はい、僕頑張ります!」
ベルはヘスティアの励ましの言葉に気分を取り戻したのか元気よく返事をした。
「とはいえ今日明日はアミッドくんにも言われているだろうけど絶対安静だからダンジョンに行くのはナシだよ。まぁ軽い運動程度ならいいけどね」
「はい・・・」
アミッド、エイナ、フィルヴィスから有難い説教を受けたベルはヘスティアのその言葉にシュンとなる。その際にベルの頭の上にうさ耳が生えてペタンと垂れるのが見えた気がしたヘスティアはウッ!と胸きゅんのあまりに右手で心臓を抑えそうになったが何とか耐えた。
「そ、それじゃあベルくん。僕はちょっと孤児院の子供たちの様子を見てくるからゆっくりしてるんだよ!!」
「は、はい。いってらっしゃい神様」
ヘスティアはベルの可愛らしさにノックダウン寸前になりながらも何とか耐えてヘスティアが管理している孤児院の様子を見に行くのだった。それを見送ったあとベルは言われた通り休もうとしたところであることに気づいた。
「休みって何をすればいいんだろう・・・」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
オラリオに来てからダンジョンとギルド、たまにポーションを求めてミアハファミリアとディアンケヒトファミリアに訪れたくらいでオラリオのことをあまり知らないベルはどうしようかと悩み、とりあえず壊れた武器の補充も兼ねて同じファミリアの団員である佐藤・カズマに初心者でも問題なく買える武具屋を教えてもらいバベルの中にあるヘファイストスファミリアが運営している武具屋、その中でも新人鍛冶師の商品が並んでいるテナントに来ていた。
「ほわぁ・・・」
初めて来た武具屋を前にベルは色んな武器や防具に目を輝かせながら一つ一つ手に取ってじっくりと見ていた。それを店員や他の冒険者たちがホッコリとしながら眺めていた。今回ベルが購入を考えているのは前回のミノタウロスとの戦闘で壊れたギルドからの支給品である短剣とナイフの代わり、それから戦闘の幅を広げるために槍や片手斧、手甲など色々と探してみることにした。しばらくの間色んな武器を手に持って探していたベルだったが所持金の問題から今回は手甲と短剣、三本のナイフを購入することにした。
「これからどうしよう・・・」
武器の補充を終えたベルは次に何をするか悩んでいた。ポーションの補充も昨日のアミッドとの説教の際にアミッドから幾つかポーションを貰ったことで買う必要は無いし、それ以外でダンジョン探索に必要なものもすぐに買う必要はないため補給はまだしない。故にベルは手持ち無沙汰になっていた。どうするか悩んでいると突然ぶっとい腕にその身体を抱えあげられた。
「ふぇ?」
「あんたがベル・クラネルだね?悪いけどちょっと一緒に来てもらうよ」
着物姿の筋骨隆々のオカマ───シヴァファミリアの団長であるLv7[[rb:冒険者 > 破壊神]]サイゴウ・特盛がニカッ!と笑いながら声をかけているが、ベルは突然のオカマによる連行に頭を真っ白にさせていたが次にサイゴウから語られた内容に頭をブチ切れそうになった。
「ザップの奴が貯めたツケをアンタが今日1日働いて返してくれるんだってね。兄貴分の代わりに働くなんて殊勝な弟分じゃないか」
(あの腐れドブカス、いつか絶対殺す)
ベルは兄弟子であるザップ・レンフロがまたベルにツケを払わせようとしたことに気づき殺意が高まる。かつてオラリオに来る前にベルの故郷で斗流血法の創始者である裸獣汁外衛賤厳から斗流血法の修行をつけられた際に、同じく斗流血法を教えられていた兄弟子であるザップによる嫌がらせは毎日のようにされたのは当たり前。ザップによる女性関係のトラブルの後始末、ギャンブルでの借金の保証人をベルにして借金を払わせたりなどザップのやらかしを色々と解決させられた。故にベルはザップだけ辛辣に扱うし殺意を抱いていた。
「あの、何か勘違いを────」
「なぁにあんたのその可愛らしさならうちの店のNo.1も夢じゃないさベル子」
「いや話を聞いて────」
ベルはサイゴウに話を聞いてもらおうとしたが、その声も残念ながら届かずベルはベル子としてこれからサイゴウが経営しているかまっ子倶楽部での労働が決定したのだった。なおベルがサイゴウに連れ去られていく姿を見ていたものたちの多くはオカマによって出荷される白兎を彷彿とさせると後に語られるのだった。
