チームをまとめるのは監督の役目
それだけでもありがたいのに、コーチ1年目のある日、二人で飲んでいると「おまえ、給料いくらもらっているんや」と唐突に聞かれました。正直に答えると「その金額でやっとるのか、おまえら? それで(年俸)3000万円とか4000万円の選手、どうやって教えるんや。会社に言ったるわ」と言ってくれて、実際に翌年の年俸が300万円も上がったんです。
岡田さんは勝負事も大好きだから、コーチたちと一緒にカラオケに行ったら毎回、点数を競っていたんです。当然、負けず嫌いですから、カラオケでも負けると機嫌が悪いです(笑) でも、岡田さんは自分の曲を出しているくらいですからうまいですし、点数の出る歌も知っている。私なんかは歌が苦手でいつも負けていたんですが、それじゃかわいそうだとタッグ戦にしてくれたり、若いコーチにはわざと負けてあげたりして楽しませようとしてくれたり、すごく気遣いをしてくれる。
二人で話しているときは考えも尊重もしてくれる。岡田監督が一軍の内野守備走塁コーチから監督に就任した04年、私は一軍のブルペンコーチに上げてもらいました。ブルペンでピッチャーを見ていると、岡田さんはちょこちょこと寄ってきて話をするのですが、意見にも耳を傾けてくれて私を立ててくれましたね。
そうやってコーチ陣のモチベーションも大事にしてくれて、チームを1つにしてくれていたんだと思います。
岡田さんはチームワークについて「それぞれが自分のやるべきことをやると出てくるんや」と話していて、だから「自分のことだけちゃんとやっておけ。ほかのことはいい」とよく口にされていた。
投手コーチが「ランナーを還せ」なんて、バッターを応援していると叱られる。「ピッチャーが抑える自信がなくて点を取ってほしいから応援するんや。打たれんようにしたらええ。そんな応援している暇があったら、次に対戦する相手バッターへの作戦を練っとたらええんや」と。
それはご自身の体験からも言えることなんだと思います。日本一になった85年のメンバーもいくつか派閥があったそうですが、「各自が自分の成績を上げることに一生懸命になり、それが一つになったときチームになる。まとめるのは監督の役目。だから、それぞれ自分のことをやっておけばいいんや」と。