英雄の話をしよう


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作:季節
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第五話


《黄金の館》の訓練所では一人の少女が剣を振るう。まるで舞うように。一閃、一閃軌道を描く。その太刀筋は他のものが見ればまるで流星の如く見えるのだろうが彼女の心では焦りが見られている。

彼女の名前はアイズ・ヴァレンシュタイン。ロキファミリアの幹部にしてレベル5の冒険者だ。他の神や冒険者からは《剣姫》の異名で知られている。

 

「まだ、足りない。」

 

この間の遠征では少ししかステイタスが伸びなかった、強くなっている気がしない。ダンジョンに潜っても、どれだけ深層に潜ってもレベルアップの兆しも見えない。もしかして私の才能はここで頭打ちなのだろうか。

 

一閃 また一つ剣閃が夕日に吸い込まれていく。

 

時折、自分の鍛錬が合っているのかわからなくなる。がむしゃらに振るう剣は本当に合っているのか誰かに教えてもらいたくなる。

 

一閃 先程よりも強い剣閃がまた夕日に吸い込まれていく。

 

「あ、いたいた!おーいアイズ!やっぱりここにいたかぁ」

 

「・・・ティオナ」

 

「もー、探したんだよ。そろそろ集会が始まるから食堂にこいって団長からの伝達でさ」

 

「そうなんだ、ごめん今から向かうよ」

 

剣を鞘に納め、二人で食堂までの道を歩く。夕日は沈みかかっており、あと数分もしないうちに闇が当たりを包むだろう。

もうちょっとだけ鍛錬したかったなぁ。そう思いながら歩いていると隣を歩いていたらティオナがムスッとした顔でこちらを見ている。

 

「アイズ、まだ鍛錬したかったって顔してるよ。」

 

「うっ・・・ソンナコトナイヨ」

 

「うそだぁ、顔に書いてあるもん。団長の言葉忘れちゃったの?明日から遠征だからしっかりと身体を休めて置けって言われてたでしょ。それにしっかり休まないとリヴェリアに怒られちゃうよぉ〜」

 

「・・・わかった今日はもう終わりにする」

 

「それでよし!なら行こっか。あ、そうそうなんか集会の時に団長から話があるみたいだよ」

 

「フィンから?なんだろう」

 

「んー、わかんない。けど楽しみだね」

 

「そうだね」

 

そんな他愛もない話も交えつつ二人は食堂へ歩いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄金の館》食堂

食堂に着くと他の団員が結構集まっていた。多くの食事がテーブルに並べられており、明日からの遠征を少しでも決起しようと、遠征に参加しない人たちも給仕に参加していた。どこに座ろうかと悩んでいると

 

「あっ、やっときた。こっちよこっち」

 

「ティオネ」

 

「席空けといたから、ってあんたまた鍛錬してたの?」

 

ティオネがアイズの腰につけた剣を見て目を細める。アイズはしまったと思い隠そうとするがもう遅かった。こってり絞ってやろうかと思い口を開こうとすると

 

「まぁまぁ、もう言ったから大丈夫だよ。それよりご飯食べよう!」

 

ティオナグッジョブ、アイズは心の中でティオナに尊敬と感謝の言葉をかける。これで怒られることは無くなった

 

「そうなの、仕方ないわね。それじゃご飯にしましょ」

 

「アイズさん、隣良いですか?」

 

食事をしようとした時、一人のエルフが来る。彼女の名前はレフィーヤ。リヴェリアに師事している魔法使いだ。

 

「ん、大丈夫。一緒に食べよう。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

食事を開始して約30分が経った頃だろうか、食堂の奥の方が騒がしい。なんだと思い、見てみるとフィンやリヴェリア、ガレスなどが集まっている。隣には白いローブを着た男が立っており、何やら話している。

 

「ティオナ、あの人知ってる?」

 

アイズはファミリアに属しているがあんな人見たことがない、流石にあの格好をしていれば気づくと思うが、覚えが全くない。一応近くにいたティオナたちにも聞いてみるが

 

「いーや、知らないよ?新人なんじゃない?」

 

「そうね、そういえば団長から集会の時に話があるって言っていたからあの人のことかもしれないわよ」

 

