カクレオンの店主ですよ!悪いモンスターじゃありません!


メニュー

お気に入り

しおり
作:猫ネコねこキャット
▼ページ最下部へ


8/10 

クズと職人と道化師とカクレオン


箸休め?羽休め?回です


 

 

 神会(デナトゥス)

 それは神にしか立ち入ることが許されない神々による神々のための会議。そこでは情報交換やバカをやらかしたファミリアの処罰などが決められるがこれに関してはどうでもいい。神々が本当に楽しみにしているのは偉業を成し遂げだ冒険者たちに理解を絶するほどのカッコいい二つ名を付けることだ。

 

「はい、この子は矛盾存在(ジ・アノマリー)に決定!!」

「うあああああぁぁぁぁ!!!すまない!!本当にごめん!!」

 

 ただしこのセンスをカッコいいと思うのは神々の遊びを理解できない可愛い眷族(こども)達だけである。

 もはやそれをするためだけにこの会議に参加している神も大勢いるほど。自分の眷族をゴミみたいなネーミングから守るために出席しても多勢に無勢。フレイヤやロキといったオラリオでも有数の権力を持つ神々にしか自分の眷族の二つ名を決める権限はなかったのだ。

 その後も多くのクソダサいネーミングをわざと付け、神々を地獄に叩き落として笑う神々。まさにクズどもの集まりである。

 その後は情報交換と行くのがいつもの常例だが、今日だけは違った。

 

「では今から話題沸騰中のダンジョン内に現れるモンスターの商人について話し合っていきまーす。お前ら持ってる情報早く出せよおら」

 

 神の1人がそう言うと先ほどまでうるさかった会場は静まり返る。なぜならこの場にいるやつらは全員神だ。ダンジョンに入ってはいけないのだから冒険者よりも情報は少ないだろう。

 そんな中、1人だけ声を上げ、一枚の布を取り出した神がいた。

 

「見てみぃ!その噂の商人からアイズたんが自分で買ってきたリボンや!」

「あの剣姫が!?」

「あの戦姫が!?」

「「「「あの神々(おれたち)の花嫁が!?」」」」

「おう、最後の4神、手あげてみぃ。今すぐ天界に送ったるから」

 

 殺害予告を受けて手を挙げる(バカ)はいない。

 

「それで、あの子が自分から買ったというからには理由があるんでしょうね」

「おう、もちろんや」

 

 自分の眷族のランクアップしたため会議に出席していた鍛治神(ヘファイストス)はロキに問いかけた。

 

「なんと聞いて驚け!このリボンを巻いてるだけでな、敏捷がプラス20されるんや!」

「「「「「「「「「はあ!?」」」」」」」」」

 

 その酒でも飲んでるのかと聞き返したくなるふざけた言葉に全員が目を見開き驚愕する。

 

「確かめたのか!?」

「おう、アイズたんのステータス更新の時に敏捷の横に(+20)って書いてたで!」

「レベルは関係あるのか?」

「いや、無い。他の団員にも試させたけど、どのレベルでも一律プラス20や」

「値段は?」

「なんと格安の30万ヴァリス!これには通販番組もびっくりやで!」

「どこにつけても効果は出るのか?」

「いや、たぶん毛につけるのが効果発動の条件や。だから髪の毛だけやなくてヒゲなんかも効果が出るはずや。ガレスで試したらいけたしな」

「つまりアソコの毛につけても……」

「さては貴様天才だな?」

 

 

 さっきまで静寂はなんだったのか。またいつものうるささを取り戻す。そんな耳を塞ぎたくなる喧騒の中でとある神がとある物を取り出す。

 

「これは?」

「俺の団員が撮ってきた商人の映像」

「なん……だと?」

「なんでさっき言わなかったんだよ!」

「いや、だって変態(おまえら)に見せたらあの可愛い商人が可哀想だから」

「今の言い方だとお前も変態だけどな」

 

 

 そんな慣れ親しんだ罵り合いをしながら映像を再生する。そこに映っていたのは16階層。ちょうど最初の迷宮の孤王(モンスターレックス)と呼ばれる階層主の出現階層の一つ手前。

 

『こちらは〇〇ファミリア。現在我々はダンジョンに現れるという商人を発見いたしました』

 

 レポーターのような口ぶりで話す女の子がそういうとカメラが動く。そこには絨毯を広げて、転がってしまった魔道具を走って取りに行く緑色のモンスターの姿が映っていた。

 

『では、今から接触を試みようと思います』

 

 そうレポーターが近づくとモンスターの商人はこちらを向いた。感情を感じない不思議な目に皮が裂けたように見える赤い模様が不気味感を引き立てる。しかしそれは見た目だけの印象だった。

 

『いらっしゃ〜い』

 

 どうやら商人はそのファミリア全員を快く出迎えてくれている。その笑顔のギャップにキュンと来たものも数名いたという。

 

『すみませーん。撮影よろしいですか?』

『いいですよ〜』

『ありがとうございます。早速、何か買いたいのですがお代は魔石でもいいんですよね?』

『いいよ〜。買い取りもやってるからモンスターのドロップアイテムがあったら、一度ヴァリスにして買い物することもできるよ〜』

『へー、そうなんですね』

 

 商売もだが、モンスターがヴァリスを持っていることに驚く。魔石なら食べることで強化種になれるが、お金なんてモンスターに使い道があるのだろうか?という疑問は残ったまま、話は進む。

 

 

