両親は、鉱山を管理するように国から命じられた役人であった。
リュウマは小さい頃から身体を動かすことが大層好きな子供であった。
幼き時分より、屈強な男たちと同様に『ツルハシ』を肩に担ぎ、鉱山に潜り、採掘の手伝いをしていた。
両親はリュウマに鉱山管理者の後を継いでほしかったが、現場で実際に働く経験も管理する者になった時に役立つだろうと考え、息子の行動を咎めることはしなかった。
おかげでリュウマは、14歳になる頃には周りの大人たちにも劣らぬ筋骨隆々の肉体を手に入れていた。
つまり、あと1年もすればリュウマは両親と共に鉱山管理者の職に就くことが決まっていた。
事件が起きたのは、そんなある日のことである。
リュウマは、その日も変わらず鉱山での採掘に勤しんでいた。
深く掘られた洞窟から鉱物の含まれた土をえっさほいさと外へ運び出す作業を頼まれた。それに従って、肩に麻袋を担いで洞窟の外に出た。
洞窟の外は、大火事であった。
文字通り、辺り一面が火の海。熱風に乗って漂ってくる鉄が腐ったような血の匂い。
一体どうしたというのか。麻袋を放り出して駆け出す。誰かいないのか。大声で人を呼ぶ。しかし平常であれば数十人はいるであろう屈強な鉱夫たちは、物言わぬ死体となって辺りに転がっている。
ある者は首から上がなく、またある者は身体が右と左に切り裂かれている。
なにより、最も多いのは真っ黒こげに焼かれもはやだれなのかも判別不可能となった焼死体。
そのまま走り続けること数十分。見えてきたのはリュウマが生まれ育った鉱山集落――炭鉱町であった。
そこには、1匹の『龍』がいた。
住んでいた千近い数の人々はなく、破壊された家々の中央に鎮座しているのは、山のように大きく、漆黒の鱗に包まれた『龍』であった。
『龍』はリュウマを一瞥する。その口に咥えられたモノを見て、リュウマは目を大きく見開いた。
それは、尊敬する父の生首であった。
現実を受け入れられず呆然としている間に、父「だったもの」は『龍』のノドに吸い込まれていく。
『龍』は、動く様子のないリュウマをしばらく見つめていたが、やがて興味をなくしたのか、その背に生えた大きな翼を羽ばたかせた。
リュウマが我に返った時、そこに『龍』の姿はなく、あるのは破壊されつくされた故郷の姿であった。
その後、東妻の国で最大の鉱山は廃されることとなった。伝説の『黒龍』による天災は人々の記憶に深く刻まれ、かつて町があった場所には、そこで亡くなった魂を弔うための大きな石碑が建てられたという。
その石碑の1番上には、鉱山最後の管理者であった『黒鐘』夫妻と、その一人息子の名前が刻まれている。