ネトウヨ化したケント・ギルバートの文章に"捏造"が発覚、回収へ! ゴーストライター任せの粗製濫造も明らかに

 ネトウヨ文化人として復活したタレントのケント・ギルバート氏の文章に"コメントの捏造"が発覚し、書籍が回収される事態が起きた。

 問題になったのは、ギルバート氏が保守系雑誌「Voice」(PHP研究所)15年12月号に寄稿した「チベット人虐殺こそ世界記憶遺産に」。

南京大虐殺の世界記憶遺産登録をめぐって中国とユネスコを批判する文章だが、その中でこう書いていた。

〈神戸大学の梶谷懐先生によると、PRC(引用者註:中華人民共和国)はヨーロッパにおいても反日工作をかなり強めているそうですが、欧米諸国は、「PRCはなぜそこまで日本に絡む必要があるのか?」という疑問しかもっていません〉

 ギルバート氏のいう「梶谷懐先生」というのは、中国経済を専門とする経済学者、梶谷懐・神戸大学大学院経済学研究科教授だと思われる。ところが、当の梶谷教授が自身のブログで、〈私が全く言ったり書いたりしていない内容のことをあたかも私の主張であるかのように記述した〉〈こういった発言の捏造は明らかに物書きとしてのルール違反ですし、私としても大変迷惑しています〉と表明、「Voice」編集部へ抗議したのだ。

 2月12日、梶谷教授はブログで「Voice」宛ての抗議メールを公開。そこにはこう書かれていた。

〈私はこれまでに「PRC(中華人民共和国)はヨーロッパにおいても反日工作をかなり強めている」というような発言を行ったことは一切ありませんし、そのような文章も書いたこともありません。それどころか、「中国のヨーロッパにおける反日工作」なるものについていかなる発言を行ったこともありません。〉(梶谷氏のブログより)

 実際、ギルバート氏が書いていた梶谷教授のコメントは、完全な虚偽だった。この3日後の15日、発行元のPHP側はネット版「web Voice」で誤りを認め、記事を訂正。また、この文章は年明け1月28日に同社から出版されたギルバート氏の著書『やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人』に収録されていたため、同書も回収・刷り直しされることになったという。

 それにしても、なぜギルバート氏は梶谷教授がしゃべってもいないコメントを載せてしまったのか? 実は、これには唖然とするような内幕があった。

 梶谷教授が17日に自身のFacebookで明かしたところによると、16日午後、梶谷教授の研究室に「Voice」編集長とPHP研究所出版部の人間が来て"捏造事件"の経緯についてこう説明したという。


〈端的に言うと、問題の記事はケント氏結局本人が書いたのではなく、担当の編集者がインタヴューしたものをライターが文字起こしして構成したものであり、その過程でミスが生じた、ということのようです。すでに土曜日に受け取ったメールの中で担当の編集者より、口述取材の際に、"KAZUYA"という人物の発言を"梶谷(KAJIYA)"のものと取り違えた、という説明がありました(ちなみに私の姓の読み方は"KAJITANI"です)。〉
〈要は、もともとケント氏は彼がYoutubeで流していたネットニュースの内容を根拠にして「PRCはヨーロッパにおいても反日工作をかなり強めている」という発言を行ったのですが、それが聞き取り・文字起こしの際にKAZUYA→KAJIYA→梶谷と誤変換されて、最終的に私が言ったことにされた、というのが真相のようです。〉(梶谷氏のFacebookより)

 ようするに、ギルバート氏は原稿を書いているわけではなくただしゃべっただけ。それを編集とゴーストライターが文章にする過程で、別人の発言だと勘違いしてしまったということらしい。

 なんとも間抜けな話だが、しかし、問題はギルバート氏の姿勢だ。日本の政治や安全保障、歴史問題をエラソーに語っている御仁が、こんないい加減なやり方で本を作っていいのか。