そしてサイゴウによってかまっ子倶楽部に連行されたベルはそこで大量のオカマたちによってあっという間に女装されてしまいそのまま働かされることになったのだが・・・
「ベル子ちゃーん!お酒のおかわり!!」
「は、はい!!」
「ベル子!そっちのテーブル片して次のお客さんのご案内よ!!」
「はい!!」
「ベル子!こっち来てアゴ美たちと踊りな!!」
「はい!!」
なんというか思った以上に適応していた。サイゴウと同じシヴァファミリアのアゴ美含めたオカマ集団によってあっという間に女装させられたベル改めベル子(イメージはダンメモの女装ベルに着物を着せた姿)はそのままお店の接客をさせられた。ザップの借金返済で色んな場所で働いた経験のあるベルはどんな場所でも働けるようになっていたことでオカマたちが溢れるかまっ子倶楽部でも顔色変えず普通に働けていた。さらに元から女よりの顔立ちをしているショタのベルが女装していることで来店した冒険者や神からあっという間に人気になり、この日のかまっ子倶楽部は大繁盛していた。
「凄いわねベル!あんたならかまっ子倶楽部NO.1も夢じゃないわよ!!」
「遠慮します」
「ふっ、これは手強いライバルが生まれたわね・・・っ!」
「なりません」
「ベル子、あんたさえ良かったらこのままかまっ子倶楽部の正式スタッフに───」
「嫌です」
サイゴウやアゴ美たちシヴァファミリアのオカマ集団からのスカウトを丁寧に断るベル。何が悲しくて英雄になりたくてオラリオに来たのにオカマ集団のNo.1にならなきゃいけないのだ。その後もベルはアゴ美たちからの熱烈な勧誘を断り、ベル子に魅了された神や冒険者たちからの強烈なラブコールから逃げるなどしながらベルが頑張って働いていると日は暮れすっかりと夜になっていた。
「お疲れベル子、思った以上にあんたのおかげで今日は稼がせてもらったよ。これはあんたの給金だよ」
「あ、ありがとうございます・・・」
昼から夜まで働き詰めだったベルはヘロヘロになりながらサイゴウから僅かばかりの給金を受け取るのだった。本来ならばザップのツケの返済だけで終わり、給金まで払う予定はなかったのだが想像以上にベルの働きが良かったためにサイゴウは多少色をつけてベルに給金を支払うことにした。それは普通の店でアルバイトするよりも多く稼げており弱小冒険者か1日ダンジョンに籠っているよりも稼げていた。
「困った時は私たちに声をかけな。これでもこのオラリオじゃそれなりの力はあるからね」
「わ、わかりました・・・」
ベルはサイゴウの言葉を聞きながら疲れた体を動かしてフラフラと歩きながら帰路につくのだった。なお、疲れすぎていたベルは着替えることもすっかり忘れてウィッグをつけ着物を着たまま帰っていたために道行く神や冒険者たちの視線を集め、後日かまっ子倶楽部に《白兎の美女》がいると噂が流れるのだった。
────そしてこの後、ベルは現在のオラリオの中で力がある四つのファミリアの1つと出会うことになるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ベルがかまっ子倶楽部で労働させられていた頃、今のオラリオで最強の地位を持つオーディン、ロキ、フレイヤ、アトラス、シヴァの5つのファミリアの内の一つであるロキファミリアの拠点である黄昏の館の団長室にてロキファミリアの団長フィン・ディムナは幹部であるアイズからの報告に頭を悩ませていた。
「Lv1でミノタウロスの単独撃破、それも強化種を含めた2匹を・・・」
フィンは最初はなんの冗談かと思ったが幹部であるアイズとベートの2人がその戦いの様子を見ていたのと、ディアンケヒトファミリアの団長であるアミッドからもミノタウロスを倒した少年がLv1であることも確認していた。それは多くの冒険者を見てきたフィンにとって前代未聞の偉業と呼べる行為だった。最初は神々の言うチート行為と呼ばれる《改造》を疑ったがミノタウロスを倒した少年、ベル・クラネルの所属ファミリアを知ってその可能性はほぼないと判断した。
