愛知県一宮市の無職、江口真先容疑者(21)は、自宅のクローゼットに東京・葛飾区の高校生、加藤和華さん(16)の遺体を遺棄したとして逮捕され、2日に検察庁に送られました。
捜査関係者によりますと、江口容疑者は「フォートナイト」という世界的に人気のオンラインゲームで女子生徒と知り合ったとみられ、調べに対し「高校生と自宅で会って過ごした。その後、インターネットのゲームのことで口論になった」と供述しているということです。
その後、警察が遺体を詳しく調べた結果、女子生徒の体には後頭部から背中にかけて、鋭利な刃物で刺されたとみられる多数の刺し傷があったことも分かりました。
容疑者は「自分の部屋で自宅にあった包丁で刺した」などと殺害をほのめかす供述もしているということで、警察は女子生徒が背後から繰り返し襲われたとみて調べています。
「オンラインゲームのことで口論 包丁で刺した」愛知 遺体遺棄
オンラインゲームで知り合ったとみられる女子高校生の遺体を愛知県一宮市の住宅に遺棄したとして21歳の容疑者が逮捕された事件で、容疑者が調べに対し「インターネットのゲームのことで口論になり、包丁で刺した」という趣旨の供述をしていることが、捜査関係者への取材で分かりました。警察は事件に至るまでのいきさつを詳しく調べています。
容疑者逮捕までの経緯
捜査関係者によりますと、女子高校生は3月28日、母親と一緒に東京駅まで行き「インターネットゲームで知り合った愛知の友人のところに行ってくる。30日には帰ってくる」と伝え、新幹線に乗車しました。
29日の午前中は連絡が取れていましたが、午後になると連絡が取れなくなったため、母親がその日の夜に警視庁亀有警察署に行方不明届を出したということです。
警視庁が女子高校生のスマートフォンの位置情報などを調べたところ、関係先として容疑者の自宅が浮上し、30日、愛知県警に連絡したということです。
容疑者は、事件が発覚しないように自身のスマートフォンから女子生徒のアプリのアカウントにログインして、周囲に無事を伝えるメッセージを送っていたとみられています。
容疑者を知る人は
近所の人などによりますと、逮捕された江口真先容疑者(21)は、幼いころから事件の現場となった愛知県一宮市の住宅に両親やきょうだいとともに生活していたということです。
地元の小学校に一緒に通っていたという男性は、当時の印象について「とても明るくて、後輩思いの優しい人だった」などと話し、友人から頼られる存在だったとしています。
容疑者と中学校で同学年だったという男性は「おとなしそうな子で、学校でトラブルを起こしたこともなく、普通の子という印象です」と話していました。
女子生徒とはオンラインゲームで知り合ったとみられていますが、容疑者と小中学生の時に付き合いがあったという男性は「おとなしくてゲームが好きだった。近所の子と集まってよくゲームをしていた」などと話しています。
また、最近は犬の散歩をしている姿が近所の人によく見かけられていたということです。
加藤さんや容疑者と一緒にゲームをした女子高校生は
加藤和華さんと中学時代に同じクラスで、親しくしていたという女子高校生は「亡くなったと聞いてびっくりました。明るい子で、私がボケるとすぐ笑ってくれる楽しい子でした。一緒にゲームをしたりゲームセンターに行ったりして中学3年間を過ごしました」と話しました。
和華さんと江口容疑者と、数人のグループで一緒にゲームをしたこともあったといい「ゲームの中で容疑者は“まさ先輩”と呼ばれ、グループの中で和華さんとは一番仲良くしていました。東京まで来て一緒にボウリングをしたこともありました。和華さんに好意を持って告白したこともあったと聞いていますが、何かトラブルにつながらないか、心配もしていました」と話していました。
亡くなった加藤さん「ゲームが好きだった」
亡くなった加藤和華さんと中学校で同級生だったという男子高校生は「小学校や中学校で何度か同じクラスになったことがあり、あまり目立つタイプではありませんでしたが、優しくて性格のいい子でした。ゲームが好きで、スマートフォンのゲームを同級生としていました。事件に巻き込まれたことは実感がわかず、信じられないです」と話していました。
また、中学校で同じクラスだった男子高校生は「和華さんはアニメとゲームが好きで友だちにおすすめのアニメを聞いたり、ゲームを一緒にやろうと誘ったりしていました。ピアノも上手だったと聞いたことがあります。授業では手を挙げて発言するなど積極的に参加していて、優しくて明るい性格でした。事件に巻き込まれたと知ってショックです」と話していました。
オンラインゲーム 犯罪被害にあう子どもが増加
オンラインゲームがきっかけで犯罪の被害に巻き込まれる子どもの数は増加しています。
警察庁によりますと、2024年にオンラインゲームがきっかけで犯罪に巻き込まれた18歳未満の子どもは98人で、統計が残る2019年の65人からおよそ1.5倍に増加しています。
内訳では高校生が18人、中学生が56人、小学生が22人などで、男女別では95%にあたる94人が女性でした。
また、巻き込まれた犯罪では児童ポルノに関する犯罪が35人で最も多く、不同意性交が23人、不同意わいせつが14人などと、性犯罪が目立っています。
オンラインゲームで知り合った人物と実際に会った際に、裸の写真を撮られたり、体を触られたりしたケースがあったほか、1月には17歳の男子高校生がオンラインゲームで知り合った人物から海外渡航を持ちかけられ、ミャンマーで特殊詐欺の電話をかけさせられていたことが明らかになっています。
オンラインゲームはボイスチャットやメッセージを交換する機能が付いていて、匿名の相手とも簡単にやり取りができるうえ、ゲーム内で協力することで生まれる仲間意識や、ゲームの上級者に対して子どもが抱く憧れの感情が悪用されて、犯罪に巻き込まれるケースが多いということです。
警察庁によりますと2023年、犯罪の被害に巻き込まれた子どもが相手と知り合った主なゲームは多い順に「荒野行動」が27人、「We Play」が23人、「フォートナイト」が11人、「第五人格」が9人だったということです。
警察庁は保護者が子どものアカウントを管理する「ペアレンタルコントロール」の機能を活用することや、ほかのSNSと同様、個人情報や連絡先を安易に交換しないことなど、家庭内でルールをよく話し合ってほしいと呼びかけています。
専門家「ゲームの中で対戦や助けあい 信頼関係築きやすい」
子どもとオンラインゲームを介した犯罪に詳しい追手門学院大学の櫻井鼓教授は、オンラインゲームの特徴について「同じゲームが好きという共通項があって、ゲームの中で対戦や助けあいをするので、SNSなどと比べて相手と信頼関係が築きやすいです。その信頼関係をもとに、会ってみたいと言われると、そういう気持ちになりやすいということがあると思います」と指摘しています。
連絡を取り合う手段については、ゲームによってボイスチャットでの通話やテキストメッセージを交換できる機能があるほか、SNSなどの外部サービスも使ってやりとりするケースが多いということです。
子どもが被害にあわないためには、個人情報を交換しないこと、正しい年齢設定を行ったアカウントや端末を使うことのほか、ゲームをする時間など家庭内でルールを作ることが重要だと指摘しています。
櫻井教授は「ゲームで知り合った人にはやはり会いに行かないこと、そして個人情報を伝えないことも大事です。ボイスチャットを使っていたりすると声のトーンや方言などで年齢や住んでる地域が推測されることもあります。ゲームは楽しいですし遊ぶことは問題ないと思いますが、その先にある危険性に注意を払ってほしいです」と話していました。