尹錫悦大統領弾劾審判宣告要旨全文

宣告が終わった後の憲法裁判所大審判廷


今から2024憲ナ8大統領尹錫悦弾劾事件に対する宣告を始めます。

まず、適法要件に関して見てみます。


➀ この事件の戒厳宣布が司法審査の対象になるかについて見ます。


高位公職者の憲法および法律違反から憲法秩序を守護しようとする弾劾審判の趣旨などを考慮すれば、この事件の戒厳宣布が高度な政治的決断を要する行為だとしても、その憲法及び法律違反有無を審査することができます。


➁ 国会法司委の調査なしにこの事件の弾劾訴追案を議決した点について見ます。


憲法は国会の訴追手続きを立法に任せていて、国会法は法司委で調査するかどうかを国会の裁量と規定しています。 従って、法司委の調査がなかったとしても、弾劾訴追の議決が不適法だとは言えません。


➂ この事件の弾劾訴追案の議決が一事不再議の原則に違反するかどうかについて見ます。


国会法は否決された案件を同じ会期中に再発議できないよう規定しています。 被請求人に対する第1次弾劾訴追案が第418回定期会の会期に投票不成立となりましたが、この事件の弾劾訴追案は第419回臨時会の会期中に発議されましたので、一事不再議の原則に違反しません。


一方、これについては、他の会期にも弾劾訴追案の発議回数を制限する立法が必要だという裁判官鄭亨植の補足意見があります。


➃ この事件の戒厳が短時間内に解除され、これによる被害が発生しなかったため、保護利益が欠陥になったかどうかについて見ます。


この事件の戒厳が解除されたとしても、この事件の戒厳によってこの事件の弾劾事由はすでに発生していますので、審判の利益が否定されるとは見られません。


➄ 訴追議決書で内乱罪など刑法違反行為で構成したことを弾劾審判請求以後、憲法違反行為に包摂して主張した点について見ます。


基本的な事実関係は同一に維持しながら適用法条文を撤回·変更することは訴追事由の撤回·変更には該当しませんので、特別な手続きを経なくても許されます。


被請求人は訴追事由に内乱罪関連の部分がなかったら議決定足数を充足できなかっただろうとも主張しますが、これは仮定的主張に過ぎず客観的に後押しする根拠もありません。


➅ 大統領の地位を奪取するために弾劾訴追権を乱用したという主張について見ます。


この事件の弾劾訴追案の議決過程が適法であり、被訴追者の憲法又は法律違反が一定水準以上に疎明されましたので、弾劾訴追権が乱用されたとは言えません。


それならこの事件の弾劾審判請求は適法です。


一方、証拠法則と関連して、弾劾審判手続きで刑事訴訟法上の伝聞法則を緩和して適用できるという裁判官李美善・金炯枓の補足意見と、


弾劾審判の手続きで、今後は伝聞法則をより厳格に適用する必要があるという裁判官金福馨・趙漢暢の補足意見があります。


次に、被請求人が職務執行において憲法や法律を違反したのか、被請求人の法違反行為が被請求人を罷免するほど重大なものなのかについて見てみます。


まず、訴追事由別に見てみます。


① この事件の戒厳宣布について見ます。


憲法及び戒厳法によると、非常戒厳宣布の実体的な要件の一つは「戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態で、敵と交戦状態にあるか、社会秩序が極度に撹乱され、行政および司法機能の遂行が顕著に困難な状況が現実的に発生しなければならない」ということです。


被請求人は、野党が多数議席を占めた国会の異例の弾劾訴追推進、一方的な立法権行使及び予算削減の試みなどの専横により、上記のような重大な危機状況が発生したと主張します。


被請求人の就任後、この事件の戒厳宣布前まで国会は行政安全部長官・検事・放送通信委員会委員長・監査院長などに対して計22件の弾劾訴追案を発議しました。 これは、国会が弾劾訴追事由の違憲·違法性について熟考しないまま、法違反の疑惑のみに基づき、弾劾審判制度を政府に対する政治的な圧迫手段として利用したという懸念を生みました。


しかし、この事件の戒厳宣布の当時には検事1人及び放送通信委員会委員長に対する弾劾審判手続きだけが進行中でした。


被請求人が「野党が一方的に通過させ問題がある」と主張する法律案は、被請求人が再議を要求したり公布を保留して、その効力が発生していない状態でした。


2025年度の予算案は2024年の予算を執行していたこの事件の戒厳宣布の当時の状況にいかなる影響も及ぼせず、上記の予算案に対して国会予算決算特別委員会の議決があっただけで、本会議の議決があったわけでもありません。よって、国会の弾劾訴追・立法・予算案審議などの権限行使がこの事件の戒厳宣布の当時、重大な危機状況を現実的に発生させたとは言えません。


国会の権限行使が違法·不当であっても、憲法裁判所の弾劾審判、被請求人の法律案再議要求など、通常の権力行使方法で対処できますので、国家緊急権の行使を正当化することはできません。


被請求人は不正選挙疑惑を解消するためにこの事件戒厳を宣布したとも主張します。しかし、何らかの疑惑があるというだけで、重大な危機状況が現実的に発生したとも言えません。