「まさかドチビの所の子やとはなー」
「神ヘスティアの眷属ということならば少なくとも怪しいことはしていないだろうからな」
主神であるロキと副団長であるリヴェリア・リヨス・アールヴはベル・クラネルは改造された眷属ではないと判断していた。それと言うのもかつては大規模ファミリア候補に上がるほど優秀な眷属を抱えていたヘスティアファミリアの主神である女神ヘスティアは神界と下界のその両方からその高い神格と善神として認められており、さらに孤児院経営や炊き出し、はたまた他ファミリアの手助けや過去にはゼウスやヘラなどのファミリア同士の騒動を仲裁する役目を担うなど行っていたことから神や冒険者、オラリオ市民たちから慕われていた。
7年前の闇派閥の起こした大抗争の際に副団長であるエルフのキシャールを始め当時の団長であるLv7のアマンダとフィルヴィス、銀時と当時のLv1冒険者たちを除いたヘスティアファミリアの団員たちが死亡あるいは冒険者として活動ができないほどの後遺症を受けての引退、そこに追い打ちをかけるかのように団長であるアマンダの引退によってヘスティアファミリアは中規模ファミリアから小規模ファミリアにまで衰退した。それでもヘスティアの善性がありファミリアが壊滅することはなくそれどころか多くのファミリアやオラリオ市民たちの協力もあって立ち直ることが出来、今では中規模、小規模のファミリアたちをまとめるファミリア連合の顔にまでなっていた。
そんなヘスティアが自分の眷属を改造するなどするわけが無い。険悪な仲であるロキですらそれは認めざるを得ない事実であった。
「恐らくは何らかの希少スキルを持っているか、恩恵を刻む前に何らかの特殊な訓練を受けていたのだろうね」
「まぁそれが妥当やろうな。はぁーそんなこがドチビんとこにいくとかなー」
フィンとロキはベルのことをそう判断して考え、もし可能だったらロキファミリアに所属して欲しかったと小さな欲を出していた。それからフィンたちはロキファミリアの失態で逃がしたミノタウロスを討伐してくれたベル・クラネルに対してどのような礼をすべきか考えているといきなりドアを蹴破る勢いで開けてザップが乱入してきた。
「往生~せいやあああああフィンーーーー!!」
ザップはそう叫びながらフィンに向かって襲いかかるが、フィンは足元に置いてあるザップ撃退用の刃抜きをした槍を手に取ってそのままザップの体を滅多打ちにする。
「へぷっ!ぶぺっ!ぶんっ!」
一級冒険者でなければ目で追うのが困難な連続攻撃を繰り出したフィンはザップを床に弾き飛ばすと何事も無かったかのようにロキとリヴェリアに向き直る。ザップによるフィン襲撃はフィンの撃退まで含めてロキファミリアの名物となっているため新人団員以外は気にすることも無くなっていたのだった。
「───さて、ベル・クラネルへの謝礼は何にすべきか」
「Lv1って話しやし純粋に武器かポーション、あるいはそれ相応の賠償金がええんとちゃうか?」
「しかし彼はヘスティアファミリアの団員だ。下手な対応をしたらファミリアの沽券にも関わるぞ」
あーでもないこーでもないとフィンたちが話し合っていると気絶から目覚めたザップがヨロヨロと立ち上がりながらフィンに追撃を仕掛けようとしたところでベルの名前が上がっていることに気づき動きを止めた。
「あん?なんでお前らベルのことで話し合ってんだ?」
「おや、ザップは彼のことを知ってるのかい?」
「知ってるも何もアイツは俺と同じ師匠の元で師事を受けていた弟弟子見てぇなもんだよ」
ザップから語られたその日とこにフィンたちは驚きのあまり目を見開く。ザップの師匠はかつてのオラリオ最強ファミリアであるゼウスファミリアに所属していたLv9冒険者《裸獣汁外衛賤厳》である。そんな彼に支持を受けていたザップは元からの才能もあっただろつがあっという間にLv6にまで上り詰めるほどの実力を持つに至ったのだ。そんなザップの師匠に師事されたベルが弱いわけもないとフィンたちは多少の納得をしたがその後にザップの口から語られたベルに対して行った数々の悪行とついさっき酒場でのツケをベルに押し付けたことを聞いたフィンたちはその場でザップをしばき倒してからベルへの謝罪をどうするかさらに頭を悩ませるのだった・・・