 たしかに、出版業界では、芸能人のエッセイ、財界人の自伝はもちろん、評論家の時評や新書などでもゴーストライターが原稿化する、というケースが少なくない。

 だが、その場合でも、上がってきた原稿については著者本人が一度はチェックするのが普通だ。そうすれば、ケアレスミスはともかく、今回のように、重要コメントを間違ったままスルーするというのはありえない。

 ようするに、この間違い方を見ると、ギルバート氏は原稿をゴーストライター任せにしただけでなく、内容のチェックも編集部に丸投げしていたとしか思えないのだ。

 さらに驚かされるのは事後の対応だ。
前述のように、梶谷教授の抗議を受けて、「Voice」編集部と発行元のPHPは謝罪と訂正を行った。が、当のギルバート氏は一切謝罪していないのだ。

 ギルバート氏のブログをみると、とりあえず「web Voice」へのリンクを貼って、〈「やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人」(PHP研究所)のP170にも同様の誤った記述がありますので、すでに同書をお持ちの方はリンク先の訂正のとおり読み替えて下さい。また、今後の増刷分については速やかに修正されるそうです。〉(16日)と、それだけ。まるで他人事というか、"編集が悪くて自分は悪くない"という態度が見える。

 いっておくが、ゴーストライターが書き、チェックも編集部に丸投げしていたとしても、本に著者として自分の名前を載せ印税をもらっている以上、責任はギルバート氏にある。この態度は、いくらなんでも無責任すぎるだろう。

 ギルバート氏といえば昨年、日本会議を中心とする改憲大集会で護憲派を「アヤシイ新興宗教みたい」と批判。さらに「放送法遵守を求める視聴者の会」なる団体の代表呼びかけ人となり、安倍政権に批判的な報道番組を「極めて幼稚なプロパガンダ」などと攻撃している。自身の発言にこんな無責任な人間が、憲法や報道の問題をどうしてしたり顔で語ることができるのか、その神経がまったく理解できない。

 しかも、今回の一件にはさらにもうひとつ、大きな問題がある。
それは、編集部とゴーストライターが梶谷教授のものと間違えたコメントが、あの"KAZUYA"氏の発言だったことだ。

 KAZUYAこと京本和也氏は、YouTubeやニコニコ動画に反日攻撃動画を続々と配信しているネトウヨ・ユーチューバー。その動画は、典型的なフレームアップの手法で、いたるところで"反日"の動きが起きているかのような印象を与える煽り動画がほとんどだ。近年乱発している著書をみても、有象無象のネトウヨ系まとめサイトと見まごうような陰謀論が展開されている。

 たとえば、KAZUYA氏は昨年8月に「ポーランドで見つけた中国による反日プロパガンダ」なるタイトルの動画を公開しているが、内容は、ワルシャワへ行ったKAZUYA氏が、町の中のモニュメントのひとつに、中国語で「抗日と世界の反ファシズムへの勝利70周年記念」と書かれたものを目撃したというだけ。

 ようするに、ギルバート氏は、こんな人物の主張をひいて、もっともらしく「PRCはヨーロッパにおいても反日工作をかなり強めている」などと宣っていたのである。

 そういう意味では、今回の"捏造"騒動は、このテの嫌韓反中本、歴史修正主義本、反日攻撃本がいかにいい加減なやり方で作られているかを改めて証明したとも言えるだろう。

 実際、被害にあった当の梶谷教授もその構造的な問題を指摘している。

〈ただ、今回の件ではこちらの抗議に対するVoice側の対応は確かに速かったのですが、説明してもらった一連の経緯はあまりにお粗末であり、ミスが修正されればそれでいいのか、というモヤモヤした気持ちはずっと残っています。たとえば、ケント・ギルバートにゴーストライターがいるのはまあいいとして、そのライターや編集者にも中国や韓国の問題に関する知識が明らかに不足していること、嫌中・嫌韓本の記述のエビデンスとして挙げられるのが同じく嫌中・嫌韓ネタで売っているブロガーやジャーナリストの発言だったりすること、そういったお手軽なつくりにもかかわらず出版されればかなりの程度売れてしまうこと・・などなど、今回の件はこうした日本の出版界が抱える問題点がたまたま顕在化しただけ、という気もしています。今回の件を通じて、そうした状況に一石が投じられればいいのですが・・〉(梶谷氏のFacebookより)

