実在する警察署の電話番号などが着信画面に表示される不審電話が急増している。2025年3月中旬には、「03」で始まり末尾が「0110」という新宿警察署(東京・新宿)の代表番号が表示される事態が報じられ、同署が注意を呼びかけた。警察官をかたって捜査名目で金銭をだまし取ろうとする新手の特殊詐欺だ。NHKなどの報道によれば2024年1月から被害が増え、全国で1400件余りに達している。
電話番号の偽装は「スプーフィング」とも呼ばれる。2000年代中ごろに詐欺事件が急増したことから、通信事業者と総務省は対策を講じた。その後も新たな手口にも対応してきた。なぜ最近になって、対策をかいくぐる番号偽装が増えたのか。手口は確定していないものの、一部の国内通信事業者のサービスが悪用された可能性があることが関係者への取材で分かった。
海外IP電話を使う手口、日本の通信各社は既に対策済み
「03-XXXX-0110」のように、0から始まり最大10桁の数字が並ぶ電話番号は「0AB~J番号」と呼ばれ、国内の固定電話や基準を満たしたIP電話で使われている。実在する0AB~J番号を偽装する手口として、一部の報道では「海外のIP電話サービスが使われた可能性がある」という詐欺対策の専門家らの見方を伝えている。海外ではユーザーが発信者番号を自由に設定できるサービスがあり、それらを悪用した可能性を指摘したわけだ。
もっとも、この手口は以前から知られ、国内の通信事業者などは対策済みだ。国内事業者で構成する電気通信事業者協会(TCA)が策定した「発信者番号偽装表示対策ガイドライン」では、IP電話を含めて海外から発信する国際電話が0AB~J番号を伝えてきた場合、番号をそのまま表示しない運用が定められている。総務省も電話番号の運用に関する指針で同様の対応を求めている。
悪用防止のためTCAは具体的な対策方法を公表していない。ただし、日経クロステックが通信大手に確認したところ、各社とも、海外からの0AB~J番号は表示を置き換えるなどの対策を実施していると明言した。
例えばNTTドコモは、一部の端末仕様で変わるものの、基本的には「通知不可能」と表示させているという。KDDIは携帯電話で着信した場合は「非通知」、固定電話やIP電話では「+81AB~J」の番号を通知させていると回答した。海外からの発信通話が「03-9999-0110」と番号を偽った場合、固定電話では「+8139990110(電話機によっては+表示なし)」と表示されることになる。
ソフトバンクは不正防止のため具体的には開示できないとした上で、「当社で定めた基準で番号を非通知になるよう変換している」(広報)。全体としては、携帯電話では番号そのものを表示させない対策が多いようだ。
ユーザーがMVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスを使っている場合も、「詐欺グループが着信番号を偽装できる可能性は低い」とMVNOに携わるある技術者は指摘する。MVNO各社は電話の相互接続や番号の管理を、携帯電話網の卸元である携帯電話大手に委ねているからだ。
固定電話も対策済みだ。NTT東日本によると、NTT東西の固定電話や「ひかり電話」では、0AB~J番号を装った海外からの通話を「非通知」と表示する。NTT東西は基本的に国際中継事業者を通じて海外からの通話を受け取るという。このため「中継事業者が付与する『国際呼』を表すフラグがあるかどうかで識別する」(広報)。
中継事業者が海外からの通話に国際フラグを付与しない場合は、NTT東西は海外発かどうかを識別できないため、0AB~J番号をそのまま表示することになる。ただしNTT東西と接続する中継事業者を含めて、国内で電話サービスを提供する事業者はTCAに加盟している。これらの事業者がこのガイドラインを順守しない可能性は低いと見られる。
発信転送サービス、一部で対策に抜け漏れの可能性
にもかかわらず電話番号の偽装が増えた事態を踏まえ、TCAは原因究明と対策に乗り出した。番号偽装が増えた事態を踏まえ、通信事業者各社や総務省と連携し、各種規程の順守状況を点検するといった対策の協議を進めると2025年3月25日に公表した。
TCAは悪用された可能性がある手口について「現段階ではお答えできない」(TCAの発信者電話番号偽装表示対策検討部会)とする。ただ、関係者の間では「発信転送サービス」が悪用された可能性が浮上している。
































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