また、中央選挙管理委員会は第22代国会議員選挙の前にセキュリティの脆弱性に対してほとんど措置したと発表しており、事前·郵便投票箱の保管場所のCCTV映像を24時間公開し、開票過程に手検票制度を導入するなどの対策を用意したという点でも被請求人の主張は妥当だと言えません。


結局、被請求人が主張する事情を全て考慮しても、被請求人の判断を客観的に正当化できるほどの危機状況がこの事件の戒厳宣布の当時に存在したとは見られません。


憲法と戒厳法は非常戒厳宣布の実体的要件として、「兵力で軍事上の必要に応じたり、公共の安寧秩序を維持する必要と目的があること」を求めています。


しかし、被請求人が主張する国会の権限行使による国政麻痺状態や不正選挙疑惑は、政治的·制度的·司法的手段を通じて解決すべき問題であり、兵力を動員して解決できるものではありません。


被請求人はこの事件の戒厳が野党の専横と国政危機状況を国民に知らせるための「警告性戒厳」又は「訴え用戒厳」だと主張しますが、これは戒厳法が定めた戒厳宣布の目的ではありません。


また、被請求人は戒厳宣布にとどまらず、軍警を動員して国会の権限行使を妨害するなどの憲法及び法律違反行為に進みましたので、警告性又は訴え用の戒厳という被請求人の主張を受け入れられません。


それなら、この事件の戒厳宣布は非常戒厳宣布の実体的な要件を違反したものです。


次に、この事件の戒厳宣布が手続き的な要件を遵守したかについて見てみます。


戒厳の宣布及び戒厳司令官の任命は国務会議の審議を経なければなりません。


被請求人がこの事件の戒厳を宣布する直前に、国務総理及び9人の国務委員に戒厳宣布の趣旨を簡略に説明した事実は認められます。


しかし、被請求人は戒厳司令官などこの事件の戒厳の具体的な内容を説明せず、他の構成員に意見を述べる機会を与えなかった点などを考慮すれば、この事件の戒厳宣布に関する審議が行われたとも見難いです。


その他にも、被請求人は国務総理と関係国務委員が非常戒厳宣布文に副署しなかったにもかかわらずこの事件の戒厳を宣布し、その施行日時・施行地域及び戒厳司令官を公告せず、遅滞なく国会に通告することもありませんでしたので、憲法及び戒厳法が定めた非常戒厳宣布の手続き的要件を違反しました。


② 国会に対する軍警投入について見ます。


被請求人は国防部長官に国会へ軍隊を投入するよう指示しました。


よって、軍人たちはヘリなどを利用して国会の境内に進入し、一部は窓ガラスを割って本館の内部に入ったりもしました。


被請求人は陸軍特殊戦司令官などに「議決定足数が満たされていないようなので、ドアを壊して入って中にいる人員を引っ張り出せ」などの指示をしました。


また、被請求人は警察庁長に戒厳司令官を通じてこの事件の布告令の内容を知らせ、直接6回の電話をしたりもしました。よって、警察庁長は国会出入りを全面遮断するようにしました。


このため、国会に集まっていた国会議員の一部は塀を越えなければならなかったか、入れませんでした。


一方、国防部長官は必要時に逮捕する目的で国軍防諜司令官に国会議長、各政党の代表など14人の位置を確認するよう指示しました。被請求人は国家情報院1次長に電話して国軍防諜司令部を支援するように言い、国軍防諜司令官は国家情報院1次長に上記の人物に対する位置確認を要請しました。


このように被請求人は軍警を投入して国会議員の国会出入りを統制する一方、彼らを引っ張り出すよう指示することで国会の権限行使を妨害したため、国会に戒厳解除要求権を付与した憲法条項を違反し、国会議員の審議·表決権、不逮捕特権を侵害しました。


また、各政党の代表などに対する位置確認の試みに関与したことで、政党活動の自由を侵害しました。


被請求人は国会の権限行使を防ぐなど政治的な目的で兵力を投入することで、国家安全保障と国土防衛を使命として国のために奉仕してきた軍人たちが一般市民と対峙するようにしました。


これに対し、被請求人は国軍の政治的中立性を侵害し、憲法による国軍統帥義務を違反しました。


③ この事件の布告令発令について見ます。


被請求人はこの事件の布告令を通じて国会・地方議会・政党の活動を禁止することで、国会に戒厳解除要求権を付与した憲法条項、政党制度を規定した憲法条項と代議民主主義、権力分立原則などを違反しました。


非常戒厳下で基本権を制限するための要件を定めた憲法及び戒厳法条項、令状主義を違反して国民の政治的基本権、団体行動権、職業の自由などを侵害しました。


④ 中央選挙管理委員会に対する押収捜索について見ます。


被請求人は国防部長官に、兵力を動員して選管の電算システムを点検するよう指示しました。 これに伴い、中央選管の庁舎に投入された兵力は出入統制をしながら当直者の携帯電話を押収し、電算システムを撮影しました。