『こちらの『せんたくだま』と書かれた水晶玉は魔道具なんですか?』

『そうだよ〜。使い切りだけど道具を綺麗にしてくれるよ〜。布とかもいけるから服もできるんじゃないかな〜』

『それは本当ですか!?乙女にとってダンジョン内での汗や汚れは大敵ですからね。これはすごい商品です…!おいくらなんですか?』

『3万ヴァリスだよ〜』

『うーん少しお高め……もう少し安くなりませんか?』

『他の物も買ってくれたら安くするよ〜。未完成だけどカタログもあるから〜』

 

 そう言って少女がモンスターの商人から渡された本のようなものをめくった瞬間、【カット】という文字と共に、映像が飛ばされる。

 

「ふざけんな!」

「だからお前は童貞なんだよ」

「童貞は関係ないだろ!もしも見たいんなら追加料金払いやがれ!」

 

 これにはカタログでどんなアイテムが書いてあるのか気になった神々は激怒。それに対して映像を持ってきた神はエロサイトのような追加料金の発生を言い渡し、止まっていた映像を再生する。

 

『この種ってなんですか?さっきのカタログにも載ってませんでしたけど』

『それは新商品だよ〜。今のところ3種類しかないけどこれから増えていくと思うよ』

『それでこの3つはそれぞれどういう効果なんですか?』

 

 そう聞かれて商人は1番左の【めつぶしのタネ】と書かれた種を手に取った。

 

『これはね〜ぶつけるとぶつけた相手はしばらくの間目が使えなくなるよ〜』

『食べさせなくてもいいんですか?』

『うん。ぶつけるだけだよ〜仲間にはぶつけないようにね〜』

 

 いったいどういう原理なんだとブーメランを投げるのが上手い神が呟いた。

 

 その次に真ん中にあった【しゅんそくのタネ】と書かれた種を手に取る。

 

『これはね〜食べるとしばらくの間速くなるよ〜。続けて食べたらもっと速くなるよ〜』

『具体的な数値で言えば?』

『ごめんね〜人間の基準がわからないんだ〜。でも人間にも効果はあるよ〜』

 

 何それめちゃくちゃ欲しいと、いつも団員たちに速さが足りない!と叫んでいる神は欲望を吐露した。

 

 次に1番右にある【ばくれつのタネ】と書かれた種を手に取った。

 

『これはね〜食べると口から小さな爆発を起こす何かが出るよ』

『え?危なくないですか?それ』

『魔法みたいな物だから本人にダメージはないよ〜。あと相手の防御とか関係ない固定ダメージだから結構強いよ〜』

 

 固定ダメージとかそれ気軽に売っていいんだ…と、ゲーム好きの神がぶっちゃけた。

 

『これらの種はいくらなんですか?』

『それがね〜決まってないんだよね〜』

『何故ですか?どれも良い商品だと思いますが』

『ありがとう〜。でも最近になってワタシ基準で考えると商品が高すぎたり、安すぎたりで調整中なんだよね〜。だから最新の商品であるタネはまだ決まってないんだよ〜』

『なるほど。ダンジョンから帰還できる魔道具も私たち冒険者にとっては使い道がありますが、ダンジョンで商売をしている商人さんにとってはあまり使い道がなさそうですもんね』

『そうなんだよ〜。一度実験で使った時に急いでダンジョンに逃げたからことなきを得たけど、危ないんだよね〜』

『よくバレませんでしたね』

『透明になれるからね〜』

 

 さらっと言った爆弾発言を全員聞かなかったことにして、透明化できて階層も移動し、商売をできる知能を持ったこのモンスターが人類の敵であった場合を考えると恐ろしくてたまらない。

 

『さっきの【せんたくだま】と、この3種類のタネをください。タネの料金はそちらに任せます』

『いいの〜?ワタシが高く設定するかもしれないよ〜?』

『大丈夫です。マーメイドの生き血をダンジョンの中なのに多少高め程度で売っている方がぼったくるとは思えませんから。それにぼったくられてもファミリアの貯金から出すので私の財布にダメージは入りませんから』

『う〜ん、そういうなら……6万ヴァリスかな』

『では直接現金支払いで』

『珍しいね〜ほとんどは魔石なのに』

 

 そう言いながら商品を渡して金銭を受け取る。

 

『まいどあり〜』

 

 今日1番ニッコリと笑顔を見せ、離れていくカメラとリポーターに向かってその短い手を振る。その姿は愛くるしいぬいぐるみのようにも見え、神々の汚い心を浄化した。

 

「何これ可愛い…本当にモンスターかよ……」

「あのクルクルの尻尾触ってみたい」

「この商人さんに名前ってないの?」

「あー、そういえば名前に関する情報は聞いたことねえな」

「名前を聞いてくるクエスト出そうかな」

「てか神出鬼没なのにリポーターの子はなんで記録するための魔道具とか金を持ってたの?」

「え?俺が命じて見つかるまで何度もダンジョンに向かわせたからだけど?」

「鬼!悪魔!人でなし!」

「神です!」

 

 そんないつものどんちゃん騒ぎに戻る中、鍛治の神として様々な武器や防具の素材に触れてきたヘファイストスと現オラリオで最前線を駆け抜けているファミリアの神であるロキの二柱は映像を見ていて気づいてしまった。

 モンスターの商人がカタログを取り出した商人鞄の素材が、階層主級(ボスクラス)を除いて、現在発見されているモンスターの中で最も強いとされている強竜(カドモス)の皮膜で作られていることに。

 

 強竜を単独で狩れるなら最低でもレベル5以上。生息地である51階層まで単独で降りられるなら6か7以上はあるかもしれない。

 その事実に能天気に遊んでいる神どもを尻目に絶対に自分たちの団員に喧嘩を売らないように警告しようと決心していた。

 

8/10 



メニュー

お気に入り

しおり

▲ページ最上部へ
Xで読了報告
この作品に感想を書く
この作品を評価する