- 現在50代のある人物は、リモート勤務のフルタイム職をひそかに6つ掛け持ちし、2025年に80万ドル(約1億1990万円)を稼ぐことを目標にしている。
- 彼は、ほかの人を雇って、自分の仕事の大部分を代わりにしてもらっている。2023年には32万ドル(約4800万円)の利益をあげたという。
- 複数のリモート職をひそかに掛け持ちし、収入を増やして職の安定を高めている人もいる。
ハリソン(Harrison)は、リモート勤務の6つの仕事を掛け持ちしているが、ときどきミーティングの時間がぶつかってしまうことがある。どうやって解決しているのかと言うと、誰かに金を払って、自分のふりをしてもらうのだ。
「その人は最新の情報を知っていて、声もどことなく私と似ています」とハリソンは話す。そして、自分が出るミーティングでは、たいていカメラをオンにする必要はない、とつけ加えた。Business Insiderはハリソンの身元を確認しているが、仕事に影響が出るおそれを理由に、偽名を使うよう求められた。
IT分野の品質保証を専門とするハリソンは、7人の働き手からなるチームを組織している。ひそかに掛け持ちしている複数のフルタイム職を維持するのを助けてくれるチームだ。
ハリソンは2025年、雇用条件が変わらなければ、80万ドルを稼ぎ、そのうちおよそ25万ドル(約3750万円)をチームに支払う見込みだ。ハリソンの稼ぎは、時給にして25~30ドル(約3750~4500円)くらいになる。
ハリソンが収入を最大化するためにこのモデルを使い始めてから、2025年で5年目になる。利益関連の書類によれば、ハリソンは2023年に、アメリカを拠点とするリモート勤務のフルタイム職6つを掛け持ちし、およそ47万ドル(約7045万円)を稼いだ。6つのうち3つは、給与から税金が源泉徴収されるタイプの被雇用者。ほかの3つは、コンサルタントとしての契約だ。
自分が雇うチームに報酬を払ったあとの利益は32万ドルほどだった、とハリソンは見積もっている。2024年には、9つもの職を掛け持ちし、チームへの報酬を支払ったあとの利益は推定50万ドル(約7495万円)を超えたという。申告が終われば、もっとはっきりわかるはずだ。
「以前は、上司とか、株式市場での損失とか、請求書とか、子どもの学費とかにぴりぴりしていました」とハリソンは話す。
「仕事を掛け持ちするようになって大きく変わったのは、あまりぴりぴりしなくなったことです。何かがうまくいかなくても、それでおしまいということにはなりませんからね」
Business Insiderは過去3年にわたり、20人超の「過剰就業者」を取材してきた。過剰就業者とは、収入を増やして職の安定を高めるために、複数の職を掛け持ちする人たちのことだ。
ハリソンは、職を掛け持ちする人のなかでも、自分の仕事の一部、もしくはほとんどをしてもらうために他の人を雇うという、さらに少数のグループに属する。そうした傾向は、リモートワーク革命、世界規模のソーシャルネットワーク、仕事の外注を可能にするソフトウェアツールの利用増加に後押しされている。
雇用主の承認を得ずに複数の職を掛け持ちすると、職業上の悪影響が出かねないし、バーンアウト(燃え尽き症候群)につながるおそれもあることは確かだ。また、ホワイトカラー業界のオフィス回帰命令や雇用の減速により、リモートの職を得るのが難しくなっている。
4人が仕事をこなし、2人が新しい仕事を探す
ハリソンは2018年ごろ、リモート勤務の仕事を2つ始めた。パンデミックが襲来し、リモート職が豊富になると、3つ目と4つ目の仕事もこっそり掛け持ちするようになった。
すぐに仕事量が手に負えなくなったので、フリーランスのプラットフォーム「Upwork(アップワーク)」を使って、自分の仕事を代わりにしてもらう、信頼できそうな適任者を探した。
大勢の候補者の面接を経て、少しずつチーム(ハリソンが従業員と呼ぶメンバー)を築き、さらに多くの仕事を引き受けた。ハリソンの下で働く人たちは、アメリカ、カナダ、インド、パキスタンに在住している。
UpworkはBusiness Insiderに対し、雇用契約に違反することは同社のポリシーに反していると話した。Upworkプラットフォームに掲載された求人情報のなかで、違反にあたる内容が明示的に書かれている場合にはしかるべき措置をとるという。
ハリソンは、1日のほとんどの時間を、仕事上のミーティングと、チームの仕事のレビューに費やしている。労働時間を合計すると、だいたい週に40時間くらいになるという。
「従業員」のうち4人は、ハリソンの職務を履行する。ハリソンの義理のきょうだいである別のひとりが、業務管理を手伝ったり、ミーティングに代わりに出たりする。
「彼は失業中なので、彼を助けることにもなります」
現在50代のハリソンは、義理のきょうだいを雇っていることについて、そう話した。
「たぶん、私がしてきたことのなかでも最良のことです」
ハリソンによれば、解雇されたり、コンサルタント契約が延長されなかったりすることも時々あるという。そのため、現在の仕事形態を維持して成長させるために、別の従業員2人が、ハリソンに代わって求職活動をしている。面接に対応するのはハリソン本人だ。だが、ここ数カ月というもの、新しいリモート職を得るのは難しくなっている。
過剰就業はどうやって行われているか
ハリソンは米国市民だが、1年の大部分は国外で生活し、アメリカのVPNを使っている。仕事の外注が可能なのは、ZoomやTeamViewer、UltraViewerといったツールを使って、チームメンバーがハリソンの仕事用コンピューターにリモートアクセスできるからだ。
ハリソンによれば、従業員はペアにして1つの仕事を任せるようにしているが、2つの仕事を同時に受けもつ人もいたという。ハリソンが知るかぎり、彼が複数の仕事を掛け持ちしているとは、従業員の誰も疑っていないという。
ときには、「従業員」がした仕事について質問され、答えられないこともあるが、そんなときには、その人から最新情報をもらうまで時間をかせげばいいという。
今後については、当面のあいだは現在の掛け持ちを続けるつもりだ。まだ引退するほどの貯蓄ができていないと考えているからだ。
6つくらいの掛け持ちがちょうどいいのではないかと思う、とハリソンは言う。その程度の数なら、長時間働きすぎなくても、収入を大幅に増やし、職の安定を高められるからだ。それに、あまりにも収拾がつかなくなったら、いつでも1つ減らせばいい。
「失業中だとしたら、やって来た仕事がなんであれ、それをしないといけません」とハリソンは話す。
「いまは、どの仕事にするか、結構選ぶことができています」