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急増!警察官などかたる詐欺 AIを悪用 映像を合成しビデオ通話
急増している詐欺被害。特殊詐欺やSNSを悪用した投資詐欺などの被害の総額は、去年、前年の2倍を超える2000億円近くにのぼっています。なかでも今急増しているのが詐欺の犯人が警察官などの捜査員役としてビデオ通話に姿を現す手口で、別人の顔を合成するAIなどの技術も悪用され、被害の拡大が懸念されています。
【動画解説】6分30秒
警察庁によりますと、去年1年間に国内で確認された「特殊詐欺」の被害は721億5000万円と、これまでで最も多くなりました。
さらにSNS型の「投資詐欺」や恋愛感情を抱かせて資産をだまし取る「ロマンス詐欺」などを含めた詐欺被害の総額は前年の2倍以上の1990億円にのぼり、深刻な状況になっています。
ミャンマーからも さらなる被害拡大の懸念
捜査関係者によりますと、ミャンマーで摘発された犯罪拠点で特殊詐欺に加担させられ、現地当局に保護された日本人の高校生2人はいずれも「警察官をかたった特殊詐欺の電話役をしていた」と話しています。
「警察官の制服を着て、顔はAIで変えて、ニセの逮捕状を見せる手口だった」などと証言しているということです。
詐欺グループの拠点が世界各地に広がり、最新技術が悪用されるようになっていて被害がさらに拡大する懸念も高まっています。
急増 警察官かたる新手口とは
なかでも今急増しているのが特殊詐欺の犯人が警察官など捜査員役で電話に登場する手口です。
去年全国で4192件と、おととしに比べて3000件以上増加。
被害額は特殊詐欺全体の5割以上に当たるおよそ371億円にのぼりました。
ことしに入ってからの被害も、1月と2月だけで少なくとも100億円を超えています。
音声通話による以前からの手口に加え、最近はLINEなどのビデオ通話で、捜査員役の犯人が姿を現し、ニセの令状などを示して送金を指示してくる手口が増えています。
顔を加工したり、別人の顔を合成したりするAIなどの技術が悪用されているということです。
「警察官」や「検事」名乗り “顔出し”で
最新技術を悪用した詐欺とはどんなものなのか。
ビデオ通話を使った詐欺で100万円をだまし取られた都内の20代の男性が手口を証言しました。
去年8月、男性のスマホに大阪府警の捜査員を名乗る人物から「あなたの名前がマネーロンダリング事件の協力者として浮上している」と突然、電話がありました。
「捜査2課」に所属するという相手から「警察官であることを証明するため」だとして、LINEのビデオ通話でのやりとりを求められたということです。
相手は自分の顔や警察手帳を見せてきたほか、捜査令状の写真も送ってきたということです。
そして「調査のため」だとして、ネットバンキングの口座への送金を指示してきたということです。
本物の捜査員だと信じた男性は、指示どおり100万円を振り込んでしまったということで、「無実を証明しないと本当に捕まってしまうと思いました。事情聴取なのにLINEを使うことには違和感もありましたが、警察の仕組みも時代で変わったのだろうとその時は考えてしまいました」などと振り返りました。
「検事」の顔をよく見ると…
男性のスマホには、その後、大阪地検特捜部の検事を名乗る人物からも電話がかかってきました。
ワイシャツ姿の人物は「イシノ」と名乗った上で、氏名や役職が書かれたIDカードのようなものを見せてきました。
男性が録画していた通話の映像をNHKが確認したところ、顔を動かすたび、口の周りにひげのようなものが映ったり消えたりしていました。
【通話の映像】11秒
警視庁は、詐欺グループがAIなどの技術を使って顔を加工したり、別人の顔を合成したりしていた疑いがあるとみています。
男性は「ビデオ通話をしている時には気付きませんでした。加工だと知ってから見ればもちろん違和感を持ちますがその前提が無いとわからないと思います。こうした技術が詐欺にも使われていると知り驚いています」と話していました。
情報流出への不安も背景か
捜査員を名乗り「名前や個人情報を把握している」と不安をあおることも詐欺グループ側の手口とみられます。
都内の20代の女性のスマホには去年6月、警視庁の警察官を名乗る人物から「あなた名義の口座が詐欺で使われていて、容疑がかかっている」と電話がかかってきました。
電話の相手は女性の名前や実際に数週間前女性が作った口座の情報を把握していたということです。
女性は、「カード会社から流出した個人情報が悪用されたのでは」と考えて相手の話を信じてしまったといいます。
口座の履歴の確認に必要だと説明する相手に指示されるまま、ネットバンキングで300万円を振り込んだということです。
女性は「実際に個人情報が漏れたのかは分かりませんが、心当たりがあったので、悪い想像をしてしまいました。制服を着て、警察手帳も持っていたので本当の警察官だと信じてしまい、誰にも相談できませんでした」と話しています。
専門家「簡単に使えるツールが手口広がる背景に」
生成AIなどの技術に詳しい国立情報学研究所の越前功教授は、顔を加工したり、合成したりする詐欺の手口の広がりについて、「技術の進展で本物の顔と見間違うような合成や生成ができ、スマホのアプリなど、特別な知識を持たない人が簡単に利用できるツールがあることも背景にあるのではないか」と述べました。
被害男性が録画していた「検事役」の映像の分析を依頼したところ、越前教授は「他人の顔にリアルタイムで置き換える技術でなりすましたのではないか。正対している場合は精度が高いが、顔が下や上を向いたり、斜めになったりすると精度が下がっている。ヒゲが見え隠れする部分以外にも輪郭をよく見れば生え際の髪の量が増えたり、減ったりしている」と指摘しました。
その上で、「AIで加工された顔などを人間の目で見て判断することは、今後さらに難しくなっていく。人間の目で分からない部分はAIで真がんを判定するようなツールが必要ではないか」と話しています。
なぜ若い世代が被害に?
捜査員をかたるこうした詐欺の特徴は『若い世代でも被害に遭いやすい』ことです。
東京都内でことしに入り2月末までに確認された277件の被害のうち
▽被害者の年齢が20代以下だったケースが19%
▽30代が21%
▽40代が16%と
40代以下が半数を超えています。
若い世代にとってビデオ通話は非常に身近な機能である上、高齢者と比べて自分たちが詐欺のターゲットにされていると考える人が少ないこと。
相手が自分の姿を映していることで、「詐欺ではない」という先入観につながりやすく、スマホでの送金にも慣れていて抵抗感がないことが背景にあると考えられます。
被害から身を守るには
捜査員に成り済ます詐欺では、警察署や警察本部の「代表」と同じ電話番号を表示させ、信用させる手口も相次いでいます。
警察署などを装った番号が特殊詐欺グループなどからの電話で表示されることは以前からありましたが、これまでは番号の前に「+」と「国番号」が表示されるケースが多く、ニセの電話と見抜く手がかりがありました。
最近相次いでいる電話にはこうした特徴がなく、着信画面を見ただけでは詐欺の電話と見破ることはできないということです。
警察は警察官が電話で捜査対象となっていることを伝えることはありえず、警察手帳や逮捕状の画像を送ることも絶対にないと説明しています。
たとえ相手が警察官や検事を名乗ったとしても、身に覚えがないお金の話をされたら、相手の名前、所属部署、内線番号などを確認してから必ず電話をいったん切ること。
その上で家族や知人に相談したり、最寄りの警察署に相談するよう呼びかけています。
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