なるほど、そう考えれば話の辻褄が合う。納得して席に着こうとした時

 

「皆の者!静粛に!」

 

ガレスの大きい声で食堂の声は静かまりかえる。静かにはなっているが、皆心の中で彼のことを知りたいと言った顔が透けて見える。

アイズも同じく彼のことを知りたいと思っていた。するとフィンが前に出てきて壇上に立つ

 

「みな、集まってくれてありがとう。明日我々は大規模な遠征を行う。目標は未到達階層59層だ、今回の遠征が初めてのものもいるだろう。皆不安があると思うがそれぞれの役割をしっかりと果たして望んで欲しい。

さて、そんなことは重々承知だと思う。そんなことより君たちは僕の後ろの人物が気になっていると思う。さ、マーリン頼むよ」

 

「おや、やっと私の順番かい?あまりこうゆうのは慣れていないんだてけどね」

 

白いローブを着た男が呑気に歩きながら壇上に上がる。彼は慣れていないと言いつつどこか余裕のある表情で紹介を始める。

 

「やぁ、初めましてロキファミリアの諸君。今日からこのロキファミリアの末席に加わった。私の名前はマーリン、人呼んで花の魔術師。気さくにマーリンさんと呼んでくれ。堅苦しいのは苦手なんだ」

 

彼の紹介に皆様々な反応を見せていた。彼の見た目に反応して騒ぎ立てる女の子はあんまりわからないけど、興味を失う男性もいた、無理もない新人の紹介なんて別に珍しいものじゃないから。少しして熱がおさまり、皆自分の食事にでも戻ろうかと思った時だったフィンが、再び壇上に上がった。

 

「みんな聞いてくれ、今から話すことは他言無用で頼む。もし万が一他ファミリアなんかに知られた暁にはロキファミリアが小さくはないダメージを負うだろう。」

 

フィンの言葉に皆もう一度興味を示す。なんだなんだとしていると

 

「彼は異世界からの来訪者だ、今日我々が迷い込んでしまった彼を保護した。話を聞き、彼をこのファミリアに置くことに決めた。皆勝手なことをしてすまない。」

「そしてもう一つ重要なことがある、彼は異世界では英雄として世界に名を刻んだ者だ、そのため恩恵を受けた時からレベルが高い。その為彼を今回の大規模遠征に参加させる。」

 

皆驚愕していた、当たり前だそんな話一気にされてもみんな頭が追いついていかない、異世界なんてものがあったのも驚きだけど私が気になるのはそれよりも

 

「おい、ちょっと待てフィン!」

 

フィンの言葉を聞きベートさんが声を荒げる。その目は驚愕よりも怒りが読み取れた。

 

「どうしたんだいベート」

 

「どうしたもこうしたもあるか!そんな話、はいそうですかって聞ける訳もねぇ!大体遠征に参加させるって言ったってソイツのレベルはいくつなんだよ」

 

「レベルは9だ」

 

9!?今フィンは9って言った。皆驚愕している。当たり前だ、現在オラリオで最強は誰かという話になった時必ず《猛者》オッタルの名前を出すだろう。だってオッタルのレベルはこのオラリオでも一人しかいないレベル7なのだから。それをゆうに越えるレベル9!?気になる。異世界の英雄がどんな戦いをするのか、そしてレベル9の実力が気になる。

 

「まぁまぁ、確かにポッと出の私がいきなり君たちの遠征に参加するのは不安に思うだろう。なのでどうだろうかここは分かりやすく私と戦ってみようじゃないか、不安に思うのなら遠征には不参加で構わない。私もこの世界に来たばかりだからねやりたい事もある。団長殿、良いだろうそれで」

 

「わかった。それで良いねベート」

 

「ちっ!わぁったよ」

 

「それで戦う相手なんだが僕「私がやる」・・・そうだろうと思ったよ」

 

「・・・お願いします。」

 

もっと強くなりたい、私の心の黒い炎が叫ぶ。

 

「いいとも」

 

 

 

きっとわかっていたんだと思う。彼についていけば私はもっと強くなれるって




たくさんのお気に入りありがとうございます。

皆さんの期待に添えるように面白い話を書きたいと思います。
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