これは選管に対して令状なしに押収·捜索をするようにして令状主義を違反したものであり、選管の独立性を侵害したものです。


⑤ 法曹人に対する位置確認の試みについて見ます。


先に申し上げたように、被請求人は必要時に逮捕する目的で行われた位置確認の試みに関与しましたが、その対象には退任したばかりの元最高裁判所長及び元最高裁判官も含まれていました。


これは現職裁判官たちにいつでも行政府による逮捕対象になりうるという圧力を受けさせますので、司法権の独立を侵害したものです。


これまで見てきた被請求人の法違反行為が被請求人を罷免するほど重大なものなのかについて見てみます。


被請求人は、国会との対立状況を打開する目的でこの事件の戒厳を宣布した後、軍警を投入して国会の憲法上の権限行使を妨害することで、国民主権主義及び民主主義を否定し、兵力を投入して中央選挙管理委員会を押収·捜索するなど、憲法が定めた統治構造を無視し、この事件の布告令を発令することで、国民の基本権を広範囲に侵害しました。 このような行為は法治国家原理と民主国家原理の基本原則を違反したもので、それ自体で憲法秩序を侵害し、民主共和政の安定性に深刻な危害を及ぼしました。


一方、国会の迅速な非常戒厳解除要求決議ができたのは、市民の抵抗と軍警の消極的な任務遂行のおかげでしたので、これは被請求人の法違反に対する重大性の判断に影響を及ぼしません。


大統領の権限はあくまでも憲法によって与えられたものです。 被請求人は最も慎重に行使されるべき権限である国家緊急権を憲法で定めた限界を超えて行使し、大統領としての権限行使に対する不信を招きました。


被請求人が就任して以来、野党が主導し異例に多くの弾劾訴追により、複数の高位公職者の権限行使が弾劾審判中に停止されました。


2025年度の予算案に関して、憲政史上初めて国会予算決算特別委員会で増額なしに減額についてのみ野党単独で議決しました。


被請求人が樹立した主要政策は野党の反対で施行できず、野党は政府が反対する法律案を一方的に通過させ被請求人の再議要求と国会の法律案議決が繰り返されたりもしました。


その過程で被請求人は、野党の専横で国政が麻痺し国益が顕著に阻害されていると認識し、これを何とか打開しなければならないという重大な責任感を感じるようになったものとみられます。


被請求人が国会の権限行使が権力乱用だとか国政麻痺を招く行為だと判断したことは政治的に尊重されなければなりません。


しかし、被請求人と国会の間で発生した対立は一方の責任に属するとは考え難く、これは民主主義の原理によって解消されるべき政治の問題です。 これに関する政治的見解の表明や公的意思決定は、憲法上に保障される民主主義と調和する範囲で行われなければなりません。


国会は少数意見を尊重し、政府との関係で寛容と自制を前提に対話と妥協を通じて結論を導き出すよう努力すべきでした。


被請求人も国民の代表である国会をガバナンスの対象として尊重すべきでした。


にもかかわらず、被請求人は国会を排除の対象にしましたが、これは民主政治の前提を崩すことで民主主義と調和するとは考え難いです。 被請求人は、国会の権限行使が多数の横暴だと判断したとしても、憲法が予定した自力救済策を通じてけん制と均衡が実現できるようにすべきでした。


被請求人は就任した時から約2年後に行われた国会議員選挙で被請求人が国政を主導するよう国民を説得する機会がありました。 その結果が被請求人の意図に符合しなかったとしても、野党を支持した国民の意思を排除しようとする試みをしてはなりませんでした。


それにもかかわらず、被請求人は憲法と法律に違反してこの事件の戒厳を宣布することにより、国家緊急権乱用の歴史を再現して国民を衝撃に陥れ、社会·経済·政治·外交の全分野に混乱を引き起こしました。


国民皆の大統領として、自分を支持する国民を超え、社会共同体を統合させるべき責務に違反しました。


軍警を動員して国会など憲法機関の権限を毀損し、国民の基本的人権を侵害したことで、憲法守護の責務を破り、民主共和国の主権者である大韓国民の信任を重大に裏切りました。


結局、被請求人の違憲·違法行為は国民の信任を裏切ったものであり、憲法守護の観点から容認できない重大な法違反行為に該当します。


被請求人の法違反行為が憲法秩序に及ぼした否定的影響と波及効果が重大ですので、被請求人を罷免することによって得る憲法守護の利益が大統領罷免に伴う国家的損失を圧倒するほど大きいと認められます。


これにより、裁判官全員の一致した意見で主文を宣告します。


弾劾事件ですので、宣告の時刻を確認します。 今の時刻は午前11時22分です。


主文。被請求人大統領尹錫悦を罷免する。


これで宣告を終わります。


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https://www.youtube.com/live/1jRkkcaT-sQ?si=d64zy6tZ3O4Ggnsn

宣告の映像です。宣告要旨を読む人物は憲法裁判所長権限代行の文炯培裁判官です。


結果だけでなく、訴追事由5つもそれぞれ全員一致で認められました。

弾劾審判は主文を読んだ瞬間に効力が発生しますので、尹前大統領は2025年4月4日11時22分をもって大統領職を失いました。

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