「アッハッハッハ!」
廃教会の地下室で灰色の髪の中性的な青年が笑い声をあげる
「5階層でミノタウロスに襲われ【剣姫】に助けてもらい、恥ずかしさのあまり礼も言えずに血濡れでギルドまで逃げた、か」
今日起きた出来事を白髪の少年ベル・クラネルから聞き出した青年イクステラ・アークはあまりにもな出来事に笑いを堪えることができずについ笑ってしまった
それに静止の声をかける者がいた
「イクス君!ベル君は九死に一生だったんだぜ。それを笑うのはどうなのかな?」
女神ヘスティア、彼らのファミリアの主神。彼女がイクスの態度に抗議の声をあげる
「別にいいですよ、実際に逃げ出したの僕だし…」
「いや、すまない。無事だったとはいえ笑ったのは悪かった」
さすがに悪いと思ったのかイクスはすぐさま謝罪をする
わずかな沈黙が場を支配した
「まあ、ミノタウロスから逃げれたのだから良い
空気に耐えられなくなりイクスは早口でまくし立てながら逃げるように地下室から出ていく
「コラー!後でしっかりと説教するからなー!」
「アハハ…」
これはとある物語に本来起こりえない
水面に落ちる一滴が起こす波紋がどのようになるのか、それは神すらもわからないだろう
「あれでいろいろ優秀なのが手に負えないな~まったく…」
ベルのステイタス更新をしながらヘスティアは愚痴をこぼす
1か月前に突如ホームに現れ、ファミリアに入った2番目の眷属
食事に買い物、ホームの修繕などいろいろなことをやっているが、なぜファミリアに入ったのか、それ以前は何をしていたのかなど謎の多い眷属だった
「イクス君が眷属になって1か月持ったのにいまだ壁がある。僕が未熟だからかなぁ…」
「そんなことありませんよ神様!」
落ち込むヘスティアをベルは元気づける
「確かに壁を感じますけどそれはあまり時間が取れなかっただけです!」
「その時間が取れなかったのも僕たちのせいな気がするけどね…」
「…あした一緒にダンジョンに行こうと思います。今はわからなくても知っていけばいいと思いますから」
「うん!まあ、僕の方もも頑張ってみるよ」
決意を新たに一人と一柱は進むのであった
その後ヘスティアはベル君に発現したスキル【リアリスフレーゼ】に切れることになるのだが…
「イクスく~ん、終わったよ~」
更新が終わり外で待機していた眷属を呼び戻す
「ねえイクス、あしたは一緒に
ベルはすぐさま行動に移した。イクスはベルの発した言葉に少し考えるそぶりを見せると
「…ホームの応急処置は終わったし問題はないか。わかった明日私もダンジョンに同行しよう」
「ホント!?」
あまりにもあっさりといったことにベルは驚く
「なぜそこまで驚く?…まあ時間的余裕はあるし、そもそもソロでの探索は危険だから一緒のほうがいいとは思っていたからな」
「約束だよ!寝坊しないようにね!」
かくして二人の冒険者は明日に備えて眠るそれを見守りながら女神も眠りにつく
あさ、ベルは
「イクス起きて、ダンジョン探索にいくよ」
「あ゛?……そうだ行くんだった」
いまだ若干寝ぼけているイクスを連れてベルはダンジョンに向かう
その途中
「っ!」
(なんだ今の)
「ねえ、イクs」
「あのー?」
銀髪の美しい女性が声をかけてきた。ウエイトレスの格好をしており恐らく飲食店の店員なのだろう
そこには銀髪の美しい少女が立っていた。ウエイトレスの格好をしておりおそらく飲食店の店員なのだろう
「あっ、すみません。なにか?」
「これ落としましたよ」
少女は紫色の結晶のようなものを渡す
「魔石?」
モンスターが落とす魔力のこもった結晶。冒険者はこれを集めギルドで換金することで生活をしている
ヘスティアファミリアは零細ファミリア。魔石の一つも見逃すわけにはいかないのだが
「昨日全部換金したんだけどな…」
「昨日ベルはいろいろあったから落としても仕方ない」
やっと目が覚め始めたイクスが口を挟む
その言葉を聞きベルは昨日を思い出す
「アハハ…確かにそうかも。わざわざすみません。ありがとうございます」
零細ファミリアは1ヴァリスも無駄はできない
「冒険者の方ですよね?こんな朝早くからダンジョンへ行かれるんですか?」
