次の日の朝、身支度を整え宿を出てロキファミリアに向かった。
(オラリオに来て神様が見つからなくて最初は焦ったが、まさかロキからファミリアに誘われるとはなまさに渡に船だな。)
前の世界で何度もロキファミリアには世話になっていたので場所までの道のりはわかっていた。迷いなく進んでいくと自分の知っている城よりは少し小さい城があった。
(まあ俺の知っている城とは5年も前だからな。にしてもこの時からこんな歪な形なのか。)
門へ向かっていくと、そこにはすでにロキが待っていた。
「時間通りやな〜、ほな行こか。」
「ああ、よろしく頼む。」
ロキに連れられ、ファミリアの中に入っていく。複雑な通路を抜けて向かった先は他の部屋とは雰囲気が全然違う部屋だった。
「フィン、連れて来たで〜。」
「ああ、ありがとう。」
中で待っていたのはロキファミリア団長のフィン、副団長のリヴェリア、ガレスだった。部屋の真ん中にソファが対するように2つあって、その1つにフィンが座っていて後ろに二人が立っていた。
「君がロキが誘ったっていう新人さんだね。自己紹介をするよ。僕がロキファミリア団長のフィン・ディムナで後ろに立っているのがリヴェリア・リヨス・アールヴとガレス・ランドロック。とりあえずそこのソファに座ってくれ。」
「よろしく頼む」「よろしくの」
「あ、ああよろしくたの、頼みます。」
(やっぱりこの3人が並ぶと迫力が違うな。嫌でも体に力が入ってしまう。それでも俺はこの人達を超えないと行けないんだ。)
シンは呼吸を整え、覚悟を決めソファへ座る。
「はは、変に敬語を使おうとしなくていいよ。気楽にしてもらえればいいよ。」
「ああ分かった。」
「とりあえず君の自己紹介をお願いしてもいいかな?」
「名前はシン・サカモト。年は12でここから少し離れた小さな町から昨日オラリオへ来た。得意な武器は剣で小さな頃から習っていた。」
「そうか、ありがとう。緊張もそこまでないようだし早速本題へ行くけどどうしてオラリオへ来たのかな?」
「それは…」
質問に答えようとしてフィンの目を瞬間言葉が出なくなった。目が嘘を吐くなと言っているように思えた。そのことに自覚したら気がつけば勝手に口が動いていた。
「…俺にはかつて憧れている人達がいた。その人達はとても強くて、優しく、俺なんかじゃ到底辿り着けない場所にいた。そんな人達に憧れ、俺自身もそこへたどり着こうと必死に追いかけたんだ。その頃は前には憧れの人達がいて、横には家族がいた。悲しいこともあったが今思えばとても楽しい日々だったと思う。でもそんな日常は簡単に消えた。俺は俺自身の力の無さをとても呪ったよ。あの気持ちはこれから先絶対忘れられない。だから次は、次こそは絶対に守るんだ!あの頃の自分を超え、あの人達を超えてみんなを守れるくらいの力を!
…だから力を付けるためにオラリオへ来た。」
「…君の気持ちは痛いくらい伝わったよ。だからこそ問いかけよう。冒険者になるってことはいつ死んでもおかしくない。目の前で仲間がしぬかもしれないし1人孤独にダンジョンの中で死ぬかもしれない。その覚悟があるんだね?」
「…そんなものとうの昔に決めている。」
俺はじっとフィンの目を見つめた。
「…そうか、その覚悟は分かった。ならその覚悟を行動で見せて欲しい。」
「何?」「どういうことじゃフィン」
「そのままの意味さ、最終試験を行う!これから1時間後に中庭で君の力を見せて欲しい。もちろん相手は僕だよ。」
「なっ、それは無茶だフィン!シンはまだ12歳の恩師無しだぞ?!力の差があり「俺はいいぜ」本気かシン!」
「ああ、ロキファミリアに入るために必要なら受けるまでだ」
(それに俺自身が今どれくらい出来るのか試すまたとないいい機会だ。)
「よし、なら時間が来たら呼びに行くからそれまで隣の部屋で待っていて貰えないかな?」
「分かった。」
そう言ってシンは部屋を出て行った。
「…フィン、どういうつもりだ?シンがロキファミリアに入れていいかどうかはさっきの会話で分かったと思うが。」
「たしかにあのあの小僧はいい目をしておった。儂もなんの問題もないと思ったがのぉ。」
「うん僕もファミリアに入れることはもうほぼ決定みたいなものだよ。でも僕はシンの力が見てみたくなったんだ。さっきの会話の時、とても12歳の子供とは思えない覇気を感じたんだ。まるで親指の疼きが止まらない。だからこの目で見極めておきたかった。」
「フィンがそこまで言うとはな、なら私からは何もない。」
「ありがとうリヴェリア」
(あの時の覇気はまるで熟練冒険者のようだった。僕のただの勘違いか、又はその逆か、ロキもとんでもない逸材を見つけて来たもんだよ)