「配属ガチャ」より「上司ガチャ」 新入社員の関心移る

 

 

入社後の配属が希望通りになるかわからない「配属ガチャ」。新入社員の不安の種の一つになっているとみて金融機関は配属希望に応えるようになってきた。配属希望が「かなうのは当たり前」になりつつある今、若者の関心は新たな「ガチャ」に移りつつある。

 

「○○支店の支店長は外れ」 絶えない噂

 

「配属ガチャよりも上司ガチャの方が大きい」。2024年4月に国内の大手金融機関に新卒で入社した岡部司さん(仮名)はこう話す。部下の立場からは上司を選べないのが上司ガチャ。「上司ガチャはみんな感じている。『○○支店の支店長は外れだ』などといった噂が絶えず流れている」と明かす。

 

複数の金融機関の新入社員に聞くと「自分の若い頃はこうだったと昔話をする」「感情の起伏が激しい」「正当な評価をしてくれない」上司などが挙がった。

 

一方、リクルートマネジメントソリューションズ(東京・港)の「新入社員意識調査2024」では上司に期待するのは「相手の意見や考え方に耳を傾けること」と答えた割合が50.3%に達し「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」の回答が続いた。

 

全国転勤型の総合職で入社した岡部さんは第1希望だった都内の支店で働くことになった。配属については「多くの人は第1希望がかなっていた。第2希望までに入らなかった人はほぼいなかった」と語る。「できるだけ希望をかなえようという姿勢が会社から感じられた」という。

 

実際、企業側は配属に気を使っている。勤務する地域の希望がかなっても、やりたい仕事ができない「部署のミスマッチ」があると新入社員は見切りをつけて辞めてしまいかねない。そこで企業が増やしているのが部門別採用だ。

 

大和証券、専門性で配属先を確約

 

大和証券グループ本社は語学力や会計知識など高い専門性を条件に、全国転勤型の総合職と同額の初任給で配属部門を確約する採用を取り入れている。

 

高度なIT(情報技術)スキルや、博士課程で金融工学、デリバティブ(金融派生商品)を学んだといった学生を対象に初任給を総合職の1.5倍以上の48万円にする仕組みも22年の新卒入社から導入した。

 

損害保険ジャパンは25年入社の新入社員から最初の配属先を公募で決める制度を始める。希望者は営業部門や保険金支払部門など、自分の行きたい部署に手を挙げられる。11月中に募集を開始し、書類や面接などの選考を経て入社前に配属先を決める。

 

「就職活動時に自分のキャリアビジョンを話す機会が多かった。それを実現できるチャンスができたのは良かった」。ある内定者はこう打ち明ける。制度を利用したいとの声が上がっているという。

 

損保ジャパンの採用担当者も「学生が配属ガチャを気にしているのは肌で感じている」と明かす。人材の獲得が年々難しくなっているなかで「企業優位の採用では確保できない」と漏らす。

 

「企業と学生のパワーバランス変化した」

 

 「企業と学生のパワーバランスが変化した」とみる。企業はこれまでは学生本人の意向を気にせずに人材を確保できていたと分析する。

 

変化の裏にあるのは、深刻さが増す人手不足だ。売り手市場になり「やりたい仕事ができない」「働きたい場所で働けない」となればすぐに辞め、次を探しやすくなった。

 

企業側もそうしたリスクを減らそうと動いた結果、25年卒の学生のうち応募時に配属が決まっていた学生の割合は19.7%と、24年卒の12.9%から一気に高まった。

 

「企業と学生、従業員が対等な立場でコミュニケーションできる場をつくることが、配属ガチャと上司ガチャの両方を生まないために必要」と指摘する。

 

ただ、予想外の配属でも思いがけない楽しみややりがいをみつけ、目指す将来像が変わっていくケースも多い。苦手な上司が貴重な助言をくれることもある。大事なのは「運任せのガチャ」のように映る人事制度から社員が感じる「不安」を取り除いていくことにある。

 

  • ひとこと解説

    「○○ガチャ」という言葉が浸透しているのも、若手社員の不安からきています。不安定な時代だからこそ自分ではコントロールできない要素を少しでも取り除きたいのです。自分のキャリアを主体的に設計するキャリアオーナーシップという考え方も浸透しています。企業の役割としては、従来の「企業優位の配属・育成計画の実行」から「個人のビジョンを踏まえたキャリア設計のサポート」へとシフトしています。 一方であくまで企業戦略の実現が必要不可欠であり、本人の意思だけを尊重すればいいわけでもありません。若手社員がまだ自分では気づいていない適性や強みを発見し、新しいキャリアの選択肢を提示してあげることも重要な役割の一つです。

コメント