「時給10円」試算も…農家の窮状訴えるデモ活動 “令和の百姓一揆”きっかけは元農相の呼びかけ
全国の農家たちが農業の持続に向けた理解を求める大規模なデモ活動「令和の百姓一揆」が30日、東京であった。コメの価格高騰に注目が集まる中、大消費地の首都圏の市民らでにぎわう週末の原宿や渋谷などを、農家やトラクターが行進。農業の所得の低さや離農の加速といった生産現場の窮状を訴え、「このままでは食料供給できない事態に陥る」と声を上げた。 【写真】元農林水産大臣の山田正彦さん 午後2時、港区の青山公園。農家やデモの賛同者3千人以上(主催者発表)が集結し、トラクター約30台も並んだ。「日本の農業は崩壊局面に入ってきたのに、多くの国民は知らない」。デモの実行委員会代表を務める山形県長井市の農家、菅野芳秀さん(75)が集会でマイクを握ると、「そうだ」と声が飛んだ。 菅野さんが暮らす集落は団塊世代の多くが引退し、50年前に34軒あった農家は7軒に。耕作地も3割超減った。「洪水のように離農している」。10年後には営農が途絶える危機感を抱く。 全国で離農が進む根源的な理由は、生産コストを下回る販売価格にあると思う。特にコメは30年間も下落基調が続いた。「時給10円」-。そんな試算が出回るほど経営が厳しい農家がいる。「日本から農民、農作物、村が消えようとしている。国民の命を支える食料供給に大きな影響が出る」 家族経営で減農薬米や放し飼いの鶏卵を消費者に直販する。コメの乾燥機が故障した数年前、40代の息子が「もう、やめようか」とこぼした。昨夏から高騰する米価の先行きは不透明で、投資や規模拡大に値する未来が見いだせない。 そんな菅野さんに「一揆」を呼びかけたのが、民主党政権で農相だった山田正彦氏(82)=長崎県出身=だ。政界引退後は都内で弁護士活動をしながら食料自給率や農業所得の低さに問題意識を持ってきた。昨年、農家らと実行委を立ち上げた。 トラクターに乗り込んだ農家は午後2時半、青山公園を出発。デモ隊は別ルートで高級ブランド店が並ぶ表参道など3キロ超を歩き、「全ての農民に所得補償を」「日本の食と農を守ろう」などと訴えた。 アイガモ農法でコメと麦を栽培する福岡県大木町の中島宗昭さん(74)は「地域の稲作は疲弊している。消費者と一緒に考える運動を続けたい」。長崎県五島市の実家のトラクターを運転した茨城県の農業、仁田忠徳さん(77)は「農産物は安すぎる。農家は守られていない」と語った。 市民の反応はどうか。「農作物を作れなくなると、自分たちの生活もままならなくなる」。歩道橋からデモを見た東京都の主婦(59)は訴えに理解を示した。一方、会社員の女性(28)からは「私たちの給料も上げてくれたら、値上げも問題ないんだけど」との声も聞かれた。 (井中恵仁)