 この梶谷教授の言葉を、版元のPHP研究所、そして出版界はどう受け止めるのだろうか。
(宮島みつや)

編集部おすすめ
リテラの記事をもっと見る

統一教会被害者救済法策定に萩生田が関与で「泥棒が法律つくるようなもの」と批判殺到、安倍派と教団の癒着に新事実判明もマスコミは 

萩生田光一公式HPより


 呆れてものも言えないとはこのことだろう。統一教会とのズブズブの関係が次々と明らかになり事実上更迭された山際大志郎・前経済再生担当相が、更迭からわずか4日後に自民党の新型コロナウイルス対策本部長に就任したという問題。

これだけでも信じられない話だが、そのトンデモ人事をおこなったのは、あの萩生田光一政調会長だったのだ。

 萩生田政調会長は8日、「辞任した大臣が党に戻ってきて党の仕事をするというのは、そんなに特別なことではない」などと開き直っていたが、ようするにこの男はいまも何の反省もしておらず、心のなかでは「統一教会との関係を持ってどこが悪いのか」と考えているのである。

 しかし、これも当然だろう。萩生田氏をめぐっては、今年夏の参院選公示前に生稲晃子氏とともに教会施設を訪問していたことをはじめ、「萩生田さんは教祖のことを“ご父母様”と言っていた」「“一緒に日本を神様の国にしましょう”と話していた」といった証言が続出。自民党のなかでも、もっとも統一教会との関係が深い議員のひとりだ。

 ところが、萩生田氏は「反省している」と口にしただけで、いまや何事もなかったかのような顔で政調会長の座に居座りつづけている。その結果、統一教会との関係について反省の色をまったく見せなかった山際氏を党の役職に就けるという信じられない人事がおこなわれてしまったのだ。

 しかも、さらに信じられないのは、岸田文雄首相が統一教会の被害救済・防止のための新法について、党内調整を担っているのが萩生田氏である、という事実だ。統一教会とズブズブの関係にあった人物が、被害者救済法策定の中心人物になったという事実に、「泥棒に法律をつくらせるようなもの」「犯罪者に警察官をやらせるような話」との批判が殺到している。

 自ら統一教会との関係についてなんらきちんと説明することのないまま、すべてを片付け、いつの間にか人事や政策を我が物顔で差配し始めた萩生田氏──。それもこれも、岸田首相が萩生田氏を守るどころか重用し、メディアが途中で萩生田氏の圧力に怯えて追及を止めてしまったからだ。

 いや、追及しなくなったのは、萩生田氏に対してだけではない。

萩生田氏の親分であり、統一教会と自民党のズブズブ関係をつくりだした元凶である安倍晋三・元首相についても、完全に追及がやんでしまった。

 安倍派の前会長である細田博之・衆院議長も結局、放置されたままだ。細田氏は2019年に韓鶴子総裁が出席したイベントに参加した際、「韓鶴子総裁の提唱によって実現したこの場は大変意義深い」「安倍総理に早速報告したいと考えております」などと発言していたほか、ジャーナリストの鈴木エイト氏は2016年参院選の票の差配についても「細田氏がある候補者に統一教会票を回すと打診したが、その候補が断わったために、別の議員に票が差配されたと言われている」と指摘するなど(NEWSポストセブン10月8日付)、新たな疑惑も浮上しているが、新聞・テレビなどの動きは鈍い。下村博文・元文科相の名称変更への関与疑惑もそのままになっている。