「ええ、まあ…」グゥー
ベルの腹が鳴り、恥ずかしさのあまり顔が赤くなる
それを聞いた少女は一度その場を離れるとバスケットを持って戻ってくる。中にはおいしそうなサンドイッチが入っており、それをベルに渡す。
「大したものありませんが」
「そんな、悪いですよ!」
「それにこれは貴方のお昼ごはんじゃ…?」
「気にしないでください。私のほうは店が始まったら賄いが出ますから」
「その代わり今夜の夕食は当店で。約束ですよ」
ダンジョンの
「っつ!はぁぁぁああ!」
ベルはナイフをコボルトに突き立て倒す。コボルトは魔石と灰、コボルトの爪を残し消えた。
「イクス、そっちは…」
ベルはイクスのほうへ振り向く。イクスは複数のモンスターに囲まれていた
ベルはすぐさま助けようと駆けだすが、鈍色の光が一閃
イクスの周りを囲っていたモンスターはすぐさま灰と魔石へと姿を変える
「ん、どうしたベル?」
「どうしたじゃないよ!?モンスターに囲まれてたよね!?」
「あの程度なら問題ない」
「そ、そうなんだ…」
そう言いながら剣を鞘に仕舞いながら魔石を回収する
一切の傷を受けず汚れもなし冒険者歴1ヶ月とは思えない姿がそこにあった。
「これ以上は回収できないな」
「うん、これなら外食しても問題なさそうかな?今日はモンスター多かったけど何とかなったね」
そうベルが口にするほどカバンには魔石とドロップアイテムが詰まっていた
これ以上潜っても意味がないと二人は地上へ戻ることにした
「イクスって戦いなれてるけどどうして?」
ベルは今日起きたことについて質問した
「冒険者としての歴は1か月ほどだがそれ以前に戦う経験はあったからな」
「へー、じゃあその剣もその時から?」
ベルはイクスの剣について尋ねる。装飾が少ない鈍く輝く両手剣。いまだギルドから支給されたナイフを使ってるベルにとって自分だけの武器というのに興味があった
「…これは家に在ったやつだ。壊れないから重宝してる」
「親が冒険者だったりしたの?」
「そういうのはなかったはずだ…そもそも鍛えたのは別の人間だしな」
「師匠がいたの?僕も師事してくれたら強くなれるかな?」
その言葉を聞くとベルの方を掴みながら首を横に振る
「やめておけ。あれは災害の化身のようなものだ。関わらなくてすむなら関わらないほうがいい」
全力の拒否だった。闇を感じベルはこれ以上聞けなかった
「帰りました神様!」「いま帰った」
「二人ともおかえりー!今日はどうだったんだい?」
「どちらも大きな怪我なし、稼ぎはそれなりといったところだ」
「よかった!君たちに死なれたらボクはかなりショックだよ」
ヘスティアは帰ってきた二人に温かい言葉をかける
ステイタス更新を終えヘスティアが起こりながら外に行くのを眺めながらベルを待つ
「ねえ、イクス…」
「どうした?」
「その…ステイタスがいきなり伸びることってあるのかな?」
「自分より強大なものと戦ったり、神々が称えるような冒険をすれば伸びる、が聞きたいのはそういうことではないな?」
コクッ
「思うにただ怠惰に冒険するのではなく目標に向かって冒険をする。
その言葉はベルの心にすっと入っていく。
ただ、違うとすればその伸びがスキルによる飛躍なのだが、それはイクスにはわからないことだった。
二人は朝に出会った少女との約束を守るため店に赴く
「あっ、冒険者さん来てくれたんですね♪」
『豊穣の女主人』その店で朝であった少女が出迎えてくれる
「自己紹介がまだでしたね。私は知る・フローヴァです」
ドンッ
カウンターに案内され目の前に山盛りのパスタが出される
「あんたらがシルの知り合いかい?そっちの坊主はかわいい顔してるじゃないか」
そう言いながら次々と料理が運ばれてくる
「あの…頼んでないんですけど」
「おいしいが予想外の出費だな…」
イクスは
シルはその視線を受け流し
「ふふっごめんなさい。今夜のお給金は期待できそうです♪」
(嵌められたな…今日の稼ぎが多くて助かったな)
ただ二人は食事を黙々と食べるしかできなかった
そのとき
「ご予約のお客様ご来店にゃ」
現れた団体に店内にいた冒険者たちは驚きをあげうわさ話を始める。