 ようするに、被害者の救済法案や質問権行使の動きがあるため、統一教会じたいの問題や、山際・前経済再生担当相のような小物の政治家のことはかろうじて報道されているものの、最近は癒着の本丸である安倍派の政治家たちの問題については、いつのまにかどこかにいってしまっているのだ。

 あらためて言っておくが、“統一教会の政界汚染”は、安倍派と同教団の構造的癒着を抜きにしては、解明することができない。

 実際、ここにきて、統一教会の安倍派取り込みが、教祖・文鮮明の意向だったという新たな事実が判明した。

 毎日新聞が6日・7日と立てつづけにスクープしたのだが、まず、6日付記事では、統一教会の創始者である文鮮明氏の発言録を精査。その結果、1989年に文氏は信者に向けた説教のなかで、当時、晋太郎氏が会長を務めていた安倍派に言及し、“安倍派を中心にした国会議員との関係強化”を訴えていたことが判明した。

 このとき、文氏は「国会議員の秘書を輩出する」「体制の形成を国会内を中心としてやる。そのような組織体制を整えなければならないだろう」「自民党の安倍派などを中心にして、クボキを中心に超党派的にそうした議員たちを結成し、その数を徐々に増やしていかないといけない。分かるよな?」などと語っていたことが記されていたという。

この「クボキ」とは、日本の統一教会と国際勝共連合の初代会長を務めた久保木修己氏を指すと見られている。
 
 だが、さらに重要なのは7日付記事だ。同じく文鮮明氏の発言録によると、安倍元首相がはじめて首相に就任した1週間後にあたる2006年10月3日、文氏は有力信者に対して「(安倍氏の)秘書室長の名前は何だ」と尋ね、信者が「ナカガワです」と応答。すると、文氏は「お前が2度会ったのか」と質問し、信者が「2回です」と答えると、文氏は「3回、もう一度会わなければいけない」と命じたというのだ。

 なんと、教祖自らが晋太郎氏の時代から安倍派への接近を言い付け、さらには第一次安倍政権の発足時には側近への度重なる接触を命じていた──。この「ナカガワ」という人物について、毎日新聞記事では、当時自民党幹事長を務めていた安倍派所属の元衆院議員・中川秀直氏ではないかと推測。中川氏に面会の有無を取材したところ、「記憶にもないし、会ったこともない」という回答だったというが、少なくとも、安倍元首相に近い関係者に対し、第一次政権の時点で統一教会が接触していたことは間違いないだろう。

 安倍元首相が統一教会との関係を深めたのは下野時代だと見られ、実際に安倍氏の地元事務所の内情を知る人物が「(統一教会が)事務所との協力関係にあった」と証言した際、当初は統一教会と一定の距離を置いていたとし、「特に親密になったのが、第二次政権の前くらいから」「第二次安倍政権を誕生させるために統一教会の力が必要だった」と述べている(FNNプライムオンライン10月8日付)。

 一方で、統一教会と政界の関係は、安倍元首相の祖父・岸信介氏が大元であり、父の晋太郎氏も、教会員を他の議員に秘書として紹介したり、議員を教団のセミナーに勧誘したことが報じられてきた。

 そして、今回の文教祖の発言録。ようするに、教祖である文鮮明の意思によって、取り込みがおこなわれ、安倍元首相を筆頭にした安倍派と統一教会の協力関係が深まっていったのだ。さらに第二次政権になって、安倍元首相らの差配によって、その癒着が自民党全体へと波及し、自民の候補者と「政策協定」を結ぶ関係にまで至った……。

この歴史的な経緯を考えれば、統一教会と安倍派の構造的な問題の解明なくして関係の清算は絶対にありえないということは、明々白々だ。

 ところが、岸田自民党が安倍元首相の問題について調査を拒否しつづけていることをはじめ、細田氏はいまだに衆院議長の座のまま、萩生田氏も政調会長として前述したように山際“ズブズブ”前大臣を役職に就かせる始末。なにより、こうした安倍派絡みの問題に対し、メディアは深堀りしようとも徹底追及しようともしない。そのせいで、細田氏や萩生田氏が要職にのさばるという異常事態に陥っているのだ。

 このメディアの姿勢の背景には、萩生田氏をはじめとする自民党幹部のメディアに対する圧力体質に忖度が働いている。そして、マスコミがそんな体たらくだからこそ、萩生田氏がいつのまにか、我が物顔で人事や政策に口を出し始めているのだ。

 国民を舐めきったこの政治家の暴走を抑えるためにも、マスコミはあらためて萩生田氏をはじめとする安倍派連中の統一教会汚染を徹底的に追及する必要がある。

オリックスDHC買収で「虎ノ門ニュース」だけでなくヘイトデマ垂れ流しの「DHC テレビ」も解体の動き 問われる吉田会長の責任

DHCテレビHPより


 今月7日、DHCテレビジョンが制作するネット配信番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』が11月18日をもって終了すると発表された。『虎ノ門ニュース』といえば、百田尚樹氏や有本香氏、ケント・ギルバート氏、竹田恒泰氏などといった安倍政権応援団がコメンテーターとして勢揃いし、ヘイトと陰謀論、フェイクを撒き散らかしてきた“ネトウヨの巣窟”的番組。

それが7年8カ月の歴史に幕を下ろすと公表され、歓迎の声の一方で「いったいなぜ」と憶測を呼んでいたのだが、その理由が明らかになった。

 11日にオリックスが、DHCテレビの親会社であるDHCを、事業継承目的で買収すると発表したのだ。

 オリックスはDHC創業者でDHCテレビの代表取締役会長でもある吉田嘉明・DHC会長兼社長から全株式を買い取り、吉田会長兼社長は株式譲渡完了後に退任する。日本経済新聞によれば、今回の買収総額は3000億円程度にのぼると見られ、〈事業承継目的のM&A(合併・買収)では過去最大規模〉だという。

 じつはこのオリックスによる発表より前に、『虎ノ門ニュース』中心メンバーである百田尚樹氏が自身のYouTube配信で『虎ノ門ニュース』終了に言及した際、「親会社がちょっといろいろ、M&Aと言いますかね」「会社の都合なんです」などと口を滑らせていた。これには「インサイダー情報では」と指摘の声があがったせいか動画は非公開になってしまったが、まさに百田氏のフライング情報通り、親会社の買収が番組終了の理由だった、というわけだ。

 実際、この買収によって終了となるのは、『虎ノ門ニュース』という番組だけではないかもしれない。

 というのも、『虎ノ門ニュース』のチーフプロデューサーであり、番組にもたびたび出演してきたDHCテレビの山田晃社長が、いつのまにかDHCテレビを辞任。『虎ノ門ニュース』11月4日(金)放送回まではプロデューサーとしてクレジットされていたが、番組終了が発表された11月7日(月)放送回ではその名前がクレジットから消えている。また、DHCテレビが制作してきた『#渋谷オルガン坂生徒会』が10月29日をもって終了し、『ときめき♡BBA』も11月18日以降の放送予定がアナウンスされていない状態だ。さらに、『#渋谷オルガン坂生徒会』番組関係者のツイートでは、渋谷のハンズ(旧・東急ハンズ)1階に設置されている「DHC渋谷スタジオ」も「10月末に契約満了で閉館した」という。ただし、現時点ではまだ「DHC渋谷スタジオ」は存在しており、公式にも閉館とは公表されていないため、今後動きがあると見られている。

 このような流れから、DHCの買収にともなって『虎ノ門ニュース』が番組終了となるだけではなく、DHCテレビ自体が解体されるのではないか、という見方が出てきているのだ。