なぜならその団体はロキファミリア、都市最大派閥の片翼なのだから
「ベルどうs、…そういうことか」
そこにいた金髪の女性にベルは顔を赤くしフリーズする
「ロキファミリアさんは家のお得意様なんですよ」
(じゃあここに来れば…)
「そうだ、アイズ!お前あの話を聞かせてやれよ!!」
「あの話……?」
ウェアウルフは酔ったのか大きな声で剣姫に話しかける
「あれだって!帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が五階層で始末したろ!そんで、ほれ。そんときいたトマト野郎の!」
それは今日聞いた話だった
「いかにも駆け出しのひょろくせぇガキが、逃げたミノタウロスに追いかけられてよぉ」
「そいつアイズが細切れにしたクッセェ牛の血を浴びてよ、真っ赤なトマトみてぇになっちまったんだよ!」
だが、それは嘲りだった
「それでだぜ?そのトマト野郎、叫びながらどっかいっちまて、ウチのお姫さま助けられた相手に逃げられてやんの」
あまりにもな発言のため、流石にエルフが止めにかかる
「いい加減にしろベート。そもそも17階層でミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。恥を知れ」
「あぁ?ごみをごみと言って何が悪い?」
ウェアウルフの話は止まらない
「アイズ?お前はどう思う?俺とあのトマト野郎ならどっちを選ぶってんだ?」
「お前はあのガキに言い寄られたら受け入れるのか?そんなはずねえよなぁ!」
「自分より軟弱な雑魚野郎にお前の隣に立つ資格はねぇ!雑魚じゃ釣り合わねんだよ!」
「っつ!」
ガタン!と椅子を倒すほどの勢いで立ち上がりその場で駆け出し店外へ向かう
「おいベル!」
静止の声も届かない
「っち、気分が悪い」
喧噪の中イクスの声はかき消える
「お会計を頼む!」
イクスは大きな声で店主に声をかける。まるで周りに聞かせるように
「連れが済まなかった。後日謝罪に来る」
「別に金払ってくれるんだったら構わないよ」
「いや、騒ぎを起こしたのはこちらだ。誤ったことをしたのなら謝罪する。常識だろう?」
「そもそもベルには
まるで誰かに聞かせるように店主に話す。それが喧嘩を売っていることは明確だ。
「おい!てめえ!喧嘩売ってんのか!」
「いやいや、貴様に対して言ったつもりはない。──それとも、自覚があったか
「殺す」
レベル5のこぶしが顔に目掛けて飛んでくる。たとえ酔っぱらっていたとしてもレベル1からすれば眼にも止まらぬ速さで回避は不可能だろう
ダン!
──ならばそれは神速か。顔をわずかにずらし腕を掴み背負い投げる
本来ならば不可能だろう。だがソレは油断させ行動を誘導し、未知をもってことを為した
そもそも、ソレはそれ以上の攻撃を知っている。たとえ億分の1だろうと勝ちの目があるならそれを為す
以上をもって事は終わった
「すまない、少し騒がしくした。」
床に倒れてるウェアウルフを一目もせず店主に金を渡す
「あんた!お金多いじゃないか」
「迷惑料ってことで。今後としても仲良くしたいからな」
「彼を追いかけないといけないため、失礼した」
それだけ言い残し店外へ消えていった。
「彼、ウチに欲しいな」
「確かにベートを投げたのは驚くべきだが…」
「違うよ。あれは
「は?」
「ベートが会話し始めたときに親指がうずいてね。見張ってみたら御覧の通りさ」
「計画の組み立て、動きの誘導に胆力。ぜひとも欲しい人材だ」
だが彼らはスカウトが難しいと考えている。なぜなら
「こちらから問題を起こしたのがきついなぁ…」
「あれではこちらの話を聞いてくれるかも怪しいな」
オラリオを探し回り最後の場所、ダンジョンでベルを見つけた
すでに満身創痍。傷だらけで無事なところが少ない。
「まったく、帰るぞベル」
「迷惑かけて…ごめん…ごめんね」
フラフラなベルを背に乗せホームに連れていく。すでに限界なようで背中で眠りにつく
「君みたいに…強くなれるかな…?」
「………」
その寝言に何も返せなかった。なぜなら自分のこれは■■■■だから
「君に星の祝福を」
その言葉だけが夜に消えた