 いまさら説明するまでもないが、DHCテレビといえば、『虎ノ門ニュース』でのフェイク・ヘイト垂れ流しにとどまらず、沖縄ヘイトデマを放送した『ニュース女子』問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)が「重大な放送倫理違反」「名誉毀損の人権侵害」があったと指摘・認定。また、市民団体「のりこえねっと」の辛淑玉・共同代表が起こした名誉毀損裁判では、一審・二審ともDHCテレビ側の主張を「事実無根」と断罪。今年6月の控訴審判決では「在日朝鮮人である原告の出自に着目した誹謗中傷を招きかねない構成」だったと踏み込み、東京高裁は一審を支持しDHCテレビに損害賠償550万円とウェブサイトへの謝罪文の掲載を命じている。

 だが、こうしたデマ・差別認定後も、DHCテレビ側は反省するどころか、デマ・差別を上塗りするかのような姿勢をあらわに。BPOが「重大な放送倫理違反」だと意見書を出したあとも「基地反対派の言い分を聞く必要はない」「言論活動を言論の場ではなく一方的に『デマ』『ヘイト』と断定することは、メディアの言論活動を封殺する、ある種の言論弾圧」「今後もこうした誹謗中傷に屈せず、日本の自由な言論空間を守る」などという見解を変えず、辛淑玉氏に敗訴した控訴審判決後も「不当判決だ」とし、番組の削除が求められなかったことから「プチ勝訴」と主張する始末。同時に上告の意向を表明していた。

 このように、裁判所も認定したデマや差別を放送しながら、一貫して強気の態度で開き直ってきたDHCテレビ。ところが、親会社が買収された途端、看板番組が終了し、そのヘイトデマの正当性をがなり立てていた社長がいなくなって、会社自体の存続も危ぶまれる事態となっているのだ。

 しかし、考えてみれば、当然だろう。そもそもDHCテレビというのは、代表者の吉田嘉明・DHC会長兼社長の存在あってこそのメディアであり、その内容も明らかに吉田会長の思想が反映されたものだった。

 本サイトでは何度も取り上げてきたが、吉田会長は極右・歴史修正主義をがなりたてている企業経営者のひとりで、2016年には「DHC会長メッセージ」のなかで在日コリアンにかんするデマを書き立てた上で〈似非日本人はいりません。

母国に帰っていただきましょう〉などとヘイトスピーチを堂々と掲載した(詳しくはhttps://lite-ra.com/2017/01/post-2865.html)。

  さらに、2020年12月には、同社の公式オンラインショップ上のコラムで、サプリ商品で競合しているサントリーについて〈サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです〉〈DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本企業です〉などとヘイトスピーチそのもののデマ文章を掲載。ネット上で大きな批判を浴び、「#差別企業DHCの商品は買いません」というハッシュタグがトレンド入りしたほどだった。

 だが、そうした批判もよそに、さらに酷いことが起こる。2021年4月、吉田会長によるこの差別コラム問題をNHK『おはよう日本』が取り上げたのだが、NHKの取材に対して、吉田会長は問題になったコラムにつづけるかたちで、新たな差別デマを書き連ねたのだ(現在は削除)。

〈(NHK記者の)名前を聞いて、明らかに在日系が好む日本名であることから、NHKを騙るコリアン系の反日日本人かと思ったが、NHKに問い合わせてみると確かに在籍しているとのこと。〉
〈小生は常々、日本の朝鮮化ということを何よりも危惧しているが、その元凶であるNHKからの問い合わせに小躍りした。〉
〈朝鮮化ということではNHKは最も触れられたくない問題のはずである。これはもう日本国民の誰もが気がついていることであると思うが、NHKは幹部・アナウンサー・社員のほとんどがコリアン系である。出演者についても、学者・芸能人・スポーツ選手の多くがコリアン系であり、ひどいことに偶然を装った街角のインタビューさえコリアン系を選んでいる。予めリストアップしているのである。

特徴のある名前とつき出たあご、引きしまった小さな口元、何よりも後頭部の絶壁ですぐ見分けがつく。〉
〈サントリーが日本海を「東海」と言おうが、社員・タレントをコリアン系ばかりにしようと、一私企業であるから誰も文句は言えない。NHKは全国民から強制的に受信料をむしりとっている公的機関であるから放置するわけには行かない。〉

 なんと吉田会長は、NHKの幹部、社員、出演者、さらには、街頭インタビューに出てくる一般人までを「コリアン系」だと決めつけたのだ。NHKの局員や出演者にコリアンルーツの人がいるとしてもなんら問題ではないし、このように国籍やルーツをあげつらうことは、外国籍や外国にルーツを持つ人々の生存権を奪うことにつながる差別煽動以外のなにものでもない。しかも、「名前や外見ですぐ見分けがつく」などと言っているところをみると、「コリアン系」という言葉を「反日」の比喩として言っているのではなく、NHKが在日コリアンに乗っ取られていると本気で信じ込んでいるらしい。

 しかも、吉田会長がコリアン系に支配されていると主張したのは、NHKだけではない。その後の文章では、野党、自民党の一部、さらには経団連までがコリアン系で占められている……という荒唐無稽なヘイトデマを主張したのだ。

このように、ネットに横行するヘイトのなかでももっとも質も悪いネトウヨの差別・陰謀論を抽出して煮詰めたような主張を展開していた吉田会長。DHCテレビが、裁判 所やBPOがデマ・差別を認定しても反省するどころか増長してきたのは、こうした思想を持つ吉田会長に支えられてきたからにほかならないのだ。

 こんな組織を、上場企業であるオリックスがそのまま引き継げるはずがない。実際、オリックスは、欧米やアジアを中心に世界約30の国・地域に事業所を持ち、グローバルな事業を展開している。

もし、DHCテレビのような民族差別や歴史修正主義を助長するメディアを抱えていることが国際社会に知れ渡れば、たちまち事業は立ち行かなくなるだろう。

 そういう意味では、オリックスによる買収にともなうかたちで、DHCを冠にしたヘイトメディアは消滅する可能性はかなり高いと思われるが、そのことを手放しで喜ぶことはできない。このままでは、オリックスの事業継承によって、吉田会長やDHCテレビが喧伝してきた犯罪的なヘイト・陰謀論などがなかったことにされ、問題自体がフェードアウトしてしまう恐れがあるからだ。

 しかも、DHCテレビがなくなっても、もっとも酷いかたちで復活する可能性もある。前述したように、今回の買収総額は3000億円程度と言われており、吉田会長は莫大な金を手に入れることになる。新たなメディアを立ち上げることはもちろん、巨額の資金をバックに政界に進出しても、何ら不思議はない。

 こういった暴挙を許さないためにも、DHCの名の下に吉田会長が垂れ流してきた差別、DHCテレビが流布してきたデマやヘイトをなかったことにせず、その犯罪性を改めて徹底的に糾弾していく必要がある。

 そしてもちろん、DHCを買収し、吉田会長に巨額の金を払うことになるオリックスもその社会的責任が問われるべきだ。

 オリックスは、メディアの取材に「人種などによるあらゆる差別を容認しない」という通り一遍のコメントを出しただけで、ネット上では「差別を容認しないなら、なぜそんな会社を買うのか」と批判を受けているが、たしかに、この程度の対応でお茶を濁していいはずがない。

 少なくとも、DHCの事業を引き継ぐ以上、その代表、会社および関連会社がやってきた行為についてきちんと総括したうえで、吉田会長をきちんと名指ししてヘイトを批判し、社会や被害者に対して真摯に謝罪する必要があるはずだ。

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース
今、あなたにおすすめ

ニュースランキング

もっと見る
Amazonおすすめランキング PR
お買いものリンク PR